2019年4月7日日曜日
読書③
『いなごの日/クール・ミリオン ナサニエル・ウエスト傑作選』
ナサニエル・ウエスト 著 柴田元幸 訳 新潮文庫
ウエストはアメリカの作家。かなり変わった人生を歩んで
4つほど主な作品を書き、37歳の若さで自動車事故で亡く
なったとのこと。
この本にはハリウッドを舞台とした「いなごの日」と、と
びきりぶっ飛んだアンチ・ビルドゥングスロマンともいう
べき「クール・ミリオン」、他に掌編2つを収める。
「いなごの日」は「クール・ミリオン」を読んだ今となっ
ては、だいぶまともな小説に思える。奇妙な三角関係が描
かれ、女優志望のフェイという女を中心とした群像劇のよ
うな感じもあり、読みやすいし、適度に奇妙である。
問題の「クール・ミリオン」は、サブタイトルに「レミュ
エル・ピトキンの解体」とあり、まあたしかにその通り。
純真で他人の狡猾さに気付かないレミュエル・ピトキンは、
困っているひとを助けようとしてはその都度、悪い奴に阻
まれて目的を達することはできず、かつそのたびに体の一
部を失っていく(解体されていく)のである。これは「た
とえ賢かったりハンサムだったりしなくても、真心を持っ
た者がいつか報われる」というような類型的な物語を徹底
的に裏返したもので、ピトキンが一生懸命に行動すればす
るほど状況は悪くなり、歯やら足やら目やらを失っていっ
て、最後はとうとう殺されてしまう。アメリカ版『お伽草
紙』と名付けたい。
『アムステルダム』
イアン・マキューアン 著 小山太一 訳 新潮文庫
ふと時間ができて、イギリスの小説を読みたいと思って
手にとった。私の好きな小説にはイギリスのものが多い。
マキューアンは1948年生まれというから、春樹とほぼ
同年代である。
モリーという知的で魅力的な女の葬儀から始まるこの物
語は、なんと毒気に満ちていることだろう。皮肉とかエ
スプリとかの生半可なものではなく、毒そのものである。
ただ、いかにも頭で考えた線の細い小説という感じもし
て、「小説家は体が資本」と言い続けている春樹とは対
照的にも思える。
しかしこの毒気には、またあてられてみたい。本棚には
『贖罪』も控えているので、また時間ができたら読むこ
とにする。
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