2013年3月30日土曜日

博士の異常な愛情


☆☆☆★★★      スタンリー・キューブリック      1964年

"または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか"

というサブタイトルはあまりに有名である。有名であるが、幸いにも私は内
容についてほぼ何も知らないまま観ることができた。山下達郎のラジオで
エンディングテーマの"We'll meet again"を聴いたことはあったが、予備
知識としてはそれだけ。

いやぁ面白かったなー。それにしても、私の好みど真ん中の映画であった。
観終わったとき、目の前にキューブリックが居たら握手したかった。黒いユー
モア、飽きさせない展開、登場人物たちの狂い方、すべてが巧妙に配置さ
れ、存分に機能していて、ワクワクする。低予算な感じもむしろプラス。

いまさらネタバレも無いだろうが、いちおう内容には触れずにおこう。
ピーター・セラーズ。恐るべし。

                                                                      3.21(木) BSプレミアム


2013年3月29日金曜日

心をひとつに


☆☆☆        時川英之      2012年

ジャズピアニストの巨匠で、ボブ・ジェームスというひとが
いるらしい。親日派のボブさんが被災地との関わりの中
で出会った盛岡のアマチュアバンドがサンドパイパーズ・
オーケストラ。
前半はボブさんが作曲した"PUT OUR HEARTS TOGETHER"
という曲をバンドと共演する話。後半は、その曲に奥さんが
歌詞をつけ、さらに日本語にしたものを松田聖子が歌う。

映画というよりドキュメンタリーだが、

「これはテレビ番組として放送した内容を再編集し
ドキュメンタリー映画としてまとめたものです」

と出るので、ありがたく映画にカウントさせてもらう。
我ながらせこいね。

                                                          3.19(火) NHK総合


2013年3月23日土曜日

にごりえ


☆☆☆★★★        今井正        1953年

樋口一葉の短篇「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」を原作とした
オムニバス映画。直球勝負の「文藝映画」といったところだが、こ
の直球の質がとんでもなくいい。「にごりえ」の淡島千景が素晴らし
いのはもちろんだが、「十三夜」も先鋒としての役割を十二分に果
たす秀作。「大つごもり」もまた良い。結局、全部良い。

こないだ『祇園の姉妹』の記事で、セリフがわからなかったと書いた。
だいたい観終わるとすぐHDDから消してしまうので、あの時は例を
挙げられなかったが、今回は印象に残っている部分を少し挙げて
みることにしよう。

商売女の淡島千景が、帰ろうとする山村聰に

嘘か真か九十九夜
通いつめたらわかります

という場面がある。なんで「九十九夜」が出てくるのかが分からない。
語呂がいいので決まり文句かと見当をつけたが、グーグル先生に
訊いてもよくわからない。だが調べるうちに、どうやら小野小町と深
草少将の"百夜通い"の伝説を踏まえているらしいことが分かってく
る。「九十九夜」「通いつめる」というキーワードですぐ「小野小町!」
とピンと来なければいけないわけだ。

しかし山村聰はなんであんなに早く帰ったんだろう。初日はあんなも
んなのか。

そのしばらく後で、これも淡島千景だが、

お医者さまでも草津の湯でも

というセリフが出てくる。こちらはだいたい見当はついたが、再度グー
グル先生にご登場願うと、案の定、医者にも温泉にも治せない病気、
つまり「恋の病」を指す決まり文句らしい。うーん、知らなかった。

当時のひとにしてみれば、この程度の言い回しを知らぬひとはいない
から、何の説明もなくポンポン出てくるわけである。

こういうのを何の説明もなく使われると、燃えてくるのですよ。やはり
日本映画はやめられない。

                                                                  3.10(日) BSプレミアム


2013年3月20日水曜日

銀河鉄道の夜


☆☆★★        杉井ギサブロー       1985年

全然ピンと来なかった。

音楽は細野晴臣。

                                                           3.9(土) BSプレミアム


2013年3月18日月曜日

男はつらいよ


☆☆☆★★       山田洋次       1969年

2年にわたって放送されてきた山田洋次セレクションもついに
最終回。まあ、私のハードディスクにはまだまだ観てないやつ
が残っているのですが…。

                                                          3.8(金) BSプレミアム


2013年3月16日土曜日

ちかごろの読書③


『高慢と偏見』
ジェイン・オースティン 著   小尾美佐 訳   光文社古典新訳文庫

これは久々にまいった。
こんなに熱中させられるとは思わなかった。

当時のイギリスの身分制度は複雑で、本文を読んでも解説を読んでも
頭に入って来ないが、登場人物たちは「アッパー・クラス<上流階級>」
もしくは「アッパー・ミドル・クラス」ということになるらしい。
簡単にいえば、適齢期を迎えた美人姉妹の結婚をめぐる物語である。
舞踏会や午餐会で相手を見そめ、もしくは見そめられ、徐々に仲を深
めて、求婚されるのを待つ。それだけといえばそれだけの話。

しかしここには、ひたすら奥ゆかしい会話とダンスがあるだけで、現代
の恋愛小説家が使うことのできる「男女が仲を深める」ための<事件>
や<出来事>は何も起こり得ない。本屋で偶然同じ本に手を延ばすこと
も無ければ、悪漢に襲われそうになった女の子を助けることも無い(た
とえがベタすぎ?)。最初から最後まで読んでも、登場する若い男女は、
会話を交わすか、ダンスを申し込むことしかできないのである。あとは
せいぜい相手の表情や仕草から何かしらの意味を読み取るぐらい。
手紙はよく書いているが、親族や友達に書くだけで、恋愛相手には書
いていない。
この条件下で恋愛小説を書くのは難しいと思うよ。それがまた、いやに
なるくらい面白いからこれ不思議であることよ。

なるほどこれが漱石や丸谷才一のことを言うときによく言及される「イギ
リス式の小説」というやつなんだな。しばらく、オースティンにハマるかも
しれない。というか実はもう『マンスフィールド・パーク』を読んでいるとこ
ろである。









『お言葉ですが… 別巻②』
高島俊男 著       連合出版

中の一篇「宋江實録」、こういうのが高島さんの真骨頂だと思う。
宮崎市定、フルボッコである。
ほら、僕らがむりやり読まされた(失礼!)『論語』の訳者ですよ。




2013年3月14日木曜日

ハブと拳骨


☆☆☆★        中井庸友        2008年

宮﨑あおいが出ていること以外、何の予備知識もなく観たのだ
が、沖縄を舞台にした、ひとつの家族とヤクザの世界をめぐる
話だった。時代設定は、けっこう前なのかな。沖縄返還の前か。

ソーキそば屋を切り盛りするのは母(石田えり)と娘(宮﨑あおい)。
もう2人息子がいて、一人はヤクザの末端として、キャバレーの用
心棒をしており、もうひとりは、三線を手に歌って金をもらったりし
ながらフラフラしている。平穏なようでいて、暴力と隣り合わせの危
うい生活は、ある事件をきっかけとして、突如として取り返しのつか
ない事態にまで至ってしまう。簡単にいうと、ヤクザとは関わってこ
なかった弟のほうが、そっちの世界に入りたがり、危ないマネをして
案の定しくじり、兄がその尻拭いをすることになる。それも命をもって。

なんか、どっかで一度見たような「既視感」が拭えない展開なんだよ
ね。どれ、とは言えないんだけど。劇中、本州のことを「やまと」と言っ
ていたが、ほんとにそう言っていたのだろうか。

あおいさんは沖縄でも可愛い。「妹」役って意外と無いんじゃないか。
こんな妹いたら、全力で可愛がるわ。なので★ひとつ増量。

                                                                            3.7(木)  HBC