2022年9月6日火曜日

読書⑨

 
『最後の大君』
スコット・フィッツジェラルド 著
村上春樹 訳    中央公論新社

1930年代ハリウッドの映画プロデューサーを
主人公に据えた、フィッツジェラルド最後の長
篇小説。第6章を執筆中に作者は亡くなった。
未完の作品であるが、様々な構想メモや、手紙
の中で執筆中の小説について展望を述べていた
り、チャプターごとのアウトラインの詳細な覚
え書きが残されており、全9章の長大な物語が
想定されていたことが分かっている。

多くの登場人物と複雑な人間関係がスマートに
時に謎めいて描かれているが、本筋は妻を亡く
した映画プロデューサーのスター氏と、偶然に
出会った亡き妻に似たキャスリーンとの、オト
ナの恋といったら安っぽく聞こえるが、微妙な
心理と駆け引きと、本心を隠しながらの絶妙な
会話と…ということになろう。読んでいても本
当におもしろいのだが、自分の死期が近いこと
をフィッツジェラルドが知っていたのかどうか
はわからないが、人生の最期にこれを書いてい
たのかと思うと、読みながら胸に迫るものがあ
る。

未完の小説って、あまり食指が動かない、と
『明暗』の時にも書いた気がするが、やはり読
んでみるものだ。どちらも未完であることは不
思議とあまり気にならない。むしろ未完である
がゆえに生々しく浮かび上がるものがあるよう
にも思う。そして思えば『明暗』も、漱石とし
てはいちばん長い小説になるはずだった。














『すぐ寝る、よく寝る赤ちゃんの本』
和氣春花 著   青春出版社

ねんねトレーニング、略して「ねんトレ」な
どというらしい。赤ちゃんの夜泣きは、夜中
にふと目覚めたときに、自力で眠りに戻れず
に泣いてしまうのが主たる原因ということで、
自力で眠れるちからをトレーニングで身につ
けさせようという本である。


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