2015年10月19日月曜日

岸辺の旅


☆☆☆★★★         黒沢清       2015年

かなり良かった。
冒頭の、たどたどしくピアノを弾く少女には、「なんか『トウキョウソ
ナタ』みたい…」と思ったが、無事、まったく違う作品になりました。
黒沢清の良いところが、映画のおもしろさとうまく結びついていた
と思う。だいたい「死者と旅するロードムービー」という素材からし
てもうピッタリなのは明白である。

いつも「役者は誰でもいい」感じがする黒沢作品だが、今回は珍し
く(というか初めて?)ラブシーンまであり、さすがに演じる役者に
肉体性があまり感じられないのでは困るだろう。そういう意味でも、
今作の浅野忠信と深津絵里は実に素晴らしかった。私は、最初に
浅野忠信が「うん…」と言っただけで、「これは良い映画になるかも
しれない」という予感に胸が高鳴った。
そして蒼井優……。ほんとに小憎らしいぐらいに巧い。登場はごく
短いシーンのみだが、その印象は鮮烈である。
島影さんを演じた小松政夫もよかったよ。

どうしてか黒沢清の映画はいつも、スクリーンを見つめるというより
も、こちらがカメラを覗き込んで俳優の動きを観ているような気分に
なる。だからカメラが動くと不吉な予感にざわざわするし、ゆっくりと
パンした先で誰かが急に画面に飛び込んで来たりするとギクッとす
る。飛び降り自殺があると(今回はなかったが)、「やばいもんを見
てしまった…」という気になるのである。

次回作も、その次も決まっているらしい。やっぱり黒沢清からは目
が離せませんなー。ちなみに私は新宿に向かう小田急線で見かけ
たことがあります。ノートに何かメモってました。「じ、次回作の構想
か…」とドキドキしました。

                                                            10.10(土) テアトル新宿


2 件のコメント:

  1. 設定に馴染めず、消化不良。50点ぐらゐ。

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  2. それも分かります。
    黒沢清は、ある種の"約束事"を積極的に認めたうへで
    観ないと、うまくなじめないと思ひます。
    積極的に認めるとは、おもしろがる、ぐらゐの意味ですが。

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