2022年9月10日土曜日

読書⑩


 『ジョン・フォード論』
蓮實重彥 著   文藝春秋

いちいち「誰もが知っている」とか「あまり
にも有名な」とかが多くてうるさいし、「~
を見逃す者はいまい」とか言われるとイラッ
とくるのだが、しかしそれでもおもしろい。
反感を覚えながらもただの批評を超えたもの
を感じるのは、確実に「身銭を切ってる」感
じがあるからだ。なんせ著者は小学生の時か
らの筋金入りのフォードのファン。今でこそ、
大半の作品をDVDで簡単に観ることができる
が、そんなものの無い昔は、それこそすべて
のショットを見逃すまいとスクリーンを凝視
し続けてきただろう。しかも本書を書くにあ
たって確認したい箇所が出てきても、該当箇
所だけ見直すのではなく、必ず映画の全篇を
観ていたというのだから、どうかしてる。

この本を読むためだけに、この2年ほど予習
のためにBSで放送されるフォードの映画を
観るようにしていたが、けっこう代表的なと
ころが網羅されていたようで、とても助けに
なった。私はたったの12本観たにすぎないの
だが、まあはっきり言ってそれほどおもしろ
いとも美しいとも思えない作品がほとんど。
でももし『リオ・グランデの砦』や『駅馬車』
を観ていなければ、本書が何を語っているの
かも分からなかっただろうから、無駄ではな
かったのだろう。














『男も育休って、あり?』
羽田共一 著    雷鳥社

とある附属小学校の体育の教師である著者。
私は知らなかったのだが、附属小学校だと
担任が全教科を教えるのではなく、教科ご
とに教師が入れ替わって教えることがある
らしい。
著者は長女が生まれたときと長男が生まれ
たとき、それぞれ3か月の育休を取得した。
しかし小学校という職場特有の事情や、運
動会の運営なども担当する体育教諭という
仕事の特性(要は2学期がもっとも、段違い
に忙しいということらしい)、それにあい
にくの新型コロナの流行という事情までが
重なって、いろいろな煩悶や決断があった
と。そういった、育休を「取るまで」のあ
れこれと、育休中の過ごし方の両方を、い
かにも理系的思考の持ち主という感じで、
あとから整理したにしても、えらくきっぱ
りと理路整然と書き記している。

まあ情報としては有益だが、読んでいてお
もしろいかというと、そういうわけでもな
い。そしてこのタイトルで結論が「育休は
なし」だとそれはそれでおもしろいが、も
ちろん育休は「あり」ということである。


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