2013年7月30日火曜日
ムーンライズ・キングダム
☆☆☆★★★ ウェス・アンダーソン 2013年
ふたたび猛暑の渋谷に出て、今度は本作を観るため、目黒に移動。
目黒シネマ、ひさしぶりだ。たぶん『東京公園』を観たとき以来だな。
今年2月の公開時には私に上京のチャンスがなく、見逃していた。
評判がいいのは知っていたが、観てみると期待以上のできにすっか
り満足。子ども映画の新たな傑作。でもやっぱ外人の子どもだから
生々しくないというか、戯画的になって安心して観ていられるし、おも
しろいんだろうね。日本人の子どもでリメイクされてもたいして観たく
ないもん。
7.7(日) 目黒シネマ
2013年7月22日月曜日
ちかごろの読了本③
『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ 著 土屋政雄 訳 ハヤカワepi文庫
ひさびさに小説らしい小説を読んだ気がする。
読み終わってもけっこう「後を引く」小説である。何も考えてない
ようなとき、ふと気が付くと、キャシーとトミーのことを考えていた
ことに気付く、そんな感じの。"精緻"という言葉がピッタリくる、
優れた小説だと思いながら読み進めた。精緻と書いたが、ヘー
ルシャムに関するいろいろな細かい規則とか校風とか、施設の
あれこれとか、ここまで造り込むともう偏執狂と変わりないよね。
静かな筆致だけに余計怖い。
もともとの文章も巧いんだろうが、翻訳も巧い! 土屋政雄の翻
訳で、『エデンの東』とかこれまでもいろいろ読んだけど、このひと
の文章はすごく好きだ。

『ブラス・クーバスの死後の回想』
マシャード・ジ・アシス 著 武田千香 訳 光文社古典新訳文庫
ブラジル文学界の巨人(らしい)、マシャード・ジ・アシス[1839-1908]さん
の代表作(らしい)。おおざっぱに言えば、ブラジルの漱石みたいなひと
なんだろう、きっと。
本作は、内容というよりも叙述形式が非常に変わっており、著者が死んだ
あとの著述という体をとっている。『トリストラム・シャンディ』にも影響を受け
(本の中でもそう言っている)、あちこちに話題が飛ぶ饒舌でとりとめのない
文章が特徴である。そこで、我が国の読者はちょっと『吾輩は猫である』を
想起したりするわけである。
なるほど、ナラティブで勝負するラテン・アメリカ文学の源流がこのへんに
あるわけか。
2013年7月20日土曜日
スプリング・ブレイカーズ
☆☆☆ ハーモニー・コリン 2013年
あまり前情報は入れずに、なんとなくポスターの感じと、「大学の
春休み(Spring Break)、田舎の女子大生4人が、時間と発育十分
なそのカラダを持て余してどっかのリゾートに遊びに行くも、トラブ
ルに巻き込まれるか何かしてビキニ姿のままマシンガンを打ちま
くったりする」らしいというあやふやな情報を胸に、猛暑の渋谷を
パルコまで歩く(たいした距離じゃないが)。
うーん。もっとタランティーノ的な痛快さを期待していたのだけれど、
私の好みからすると若干能天気すぎた。『俺たちに明日はない』を
彷彿させる無軌道な犯罪映画っぷりは、好きなひとは好きだろう。
私はあまり好きではないが。
致命的な欠陥だと思うのは、肝心の犯罪組織の頭である"エイリア
ン"が、なんか後半情けなくねぇ? ということ。幼稚な上に行動も
思慮に欠け、とてもじゃないが、命を張って裏社会で頭角を現して
きた人物とは思えないのである。もっと「いかに彼が頭がキレるか
を物語るエピソード」をひとつふたつでも入れないと、説得力がそ
こでぐっと下がっている気がする。
あとこれは三半規管が弱いせいなのだが、ハンディの微妙にフラ
フラする絵をずっと見せられると、酔っちゃうんすよ自分。途中で
気分が悪くなり、しばし目を閉じて休憩しながらの鑑賞となったこ
とを付記しておく。
7.7(日) シネマライズ
2013年7月19日金曜日
ローズマリーの赤ちゃん
☆☆☆★★ ロマン・ポランスキー 1968年
ずっと観たいと思い続けていたのだが、ちょうどよく渋谷のイメー
ジフォーラムでポランスキーの回顧上映中だったので、これ幸い
と駆けつける。余談だが、到着したら外にまで人が溢れるほどの
大盛況で、ロケクルーも2つほど取材していて、な、なんでや、今
ポランスキーがそないに熱いんかいな! と思ったら、想田和弘の
『選挙2』に並んでるひとだった。
映画は予感通りの秀作で、満足した。
ポランスキーの演出する「恐怖」を堪能。ひたひたと幸福な日常に
狂気が忍び寄ってくる様子、微妙な歯車の狂いや違和感が積み
重なっていくさまを丁寧に描いていく演出には好感がもてる。それ
にしてもラストは意外だった。意外というか、えーそうくるか、と思っ
てしまった。
7.6(土) シアター・イメージフォーラム
2013年7月16日火曜日
【LIVE!】 レキシ
BUSHI★ROCK FESTIVAL
念願だったレキシの単独公演に行ってきた。
01. Good bye ちょんまげ
02. 大奥 ~ラビリンス~
03. 恋に落ち武者
04. Let’s 忍者
05. 君がいない幕府
06. 妹子なぅ
07. ほととぎす
08. 古墳へGO!
09. かくれキリシタンゴ ~Believe~
10. きらきら武士
-アンコール-
01. レキシディスコ(新曲)
02. 狩りから稲作へ
7/5(金)Zepp Tokyo
ほんとはほとんどの曲にゲストがいたのだが、省略。
いろんなひとが来てました。あえて一人挙げれば「かくれ
キリシタンゴ」のMummy-D(レキシネーム:MC母上)が
とてもいい感じだった。
やっぱふざけたことやるバンドは演奏が巧くなければおも
しろくない。その点このバンドは巧い。そしてそのファンク
ネスも筋金入りである。最高だった。12曲ですが、ライブ
はきっちり3時間ありました。どのぐらい喋ってる時間が長
いかお分かりかと思います。
今年はRISING SUNに行けないので、東京まで行って
おいてよかった。
2013年7月15日月曜日
ちかごろの読了本②
『漢字雑談』
高島俊男 著 講談社現代新書
高島さんの最新作は、PR誌『本』に連載していたコラム集。
読了してしまうのが惜しく、ちびちびと読んでいた。相変わらずハズ
レなしの面白さなんで、高島さんの本を読んだことないひとは早く読
んでください。
今回は中でも、万葉集の有名な歌から多方面に話が広がっていく
1篇が印象的だった。
柿本人麻呂の
ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
である。当の万葉集にはしかし、この歌がこのように漢字かなまじり
で書いてあるわけでは無論ない。まだひらがなは発明されていない
から。万葉集には、以下の漢字が並んでいるだけである。
東野炎立所見而反見為者月西渡
さてこれをどう読むのか。
平安末期に書写された本に、既に以下の読みが見える、とのこと。
あづま野のけぶりの立てるところ見てかへり見すれば月かたぶきぬ
「月西渡」を「月かたぶきぬ」と意訳(?)している以外はほぼ素直に
読み下している。が、両者の読みを比べた時、歌としての格調は前者
の読みに遠く及ばない、との高島さんの判定である。実際そうですよね。
では、前者のようにカッコよく読み下したのは誰なのか。
賀茂真淵なのだそうです。本居宣長の師匠。
……このまま受け売り話を続けても意味ないのでやめますが、こういう
話が盛りだくさんの本なのです。私にはたまらんです。

『街場の大学論 ウチダ式教育再生』
内田樹 著 角川文庫
日本の高等教育はどういう状況にあり、これからどうなっていくのか。
ブログ記事の中から「教育」に関するものを集めたら1冊本が出来て
しまうというのも、すごいですね。中でも、他の文章と毛色は違えど、
日比谷高校の思い出をつづった一篇が秀抜であった。私はこういう
ノスタルジーを湛えた文章がけっこう好きなのだが、だからといって
普段からノスタルジーに浸ってばかりのひとが書いてもダメである。
内田樹とか高島俊男とか、あまり懐古趣味の無さそうなひとが不意
にそういう文章を書くと、意表を突かれてグッときてしまう。
やっぱり「読んでて気持ちいい」というのは本にとって大事なことです
ね。これをウチダ式にいえば、
「『読んでいて気持ちいい』というのは本にとってのアルファでありオメ
ガである」
ということになろうかと思う。
高島俊男 著 講談社現代新書
高島さんの最新作は、PR誌『本』に連載していたコラム集。
読了してしまうのが惜しく、ちびちびと読んでいた。相変わらずハズ
レなしの面白さなんで、高島さんの本を読んだことないひとは早く読
んでください。
今回は中でも、万葉集の有名な歌から多方面に話が広がっていく
1篇が印象的だった。
柿本人麻呂の
ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
である。当の万葉集にはしかし、この歌がこのように漢字かなまじり
で書いてあるわけでは無論ない。まだひらがなは発明されていない
から。万葉集には、以下の漢字が並んでいるだけである。
東野炎立所見而反見為者月西渡
さてこれをどう読むのか。
平安末期に書写された本に、既に以下の読みが見える、とのこと。
あづま野のけぶりの立てるところ見てかへり見すれば月かたぶきぬ
「月西渡」を「月かたぶきぬ」と意訳(?)している以外はほぼ素直に
読み下している。が、両者の読みを比べた時、歌としての格調は前者
の読みに遠く及ばない、との高島さんの判定である。実際そうですよね。
では、前者のようにカッコよく読み下したのは誰なのか。
賀茂真淵なのだそうです。本居宣長の師匠。
……このまま受け売り話を続けても意味ないのでやめますが、こういう
話が盛りだくさんの本なのです。私にはたまらんです。

『街場の大学論 ウチダ式教育再生』
内田樹 著 角川文庫
日本の高等教育はどういう状況にあり、これからどうなっていくのか。
ブログ記事の中から「教育」に関するものを集めたら1冊本が出来て
しまうというのも、すごいですね。中でも、他の文章と毛色は違えど、
日比谷高校の思い出をつづった一篇が秀抜であった。私はこういう
ノスタルジーを湛えた文章がけっこう好きなのだが、だからといって
普段からノスタルジーに浸ってばかりのひとが書いてもダメである。
内田樹とか高島俊男とか、あまり懐古趣味の無さそうなひとが不意
にそういう文章を書くと、意表を突かれてグッときてしまう。
やっぱり「読んでて気持ちいい」というのは本にとって大事なことです
ね。これをウチダ式にいえば、
「『読んでいて気持ちいい』というのは本にとってのアルファでありオメ
ガである」
ということになろうかと思う。
2013年7月12日金曜日
ライフ・イズ・ミラクル
☆☆☆★★★ エミール・クストリッツァ 2005年
大好きな1本。5年ぶりぐらいに観た。
俳優と動物たちとサッカーと音楽と鉄道と戦争と愛がごった混ぜに
なり、調和などという言葉を無視しながら突き進んでいくさまは、まさ
に映画にしか表現できない世界に思える。
クストリッツァ映画でいまのところいちばん好き。
7.5(金) 新橋文化劇場
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