2015年9月19日土曜日

世界の果ての通学路


☆☆☆         パスカル・プリッソン      2012年

世界は広い。
ケニアには、象に遭遇しないよう注意しながらサバンナを15km
歩いて通学している兄妹がいる。アルゼンチンには、愛馬にま
たがって妹と一緒に荒野を学校に向かう優しい兄がいる。本当
に見渡す限り何もない荒野である。
かくいう私も、レベルは比較にならないが、毎日11kmの道のり
を、自転車で爆走して高校に通っていた。それもポータブルMD
でレッチリを聴きながら。危険走行である。

目のつけどころは面白いのだが、この映画にはおおいに疑問
がある。
本当に子どもたちの通学に密着して撮ったのなら「はじめての
おつかい」のような画にならないとおかしい。しかし実際は、観
ていただければ分かるが、かなり綿密なカット割りのもと構成
された流麗なシークエンスが展開される。ケニアの兄妹を迎え
打つアングルの次に切り返しで後ろからのカットがあり、足の
アップの歩きフォローがあり、兄の越しショットがあり、妹の越
しショットがあり、ロングショットがあるかと思えば湖の対岸から
のショットまであったりする。中には、絶対に同じ動作を3回繰
り返してもらわないと撮れない(カメラが写り込むから)カットが
平然と連続で並んでいたりする。まあつまり、これは密着ドキュ
メントではなく、再現ドラマに近いものだと思ったほうがいい。

以前「怒り新党」で観た海外の胡散くさい猛獣ハンターの番組
(アナコンダと水中で格闘したりするやつ)にも驚き呆れたが、
海外のひとってこういうのはあまり抵抗ないんだろうか。想像し
てみて欲しいが、「はじめてのおつかい」がものすごい計算され
たカット割りで展開されたら、誰も観なくなると思うのだが。

                                                       9.8(火) BSプレミアム


0 件のコメント:

コメントを投稿