2015年6月2日火曜日

セッション


☆☆☆★      デイミアン・チャゼル     2015年

なるほど。

既にこの映画は菊地成孔と町山智浩の論争を抜きにしては
語れなくなっている観があるので、映画の当否はもうそちら
にお任せしよう。ただし映画を観る前に読むのはお薦めしま
せん。私は菊地成孔は嫌いで町山智浩は好きだけど、この
論争に限っては、菊地成孔の言っていることにも首肯できる
ところはある。文章が読みにくいのは相変わらず。

私はどうだったかというと、たしかにこれは音楽映画という
よりも「週刊少年ジャンプ」的なデキの悪いスポ根マンガだ、
という指摘には一定の賛意を表したいと思う。ラストには間
違いなく興奮があるが、終わってみれば「はて。これでいい
んだっけ」という思いがぬぐえない。
まあしかし監督が描きたかったのはああいう世界なのだろう。
鬼教官の映画史に、新たな1ページを加えたのは確かである。

「ジャズという音楽があるのではない。「ジャズなひと」がいる
だけなのだ」というヨルタモリに登場する岩手のジャズ喫茶の
マスター・吉原さんの言葉がある。この映画の主人公は果た
して「ジャズなひと」と言えるだろうかと考えてしまう。

原題の"Whiplash"はもちろん劇中で演奏される曲名である
と同時に、「鞭の先端のしなる部分」という意味だそう。

                                          5.21(木) TOHOシネマズ新宿


2015年5月30日土曜日

ヒート


☆☆☆★★        マイケル・マン       1995年

アル・パチーノとロバート・デ・ニーロという二大スターの共演
によるクライム・アクション大作。
現金輸送車の(かなり乱暴な)襲撃に始まり、銀行強盗、白昼
の路上での銃撃戦、深夜の計画的な銀行侵入、最後は1対1
の飛行場での決戦。観る側の集中力を切らさない構成と演出
が素晴らしい。170分、退屈せず。
私はマイケル・マンについて多くを知らないのだが、ちょうど
キネマ旬報で井筒和幸がこの『ヒート』について熱く語ってい
るのを発見して読んでみた。するとどうやらナイト・シーンや
銃撃戦(蜂の巣になる自動車!)、そして「群衆の流れに逆ら
いながら相対する2人の男」といった、本作にも多用されてい
るシチュエーションを得意とする方らしい。しかし最後のは何
だろね。おもしろいけど。

徹頭徹尾、マッチョな世界観に貫かれており、男は端役にいた
るまで皆けっこう魅力的に描かれるのに対して、登場する女が
みな類型的でつまらない。興味が無いのか、あるいは内田樹
が言う所のアメリカ映画に見られる「ミソジニー」の典型なのか。
まあマイケル・「マン」というぐらいだから……というのはくだらな
い冗談です。

                                                     5.20(水) BSプレミアム


2015年5月28日木曜日

春の読書②


『百日紅』
杉浦日向子 作      ちくま文庫

マンガです。映画化を機に読んでみた。
葛飾北斎とその娘お栄をめぐる物語、1話完結の短篇
集である。かなり極端な性格の親娘だったのは事実ら
しく、粋でぶっ飛んだその生活が描かれる。江戸文化
の研究者でもある杉浦日向子だけあって、さまざまな
江戸の風俗が描写してあり、そちらもおもしろい。









『人間の絆』
サマセット・モーム 著  中野好夫 訳   新潮文庫

長かったー。ダラダラ読んでいたら1か月以上かかって
しまった。モームのすべてを注ぎ込んだと言われる大長
編、文庫版で1324ページの大著であるが、正直言って
最後の200ページまで、いまひとつシャープさに欠ける
ように思いながら読んでいた。短篇のあの冴えはどこへ
行ったんだ、と首をかしげながら、普通ならたぶんやめ
ているけれど、これからモームは読んでいく、と宣言し
た以上は簡単にやめるわけにもいかず、我慢して読み
進んだ。
もう終わりの方になり、主人公が人生の意味について
考えるようになってから、ようやくエンジンがかかったよ
うに思った。そこからは本当におもしろくて一気に読ん
だ。作中人物のクロンショーという詩人が「人生とはペ
ルシャ絨毯のようなもの」と主人公のフィリップに謎をか
ける場面が出て来るのだが、これは有名な一節らしい。
私は知らなかったが。


2015年5月26日火曜日

ションベン・ライダー


☆☆☆        相米慎二       1983年

相米監督の代表作。ようやく観ることができた。
相米監督といえば長回し。オープニングからどえらいワン
シーンワンカットをお見舞いしてくる。その後も多用される
長回しは、試みとしてはおもしろいけれども、なんだか平静
には観られなくなってきたというか何というか。こんな撮り方
じゃセリフ録れないよなー、とかね。だんだん長回しにも慣
れてきちゃって、途中不覚にも意識を失ってしまいました。
だから話がよく分かんなかった。てへ。

                                                 5.19(火) シネマヴェーラ








<ツイート>
AKB48の「僕たちは戦わない」がけっこう良い曲だと思って
最近よく聴いている。これはアイドルポップを利用した秋元
康なりの安倍批判だと捉えてもそれほど穿ち過ぎということ
にはなるまい。幼少より「うたばん」を観て育ったので、もと
もと秋元康は嫌いじゃないが、この試みには心から拍手を
送りたい。センターなのでぱるるのダンスもいつもより気合
いが入っている。

2015年5月24日日曜日

プライベート・ライアン


☆☆☆★★    スティーヴン・スピルバーグ   1998年

ずいぶん久しぶりに観た。
今回は音響に注意しながら観たのだが、「この1本がのちの
戦争映画を変えてしまった」という言説も納得の、素晴らしい
迫力と轟音と、そして静寂である。DVDを貸してくれた先輩
は、ノルマンディー上陸作戦の「水中での銃弾の音がすごい
んやぁぁ」と言っていた。たしかに。

最後の決戦を前に、蓄音機でエディット・ピアフを聴く兵士た
ち。歌詞の意味を解説するインテリ。そして始まる圧倒的に
血なまぐさい殺戮。やはりスピルバーグはうまい、と言わざ
るを得ないですな。

                                                                  5.17(日) DVD


2015年5月22日金曜日

座頭市


☆☆☆★★       北野武       2003年

たけしファンを自称しながらも、実はまだ観てないやつは
いっぱいある。『BROTHER』以降は全然まだなのだ。

しばらく難解ロードを走っていた(らしい)たけしがひさびさ
にエンターテイメントに振り切ったのが今作(らしい)。

独自の殺陣はスピード感にあふれていてスタイリッシュで
すらある。大根だというひともいるが、私はたけしの演技
もけっこう好きである。ギャグもまあ冴えているし、ラストの
タップダンスも楽しい。

                                                   5.11(月) BS JAPAN


2015年5月19日火曜日

ツイート寄せ集め


「64」全5話、楽しませてもらった。1話がいちばんシビれて、
 4話はいまひとつだったが、最後まで緊張感が持続した。
 少なくともオンエア日をわくわくしながら待つドラマなんて
 久しぶりだった。

「まれ」は申し訳ないけどやめてしまった。
 草笛光子が出て来て、そのあまりといっちゃあまりに都合
 のよすぎる役どころと、相変わらずの親子の葛藤バナシに
 すっかり興味を失った。「花燃ゆ」は義務だと思って観てい
 る。おもしろくないけど。

発売中の「POPEYE」で映画特集。
 大根仁の「棚からひとつかみ」も読み応えがあったが、
 いちばん私をシビれさせてくれたのはやはり橋本愛。
 シネマヴェーラで撮られた写真もキュートだけど、思い
 入れのある映画として挙げたのが『人が人を愛するこ
 とのどうしようもなさ』(石井隆)、『恐怖分子』(エドワー
 ド・ヤン)、『ゴダールの映画史』(!)。さらにピンク映画
 の名場面として『恋人たちは濡れた』(神代辰巳)のうさ
 ぎ跳びのシーンを挙げている。うーむ。これはたまたま
 私もシネマヴェーラで観たので覚えているが……脱帽
 である。
 それにしてもユイちゃん……おそろしい娘や。

チャットモンチーの新譜「共鳴」が、すこぶる良い。
 もともとはチャットの音数の少なさが好きだった。このアル
 バムは「男陣」と「乙女団」というサポートチームが入った
 曲がほとんどなので、まあいわゆる普通のバンドの編成
 になって「告白」(3rd)までのあの独特のスカスカ感はない
 が、それでもやっぱり「無駄な音がない」感じがして非常に
 私の好みのサウンドになっている。
 ライブも行きたいんだけどな…。しばらく行ってない。