2012年12月30日日曜日
東京五人男
☆☆☆ 斎藤寅次郎 1945年
敗戦から3ヶ月の昭和20年11月にクランクインとのこと。
焼け野原の東京が圧倒的なリアリティをもって迫る。
五人男とは、古川緑波、横山エンタツ、花菱アチャコ、
石田一松、柳家権太楼。
風呂で古川ロッパが歌うシーンも楽しいが、「のんき節」も
良い。
あと3本。
12.29(土) BSプレミアム
いそしぎ
☆☆★★★ ヴィンセント・ミネリ 1965年
このへんの「文芸映画」的なやつは、いま観てもおもんないなー。
この映画も、教育だの自由だの、芸術だの愛だのやってるが、
結局はエリザベス・テイラーの豊満さだけしか頭に残らない。
※意見には個人差があります。
12.28(金) BSプレミアム
2012年12月29日土曜日
冬の読書②
『あの川のほとりで』
ジョン・アーヴィング 著 小竹由美子 訳 新潮社
長い小説を愛好する私としては、いつもお世話になっているミスタ・
アーヴィングの最新作。この作品の後、英語圏では"In One Person"
という作品が既に出版されたようだが、それは本邦未翻訳である由。
熊と間違えて父親の愛人をフライパンで撲り殺してしまった息子と、
当の父親が、タチの悪い保安官から北部アメリカ、そしてカナダと
逃げ続ける話を軸としながらも、当然そこに作家のイマジネーション
の尽きせぬ泉から溢れてきた、タフな木こり、料理、ベトナム戦争、
小説の書き方、ブッシュの政治、9.11などなど、様々な要素が思わ
ぬところから飛び出して来る。その「飛び出し」の楽しさが、アーヴィ
ングを読む楽しさのひとつであることは疑いなかろう。
アーヴィング作品としては【B+】か【A-】といったところか。小説として
質はもちろん高いが、アーヴィングとしては特別できが良いわけでも
ないような。
ちなみに今まで『また会う日まで』『未亡人の一年』以外は取りこぼし
なく長篇を読んできたが、大好きな【A+】評価の作品は『ホテル・ニュ
ーハンプシャー』。ちょっと落ちて【A】は『サイダーハウス・ルール』
『オウエンのために祈りを』『サーカスの息子』の3作。
『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』
町山智浩 著 文春文庫
相変わらずの「グロテスクなアメリカ」をえぐり出す刺激的なコラム集。
アーヴィングと並行して読んでいたのだが、何日かすると小説のエピ
ソードだったかこのコラムのエピソードだったか分からなくなってきた。
2012年12月28日金曜日
素晴らしき哉、人生!
☆☆☆★★★ フランク・キャプラ 1946年
名作とは聞いていたが、なるほど傑作。
アメリカではクリスマス時期に必ず放送されるらしいし、我が家では
クリスマスに必ずこの映画を観る、という文章も複数見た記憶があ
る(たしか和田誠とか)。それは良いかもしれん。
久しぶりに映画を観て泣いたぜ。
これで95本。あと5本!
12.23(日) BSプレミアム
2012年12月27日木曜日
息子
☆☆☆★★ 山田洋次 1991年
いやあ、しみじみとおでんの大根のように沁みてくる良い作品
だった。映画の「勘所」をビシッと押さえてくるよね、山田洋次は。
だからこんなに量産しても高打率なんだろうなぁ。すごいよ。
女優ウォッチャーとしては、もちろん和久井映見。可憐である。
原田美枝子も「兄貴の嫁さん」役で出てるよ。
12.22(土) STV
2012年12月25日火曜日
警察日記
☆☆☆★ 久松静児 1955年
山田洋次セレクション。
東北の田舎を舞台にした、捨て子の姉弟をめぐる「ハートウォー
ミングな」映画。天才子役・二木てるみの名演が有名だそうであ
る。本作の森繁は、バリバリの東北弁を駆使している。なので、
この映画が『夫婦善哉』と同じ年の作品だというのが注目に値す
るわけである。小林信彦の表現を借りれば「デキるひとはちがう」
ということになる。
12.16(日) BSプレミアム
もののけ姫
☆☆☆☆★ 宮崎駿 1997年
まさに映画の至宝。
同期の部屋にて、あらゆるカット、あらゆるセリフの素晴らし
さを称えながらにぎやかに鑑賞した。
何度観ても面白すぎて鳥肌が立つのは、これと『ラピュタ』
だな。
12.11(火) DVD
2012年12月24日月曜日
教祖誕生
☆☆☆★★ 天間敏宏 1993年
この頃のビートたけしがたまらなく好きだ。今のたけしも良い
けど。でも私が8歳で映画に目覚めていれば、リアルタイムに
ギリギリ間に合って、この頃のたけしに熱狂できたのになぁ。
…むりか。
12.8(土) HBC
2012年12月22日土曜日
恋のロンドン狂騒曲
☆☆☆★ ウディ・アレン 2012年
いままでのウディ・アレン作品以上に賛否両論は…たぶん無い
だろう。いつも通りの、スキの無い、円熟の、鉄板の、脚本と演
出。スリリングさは無いものの、安心して愉快な時間を過ごせる
ことは請け合いである。
いつも通り、芸術家肌の主人公(今回は小説家ですよ)は、仕
事にも夫婦生活にも行き詰まり、若くてキレイなおねえちゃんに
フラフラと惹かれてゆく。今回はおまけにおじいちゃん(アンソニ
ー・ホプキンス)まで若いコールガールと結婚して若さを取り戻す
んだ、などと言い出す。最後にちょっとだけサスペンスの要素が
あるのが特色か。あとはいつも通りだね。
12.6(木) シアターキノ
2012年12月19日水曜日
ふがいない僕は空を見た
☆☆☆★★ タナダユキ 2012年
普通の映画で18禁ってなかなか最近見ないが、本作はその
まんまズバリ「性描写」によって18禁になっているという、男気
あふれる(?)作品である。田畑智子が、あの「私の青空」の
田畑智子が、コスプレ好きの欲求不満の主婦ということで、
高校生の永山絢斗くんに入れあげて……うん、まあ色んなこ
とがある。
いままでのタナダ作品以上に、賛否あるだろうと思うけれど、
この長尺を見せ切るだけでもそうとうの手腕が必要ですよ。
少なくとも私は全然退屈しなかった。
12.5(水) シアターキノ
2012年12月18日火曜日
釣りバカ日誌3
☆☆☆ 栗山富夫 1990年
もちろん山田洋次セレクション。
だが観るべきところは……石田えりぐらい?
それでもそのへんの凡百の映画よりはずっとおもしろい。
ハマちゃんをどこへ左遷させればいいかの議論のところ
などは見事。
12.5(水) BSプレミアム
2012年12月17日月曜日
冬の読書
『悪人』
吉田修一 著 朝日文庫
これはすごかった。この描き込まれた重層性、きみはドストエフ
スキーか! 描かれた人物たちが、みな眼前にありありと浮か
ぶようである。それが増尾の友だちやヘルス嬢のような脇役に
至るまでそうなのだから、その筆力には恐れ入る。
"吉田修一好き"を標榜していながら、この代表作を読んでいない
のは「マズいよなぁ」とずっと思っていたので、ようやく約束を果た
したような感じがする。
吉田作品で文庫になってるのはほとんど読んでいるが、物語に
「引きずり込む」力は一番強いかもしれない。あまりの面白さに、
熱中して思わず上下巻を3日で読んでしまった。
いったい誰が「悪人」なのか。それがすんなり判るんであれば、こ
んな小説は要らないってことなのだろう。素晴らしい小説でした。
『うほほいシネクラブ 街場の映画論』
内田樹 著 文春新書
とにかく「読ます」ね、このひとは。"解釈病"と自らを揶揄している
が、どんなにくだらない映画にも、もっともらしい解釈を加えずには
いられないらしい。「○○は実は△△だったのだ」という形式が多
いのだが、そこにひとを惹きつけるキャッチーなものを持って来る
才がある。
今回は、そのウチダ先生をもってして思わず解釈を放棄させかけ
たデヴィッド・リンチ評がおもしろい。村上春樹の世界と「世界の描
き方において」通じるものがある、としばしば言われるリンチ。なの
で、当然批評界のハスミンはリンチは嫌いらしいが。
かくいう私は、デヴィッド・リンチが大好きである。誰それ、気になる、
という方は『マルホランド・ドライブ』をぜひどうぞ。ちょい怖なので注
意ですが。
2012年12月14日金曜日
楢山節考
☆☆☆★★ 木下恵介 1958年
これも山田洋次セレクション。
まだまだあるよ。
全篇セットによる撮影と聞いてから観ると驚きも倍加。
「つくりもの」としての映画を極限まで突き詰めた傑作である。
画像はおりん(田中絹代)。
「もう歯がダメだでぇ」と血まみれの前歯で嬉しそうに笑う。
小さい頃に見ていたらトラウマ間違いなし。
12.4(火) BSプレミアム
2012年12月13日木曜日
エドワード・サイード OUT OF PLACE
☆☆★★★ 佐藤真 2006年
サイードの死後、ゆかりのある土地、ひとびとを、サイード
後期の著作に導かれて旅したドキュメンタリー。
しかし、うーむ。意外にとっつきにくいな。
引用とインタビューとが繰り返されるが、どこへ向かってい
るのか判らない。もう少し「導いて」くれるのかと思ったが、
そうでもないし。
なにせサイードを1冊も読んでないからな。…そのせいか!
12.3(月) DVD
2012年12月12日水曜日
風の中の子供
☆☆☆ 清水宏 1937年
山田洋次セレクションはまだ続くよ。
自分がこの映画の宣伝担当なら
「『大人は判ってくれない』は20年前に日本で撮られていた。
子供映画の傑作!」
ぐらいブチあげたい所だが、実際まあそれほど面白くもなかっ
たので、そう持ち上げなくてもいいか。
12.3(月) BSプレミアム
2012年12月10日月曜日
蒲田行進曲
☆☆☆★★ 深作欣二 1982年
山田洋次セレクションは続く。
いわずと知れた、つかこうへいの劇作を映画化したもの。
これはおもしろかったな。
プライドの高い女優も、エプロン姿で家事に追われる主婦も、
どちらも違和感がない松坂慶子はさすが。
ヤスの実家の花嫁歓迎ぶりに、久々に大笑いしてしまった。
最高。
11.30(金) BSプレミアム
2012年12月9日日曜日
次郎長三国志 第三部 次郎長と石松
☆☆☆★ マキノ雅弘 1953年
森繁演じる"ドモりの石松"が愛敬があって良い。
小泉博は、ひとの財布勝手に持って行くんだから宿代は森繁
のぶんまで払ったのかと思ってたら、それも払わずに行ったの
かよ! ひどい。
チンチロリンの場面はなかなかの迫力。
よござんすか、よござんすね。
11.25(日) BSプレミアム
2012年12月8日土曜日
気狂いピエロ
☆☆☆★★ ジャン=リュック・ゴダール 1965年
6年ぶりぐらいに再見。
他人に迷惑をかけながらの「逃避行もの」はあまり好きではない
が、これはアリだな。しかし観たそばから内容を忘れていく。観て
からまだ1週間あまりだが、もう数シーンしか思い出せないという
のは、笑っていいのやら…。
11.25(日) DVD
2012年12月4日火曜日
悪の教典
☆☆☆★★ 三池崇史 2012年
話題作だね。
観るつもり無かったのだが、予告編がおもしろそうだったので、
二階堂ふみも出てるし、観ることにした。
前半にはおおむね満足。凄惨なカタストロフが到来する予感に
思わず胸が高鳴る。三池崇史、盛り上げ方はさすがに巧い。
主人公の英語教師"ハスミン"は、自分の正体に気が付いた者
を順番に、静かに(でもないか)、抹殺していくのだが、こんなこ
とがそう永く続くはずがないというのは、ハスミンも観客も分かっ
ている。いつ破局が訪れるのだろうか、とドキドキしていると、文
化祭を準備中の校舎で、あるちょっとしたアクシデントをきっかけ
に、突如として殺戮は始まる。
……ここまでは良かった。
しかし、後半の大量殺戮の場面には段々とうんざりし始めたこと
は言っておかなくてはなるまい。まず、猟銃でひとりずつ殺すに
は人数が多いね。それと関連したことだけど、全員が泣き叫んで
逃げ回るばかりで、アーチェリー部の彼以外に誰もハスミンに立
ち向かって行くだとか、せめて物陰で待ち伏せて逆襲するだと
かを考えないのはいくらなんでも不自然ではないか。高校生なん
だから、あれだけ人数(42人)がいたら、5~6人は「よっしゃ、俺
が逆にぶち殺したる!」という気骨のある奴が居てもよさそうだ。
11.24(土) ワーナーマイカルシネマズ釧路
2012年12月3日月曜日
人生の特等席
☆☆☆★★ ロバート・ロレンツ 2012年
イーストウッド御大が演じる"ガス"は老スカウトマン。全米に星
の数ほどいる高校球児の中から金の卵を見付ける仕事である。
見付け出せば、何億ものカネが動くことになる重要な仕事だ。
いつもスーツケース1つで地方から地方を飛び回っている。妻は
何年も前に亡くした。一人娘(エイミー・アダムス)はまっとうに育
ち、今では優秀な弁護士だが、親子の仲はうまくいっているとは
言い難い。しかも自身の視力の衰えが明らかなレベルになって
きており、実はピッチャーの球筋も、バッターのスイングの細か
な所も、よく見えていない。
とまあ色々な"トラブル"で満載な様子がはじめ描写されてはいる
が、2時間後にはすべての「うまくいっていなかったこと」は一掃さ
れ、ガスは球団との契約を更新し、娘とは和解し、娘は娘で、仕
事はうまくいくは父親公認の恋人はできるはで、めでたいことこの
上なく、観客としても当然イーストウッド親子に肩入れしてますから、
ハッピーな気分で劇場をあとにすることができるのである。
欲しいところに球が来る、行き届いた脚本と演出があり、主演の
イーストウッドはあくまでシブく、娘のエイミーはつんつんしてて可
愛く、まったく申し分ないわけで。
11.23(金) ワーナーマイカルシネマズ釧路
2012年12月1日土曜日
I'M FLASH!
☆☆☆★ 豊田利晃 2012年
珍しくミニシアターぽいやつが釧路のワーナーで観られる
というので、出かける。東京に居たらおそらく観なかったで
あろう。
舞台は沖縄。冒頭のシークエンスは深夜、藤原竜也と水原
希子の乗る赤い高級車が一般道を疾走している。一方、
TSUTAYAにビデオを返しに行く柄本祐も、バイクを相当な
速度で疾駆させている。予感に満ちたカットバックが続き、
案の定、トンネルで両者は衝突する。
藤原竜也は教祖様、松田龍平はそのボディガードとして雇
われるのであるが、結局まあストーリーはあまり重要ではない
ようだ。爆音と暴力とカットがすべて、という感じの映画。「蘇
りの血」もそういう感じだったな、そういえば。
11.23(金) ワーナーマイカルシネマズ釧路
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