2025年10月23日木曜日

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた


☆☆☆   ビル・ポーラッド   2022年

兄弟バンドが牧場の片隅に建てたスタジオで
録った1枚きりのアルバムが、30年後に突如
"再評価"され、ヒットする。天才肌の弟と、
人はいいが音楽的な才能はない兄。リバイバ
ル・ヒットの勢いでアメリカ・ツアーをしよ
うという話が持ち上がり…あとはだいたい、
ご想像の通り。
兄弟の確執と和解がいくぶんわざとらしく、
妻役のズーイー・デシャネルもいまひとつ
輝いてこない。
実話をもとにしているので、ほんとにリバ
イバル・ヒットした曲が演奏されているら
しいのだが、それはたしかに良い曲だった。

                                 7.20(日) 早稲田松竹



2025年10月16日木曜日

はじまりのうた


☆☆☆★  ジョン・カーニー  2015年

落ち目の音楽プロデューサーが才能のある
女の子を見出し、売り出していくという話
で、ありきたりではあるのだが、「街なか
で録音する」という行為は確かに良い効果
を生むアイディアかもしれないと思った。
あんな簡単な機材では無理だと思うが…。

                                        7.17(木) シネクイント



2025年9月30日火曜日

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は

 
☆☆☆★★★   大九明子   2025年

『国宝』が秀作で気分が高揚していたからか、
いちど帰宅して晩ごはんも食べた後に再び自転
車をこいで新宿に向かい、本作を鑑賞。
これまたすばらしい映画だったため、実に至福
の一日となった。

祖母を亡くして気分が落ち込んでいた男子大学
生が、変わり者の友人と波長の合う女の子(河
合優実)によって再生していくという話。

飛ぶ鳥を落とす勢いの河合優実は、たしかによ
かった。よかったが、この映画に関しては伊東
蒼のすごさが炸裂するワンシーンにほとんどす
べてが持って行かれてしまうほどの破壊力があ
り、すっかり泣かされてしまった。
「初恋クレイジー」、良い曲ですよね。

                                            6.29(日) テアトル新宿




2025年9月10日水曜日

国宝

 
☆☆☆★★★   李相日   2025年

原作小説の長さからすれば映画が3時間になる
のは当然だろう。小説でも印象的だった開巻
のヤクザ一家の新年会の描写がすばらしく、
思わず見入ってしまう。
喜久雄の才能が見いだされる瞬間、生まれた
家、背負った業、父を目の前で惨殺されると
いうトラウマ…。多くのものをここで観客に
提示しなければならない。永瀬正敏は往年の
東映の任侠映画のような迫力があり、短い出
番ながらも鮮烈だった。

 3時間、だれることのない充実した内容で、
至福の「映画的時間」を過ごすことができた。
俳優部の努力はすさまじいものがあっただろ
う。月並みな表現だが吉沢亮と横浜流星はま
さに「役を生きて」いたように思う。

渡辺謙が自分の息子も喜久雄も分け隔てなく
呼ぶ「あんた」と、万菊さんがこちらを見ず
に発する「あなた!」の声色にシビれる。

映像と音声も一流の仕事だったが、ここぞと
いうときにクローズアップが多用されるのが
気になった。バリエーションが少ない。

小説としては悪人、怒り、国宝の順だと思っ
ているが、映画は逆に国宝、怒り、悪人の順
のようだ。

                                         6.29(日) 新宿バルト9




2025年9月7日日曜日

【LIVE!】 レキシ

 
 レキシツアー2025 〜イルカラブストーリー 101回目のイナホバケーション〜

01. たぶんMaybe明治
02. ギガアイシテル
03. 真田記念日
04. 姫君Shake!
05. 古今 to 新古今
06. 古墳へGO!
07. GOEMON
08. SHIKIBU
09. アケチノキモチ
10. 狩りから稲作へ
11. エレキテルミー
12. 年貢 for you
13. 刀狩りは突然に
14. YO.JIN.BO
15. きらきら武士 

<Encore>
01. KMTR645
02. LOVEレキシ

                6.24(水) LINE CUBE SHIBUYA

久しぶりのレキシのライブ。
ツアーは毎年のようにやっていたようだが。
相変わらずふざけちらした、しかし確かな
テクニックと音楽的素養に支えられたエン
タメ・ショーであった。
蹴鞠Chang こと玉田豊夢のドラムが最高。
ドラムソロの途中でスティックを放り投げ
て手で叩きまくっていた。カッコいい…。
数回流れるVTRは若干スベリ気味ではあっ
た。ベストアクトは「年貢 for you」。



2025年8月31日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


  『爆音夢花火 2025』~LAST 野音 NIGHT~

 1. レクイエム
 2. 親愛なるあなたへ
 3. 希望を鳴らせ
 4. ひょうひょうと
 5. Mayday
 6. 疾風怒濤
 7. 幻日
 8. 情景泥棒
 9. 情景泥棒~時空オデッセイ~
10. カラビンカ
11. 世界樹の下で
12. 幸福な亡骸
13. キズナソング
14. 蛍
15. 導火線
16. コバルトブルー
17. 太陽の花
18. 奇跡

<Encore>
 1. 冬のミルク
 2. 明日世界が終わるとしても
 3. 無限の荒野

<Encore2>
 1. 刃

                             6.14(土) 日比谷野外音楽堂


いまだに2週続けてバックホーンのライブに行っ
てるとは、ほんとにお好きですねーと言われて
も仕方がない。

改築前の野音では最後となるワンマンライブは、
「夕焼け目撃者」ではなく敢えてバンド最初の
ライブDVDの名を冠された。
予想通り"レクイエム"で始まり、"ひょうひょう
と"も投下されて、古参のファン(を自称しても
いいだろう)はおおいに感慨に耽ったが、総合
して選曲を眺めると、意外にも新しめの曲が多
かったように思う。もちろん初期のマイナー曲
を連発すると「マニアックヘブンと何が違う」
ということになりかねないが、随所で「爆音夢
花火で、この曲なのか…?」という、微かな違
和感を抱きながら、まあそれでもライブは楽し
んだ。"サニー"をやってもよかったんじゃない
かねー。
しかし「この曲やって!」投票で1位になった
のが"世界樹の下で"というのは、このバンドの
ファンでいることを誇らしく思うような快事で
あった。
ベストアクトは「ひょうひょうと」。



2025年8月17日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN

 
  『KYO-MEIワンマンツアー』~Dear Moment~

 1. 親愛なるあなたへ
 2. Running Away
 3. Mayday
 4. 暗闇でダンスを
 5. 透明人間
 6. コワレモノ
 7. ジャンクワーカー
 8. カラス
 9. 修羅場
10. 光とシナジー
11. ヘッドフォンチルドレン
12. SUN GOES DOWN
13. 月夜のブルース
14. 最後に残るもの
15. 空、星、海の夜
16. グローリア
17. 戦う君よ
18. 太陽の花
19. コバルトブルー
20. タイムラプス

<Encore>
 1. 刃
 2. 明日世界が終わるとしても

<Encore2>
 1. 無限の荒野

       6.8(日) Zepp Shinjuku

つくづく「ちゃんと考えられたセットリスト」
という感じがする。20年近くもファンをやって
いても「もういいや」とならないのは、未だに
こういうライブをするからなんだよなー、など
と思いながら歌舞伎町を抜けて帰路につく。
「親愛なるあなたへ」が良いアルバムだったの
で「透明人間」「明日世界が終わるとしても」
なども盛り上がっていたし、ひさびさに聴く
「カラス」はいかにも「初期!」な音の少なさ
にあらためて驚嘆。

コマ劇場の雰囲気を残したまま造りかえられた
Zepp Shinjuku。妖しいバーカウンターがあっ
たりするのもご愛敬だし、ライブハウスとして
はなかなか良いのでは。



2025年8月14日木曜日

リアル・ペイン 〜心の旅〜

 
☆☆☆★★  ジェシー・アイゼンバーグ 2025年

監督・脚本・主演をこなすジェシー・アイゼ
ンバーグ、監督としては2作目。

ニューヨーク在住でWeb広告の仕事をしている
ジェシーと従兄のキーラン・カルキンは、自ら
のルーツであるポーランドで祖母の墓参りをす
るのに合わせて、ホロコーストのバス・ツアー
に参加する。周囲を戸惑わせながらも皆をハッ
とさせるようなことを言うキーランを半ば疎ま
しく感じながらも、羨ましくも感じてしまう…。

うまいですね、すべてが。
劇伴をすべてショパンのピアノ曲にしたのは鼻
につくが、それでもロードムービーにはつい点
が甘くなる。

ラストの空港におけるキーラン・カルキンの、
虚無を見つめるような目が忘れがたい。

                                          5.21(水) 早稲田松竹



2025年8月10日日曜日

I Like Movies


☆☆☆★★  チャンドラー・レヴァック 2025年

カナダの⽥舎町で暮らす映画が⽣きがいの
⾼校⽣。人付き合いが苦手だが、映画への
愛は誰にも負けないと自負しており、レン
タルビデオ屋で自信満々で働き始めた彼の
甘ったれた世間知らずと純粋な情熱が巻き
起こすオタク青春コメディ。
映画好きにはけっこうたまらないものがあ
り、なかなかおもしろかった。

                                              5.21(水) 早稲田松竹



2025年8月1日金曜日

【LIVE!】銀杏BOYZ/羊文学

 
 Toyosu PIT 10th ANNIVERSARY 銀杏BOYZ × 羊文学 ” じゃぽんVol.1 ”

羊文学
 1. Addiction
 2. 永遠のブルー
 3. 声
 4. tears
 5. 予感
 6. Burning
 7. 光るとき
 8. OOPARTS
 9. more than words
10. 祈り

銀杏BOYZ
 1. アーメン・ザーメン・メリーチェイン
 2. NO FUTURE NO CRY
 3. 大人全滅
 4. 夜王子と月の姫
 5. 漂流教室
 6. ナイトライダー
 7. 人間
 8. 夢で逢えたら
 9. BABY BABY
10. ぽあだむ

encore
11. 銀河鉄道の夜  w/ 塩塚モエカ
12. 少年少女

                                      5.9(金) 豊洲PIT

初めて聴いた羊文学はなかなかいい音して
いた。しかし1曲も知らずに臨むと、どれも
同じような曲に聴こえる。

峯田はアメリカ西海岸でのツアーを終えて
戻ってきたと言っていた。選曲はベスト盤
のような曲が並んでいてとても良いが、
せっかくの「夢で逢えたら」の途中で歌う
のをやめてどこかに行って、曲の終盤まで
戻ってこないのはいただけなかった。

ベストアクトは羊文学の塩塚と一緒にやった
「銀河鉄道の夜」。GOING STEADYバージョン
でライブで演奏するのは23年ぶりと言ってい
た。心にくいこんでくるような演奏だった。



2025年7月19日土曜日

【LIVE!】 ハンバート ハンバート

 
  TOUR 2025『寝ても覚めても』

 1. 一瞬の奇跡
 2. ある日の来客
 3. わたしは空っぽ
 4. 恋はこりごり
 5. 恋はいつでもいたいもの
 6. まなざし
 7. おうちに帰りたい
 8. あの日のままのぼくら
 9. 君を見つけた日
10. 寝ても覚めても
11. おなじ話
12. ふたつの星
13. 夜の火
14. In The Dark
15. ノアの方舟
16. トンネル
17. 虎
18. それでもともに歩いていく
19. 国語
20. メッセージ

<Encore>
1. うちのお母さん
2. ぼくのお日さま

                         4.11(金) LINE CUBE SHIBUYA


「寝ても覚めても」ツアーの追加公演にして
最終日。バンド編成と2人だけの日があった
ツアーだが、この日は2人だけ。
新しいアルバム"カーニバルの夢"は、初めて
聴くのになぜか昔から知っている曲のような、
不思議な曲が並んだアルバムだった。
アルバムが良いとツアーも良くなる。親密な
空気の流れる良いライブだった。
ベストアクトは「おうちに帰りたい」。

2025年7月14日月曜日

片思い世界

 
☆☆☆★   土井裕泰    2025年

当然こちらも。坂元裕二ですからね。

全員が朝ドラの主役を経験済みの三姉妹、
広瀬すず・杉咲花・清原果耶。三人がただ
きゃーきゃー言ってるだけで幸福な気持ち
になる。いちばん良かったのは…役柄もあ
るけど、杉咲花だった。
広瀬すずは近頃「受け」の芝居が多いよう
に思うが、どうしてもあの幼い顔で受けの
芝居をされると、若干こざかしい感じが出
てしまうのが否めない。

かと思えば横浜流星も小野花梨も出ていて、
よくまあ売れっ子をこんなに集められたと
感心するのだが、伊島空という役者がなか
なか強い印象を残した。感情を欠いたよう
なあの表情が忘れられない。

          4.8(火) ヒューマントラストシネマ渋谷



2025年7月8日火曜日

1ST KISS


☆☆☆★★   塚原あゆ子   2025年

えーもしもし、いつの話ですか?
と言われそうだが、3月に観た映画のことを
今さら書いています。

坂元裕二の脚本。おもしろかったです。
「私がタイムリープものを書くならこうです」
というのをしっかりと提示してきて、それ
がしっかりおもしろいのだから、やはりた
いしたものです。
最近Eテレの「マチスコープ」という番組で
見た上下に2つ出口があるトンネルと、これ
また最近行った上野の科学博物館にあるティ
ラノサウルスの骨の展示の辺りでデートし
ているカットがあったのが「お!」となり
ました。松たか子は笑わせてくれますな。

                                 3.23(日) TOHOシネマズ日比谷



2025年5月6日火曜日

ゆきてかへらぬ

 
☆☆☆★       根岸吉太郎        2025年

長谷川泰子という人物はどういうひとだったの
か、以前から興味はあった。なにせ中原中也を
捨てて小林秀雄のもとに走ったのだから、この
事実ひとつだけをとっても相当なものだ。
根岸吉太郎がとりつかれた田中陽造の脚本が、
この人物を魅力的に描いていたかというと、神
経症の描写も含めて、私には苦手な描き方だっ
たというしかない。
広瀬すずが演じることで、中盤までのもつれた
恋愛関係に関してはプラスだったと思う。ただ、
今の時代では考えられないほど身勝手な男たち
の振る舞いに神経が参っていく段階になると、
「耐え忍ぶ」ような描写がどうも似合わないの
は否めない。神経症になる前に、さっさと男を
捨てそうな感じがするというか・・・。

木戸大聖の芝居は、最初に見たときは「下手か
も・・・」と嫌な予感がしたが、だんだんしっ
くりなじんできたというか、なかなか良かった
と思う。終盤、赤ん坊の乗っていない乳母車を
押す中原の姿は痛々しくて胸が詰まった。
岡田将生はいつも通りの奥ゆきの無い感じだっ
たが、まあエキセントリックで攻撃的な中原に
比べると、小林秀雄のパーソナリティを感じさ
せるエピソードが非常に少ない脚本だったので
仕方ないかもしれない。「らしい」描写は、論
文の懸賞で「一等は俺に決まってる」と言い放
つ場面ぐらいしか無かったように思う。

                          3.3(月)  TOHOシネマズ池袋




2025年4月22日火曜日

【LIVE!】 スガシカオ

 
  Shikao & The Family Sugar TOUR 〜Acoustic Soul〜

<セルフオープニングアクト>

 1. 仰げば尊し
 2. アシメントリー
 3. そろそろいかなくちゃ
 4. 3月9日(Cover)
 5. ヒットチャートをかけぬけろ
 6. 愛について

<本編>

 1. 8月のセレナーデ
 2. 見る前に跳べ.com
 3. 黄金の月
 4. ゼロジュウ
 5. 日曜日の午後
 6. 発芽
 7. AFFAIR
 8. あなたへの手紙
 9. Soul Music
10. ぬれた靴
11. 310
12. サービス・クーポン
13. Loveless
14. ヤグルトさんの唄
15. 6月9日
16. Let's get it on
17. ストーリー
18. 午後のパレード
19. SWEET BABY

<Encore>

 1. Progress
 2. 君が好きです
 3. 情熱と人生の間〜このところちょっと
 
                 2.26(水) LINE CUBE SHIBUYA

 
(オープニングアクトあり)と書いてあった
ので、知らない若いバンドでも30分ぐらい
聞かされるのかと思ったら、スガシカオ本人
が出て来てギター1本で6曲も弾き語り。
発声練習代わりだったが(まだガラガラだっ
た)、こういうのは良いですね。しかも「愛
について」が早くも聞けてしまった・・・。

かつてスガシカオのバックバンドだった
“The Family Sugar”が15年ぶりに復活! と
いうことで、選曲も含めて再結成ツアーの感
じが濃厚。もちろん昔のバンドがとても好き
だったのでうれしい。特に沼澤尚のドラムが
好きで、この日も堪能した。バスドラは重い
のに、スネアとタムは軽快で、アッサリ系。
その音色がなんとも絶妙である。

どうしても身体が反応するのは、大学生の頃
に聞いていた曲ということになる。もう反射
なのでしょうがない。「日曜日の午後」のギ
ターイントロ、「AFFAIR」のシンセのフレー
ズ、なかなかたまらんものがある。
ベストアクトは「ぬれた靴」。

2025年4月6日日曜日

どうすればよかったか

 
☆☆☆★    藤野知明   2025年

「どうすればよかったか」という問いは、藤野
自身への問いであり、観ている私たちにも突き
付けられる問いでもある。
「親である私がいちばん娘のことを分かってい
る」「いちばん娘のためになることをやってい
る」という思い込みが、時に目を曇らせ、判断
を誤らせる。しかしそう思いたい気持ちも分か
る。

衝撃的な映像が撮れているのだが、冒頭のすさ
まじい音声に勝るものがなく、別に衝撃度を競
うわけではないことは分かっているけれど、ど
うも構成ミスという感じが否めない。

ひとつまったく本質的ではないところだが、お
姉さんのまくしたてる時の喋り方が、大泉洋が
マネをする「いとこのみっちゃん」に心なしか
似ていた・・・。北海道弁というのもある。

                              2.22(土) シネマ・ロサ




2025年3月27日木曜日

 
☆☆☆★★★  吉田大八  2025年

長塚京三。79歳にして堂々の主演である。
瀧内公美。だんだん「替えの利かない女優」に
なり始めた。オファーが絶えないのも頷ける。

筒井康隆の短篇小説をもとに、映画にしか描け
ないものを現出させていると思う。すばらしい
映画だった。

                              2.11(火) テアトル新宿




2025年3月21日金曜日

逆噴射家族

 
☆☆☆★★   石井聰亙   1984年

郊外に念願のマイホームを手に入れた男(小林
克也)。ローン返済のためモーレツ社員として
働きまくる決意を新たにするが、転がり込んで
きた父親(植木等)の行動をきっかけに、徐々
に歯車が狂い始める。家にシロアリがいると思
い込んだり、父親の部屋を地下に造ろうとした
り…。ついに男は夜中に家族を集め、宣言する
のであった。「おまえたちはみんな病気だ」。

歯切れのいい編集とはちゃめちゃな脚本で、ブ
ラックユーモアに満ちた爽快作、といった仕上
がりになっている。植木等が出演していること
が、映画の格をひとつ上げた。ただのゲテモノ
映画ではない。長男役の有薗芳記もなかなか良
い。長女役は当時13歳の工藤夕貴。

そしてカメラはたむらまさき。第二撮影のクレ
ジットで篠田昇も参加しているようだ。

                                   2.6(木) 新・文芸坐




2025年3月1日土曜日

惑星ソラリス


☆☆☆  アンドレイ・タルコフスキー 1977年

スタニスワフ・レム『ソラリス』はモロッコ
に行く飛行機で読んだのだったか。その時か
ら映画版も観たいと思っていたが、ようやく
名画座で捕獲。

「ソラリス」という惑星に滞在している宇宙
船の中に3人の研究者がいて、1人が自殺した
という報を受けて主人公が新たに赴任するも、
意思をもった惑星であるソラリスに幻覚を見
せられたりして、次第に狂っていくというス
トーリー。

嫌いなタルコフスキーの映画なので別に期待
はしてはいなかったが、「苦痛ではない」ぐ
らいの3時間弱だった。タルコフスキーにし
てはワンカットも短めだし、人物のクローズ
アップや切り返しなんかもあり、一見普通の
映画である。

映画を観た翌週に行った坂本龍一展で、教授
のタルコフスキーへの偏愛には驚かされた。
『async』は架空のタルコフスキー映画のサ
ウンドトラックというコンセプトであったし。

                                1.12(日) 新・文芸坐




2025年2月8日土曜日

【LIVE!】 山下達郎

 
  PERFORMANCE 2024

 1. SPARKLE
 2. LOVE'S ON FIRE
 3. 人力飛行機
 4. 夏への扉
 5. 僕らの夏の夢
 6. Sync Of Summer
 7. Paper Doll
 8. ポケット・ミュージック
 9. ドリーミング・デイ
10. シャンプー
11. ONLY WITH YOU
12. I LOVE YOU…Part2
13. クリスマス・イブ
14. 蒼氓
15. さよなら夏の日
16. メリー・ゴー・ラウンド
17. 今日はなんだか
18. LET'S DANCE BABY
19. アトムの子

(Encore)
 1. パレード
 2. Ride On Time
 3. 恋のブギ・ウギ・トレイン
 4. YOUR EYES

      1.17(金) NHKホール

今回のツアー、東京公演はすべて抽選応募
するものの、当選せず。もう諦めていたの
だが、最後の最後、結果的に千秋楽となっ
た振替公演のキャンセル待ちで当選し、滑
り込むことに成功。MCで達郎が言っていた
ところによると、3700人中、キャンセルは
200ほどだったとのこと。

ライブはいつも通りに楽しい。
高域が出ずに途中でやめた公演の振替だった
こともあり、お客さんの温かさに感謝を繰り
返す達郎であった。アンコールには竹内まり
やもコーラスで参加して、なんだか得した気
分。
久々にクラッカーが隣からまわってきて、
LET'S DANCE BABYの例の箇所で鳴らすこ
とができた。思えば、初めて帯広で達郎のラ
イブに来て隣のお客さんからクラッカーを渡
されたときは、どういうことだろうと首を傾
げたものだが。あれももう10年以上も前か…。

ベストアクトは「メリー・ゴー・ラウンド」。

2025年1月25日土曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN

 
 マニアックヘブン vol.16

 1. レクイエム
 2. ラフレシア
 3. ゲーム
 4. ホワイトノイズ
 5. 鏡
 6. 汚れなき涙
 7. フラッシュバック
 8. パラノイア
 9. 水槽
10. ザクロ
11. サナギ
12. コオロギのバイオリン
13. tonight
14. 惑星メランコリー
15. 青空
16. サイレン
17. 思春歌

Encore
 1. 天気予報
 2. 共鳴
 3. さらば、あの日

                1.10(金) CLUB CITTA'川崎

今年は川崎にて開催。遠い!
開演50分前に会社を早退して、電車を乗り継
ぎ、チネチッタ何年振りだろうとか思いなが
らようやく到着したその3分後には照明が落ち
てライブが始まる。時間効率は良いが…。

もともとそういう趣旨のライブではあるので
何も問題ないが、今回もベスト盤しか聴いた
ことのないファンでは1曲も分からないよう
なマイナー曲が並ぶ。やってる当人たちが
「なんで(客が)盛り上がってるのか分からん」
というほど。こちらとしては「レクイエム」
「ゲーム」「水槽」「ザクロ」など垂涎のラ
インナップである。「惑星メランコリー」か
ら「思春歌」への流れも秀逸。

ということでベストアクトは「ザクロ」。
変な構成の曲だが、ライブ向きの曲であるこ
とを再認識。




2025年1月19日日曜日

ゴジラ-1.0

 
☆☆★★    山崎貴   2024年

ちょっと仕事で必要があって観たのだが、貧弱
きわまる物語に閉口。ストーリー展開上の欠陥
を挙げれば枚挙に暇がないという感じだが、い
ちばんひどいと思ったのは、最初に敷島がどう
してもゴジラを銃撃できなかったのには理由が
何かあって、いずれそれが明かされるんだろう
と思って観ていたら、特に理由は無かったこと
である。次に海上でゴジラに遭遇した時には、
ためらいなく打っていた。

細田守も山崎貴も新海誠も、物語上の辻褄を合
わせらないひとが書く物語では、都合よく主人
公が失神するという法則がある。

                              1.10(金) Blu-ray Disc




2025年1月13日月曜日

2024年 ベスト3

 
本年もよろしくお願いします。
ほそぼそと続けていきます。

<2024年>
鑑賞本数は18本。
うち2024年公開作17本、旧作は「1999年の
夏休み」だけ。すっかり家で映画を観る環境
ではなくなってしまったので、すべて映画館
で観た。

たいした鑑賞本数ではないですが、ベストを
3本だけ選びたいと思う。いずれも感銘を受
けた映画で、自信をもってお薦めできる優れ
た作品である。

『関心領域』(ジョナサン・グレイザー)
いちばん衝撃的だったのはこの映画。
アウシュヴィッツの隣で幸福な家庭生活(に
見えるもの)を営んだ家族というテーマもさ
ることながら、定点カメラのようで時にさり
げなくワークする撮影手法も、異化効果をも
たらす音響デザインも優れていた。


『悪は存在しない』(濱口竜介)
この映画もずうっと心に引っ掛かっている。
登場人物たちがいまでもあの地域に生きてい
るような気がしてならない。あのうどん屋は
どうなっただろうか、あのグランピング施設
の計画は頓挫したのだろうか…。


『夜明けのすべて』(三宅唱)
こちらの年齢的にも「恋愛映画」がだんだん
しんどくなってきているというのもあり、こ
のぐらいの人間関係の方が落ち着いて観られ
るような気がする。繊細な演出が光る。