2019年6月7日金曜日

読書⑤


『犯罪小説集』
吉田修一 著   角川文庫

そのものズバリの題だが、犯罪(事件)が関係
する短篇小説が5篇収められている。
最初の「青田Y字路」はちからの入った濃密さに
圧倒される展開で、かなりシビれる出来だった。
牽引力というか「もっていかれる」感じが、他
の4篇とは全然違うように思う。アルバムも1曲
目がほとんどアルバム全体の印象を左右する。
短篇集も最も出来のいいものを巻頭に持って来
るのが正解だろう。

5篇にいずれもモチーフになった実際の事件があ
るらしい。世情に疎いもので、大王製紙の御曹司
の事件ぐらいしか分からなかったが。
ひさしぶりに吉田修一の文章を堪能した。映像を
喚起する力に秀でた文章は、カット割りすら浮か
ぶようである。









『火あぶりにされたサンタクロース』
クロード・レヴィ=ストロース 著 中沢新一 訳 角川書店

クリスマスの異教化を憂えた教会によってサンタク
ロースが火あぶりにされるという事件が、1951年に
フランスで実際にあった。その象徴的な事件を端緒
として、クリスマスそのものの歴史を丹念に解明し
ていく論文が本書である。本文と同じほどの分量の
中沢新一による解説が付いている。

当方、頭が鈍いため、本文・解説と読んでもいまい
ち分からなかったのだが、もともとは死者をもてな
す祭礼だったクリスマスが、アメリカ文化(コマー
シャリズム)の流入や時代の求めるものの移り変わ
りによって、一気に変容していったってことで、い
いのかな。



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