2013年11月30日土曜日
かぐや姫の物語
☆☆☆ 高畑勲 2013年
初日に鑑賞。
予告を観るかぎりでは、俺の好きな感じじゃないなぁ、と思い
ながら観に行ったのだが、その種の予感はたいてい当たるも
ので、私には眼前を綺麗な映像が通り過ぎていくだけの作品
に思えた。
たぶん高畑監督は、根本の部分が「真っ当」なんだと思う。
ストーリーや発想はいつも奇抜だし、ディテイルに凝っている
ことも分かるし、実際見事なものだ。しかし、いかんせん、心
に引っ掛かって来ない。
あるいは印象批評に過ぎるのかもしれないが、137分のこの
映画を全部観ても、『風立ちぬ』で、列車で飛ばされた帽子を
返しに来た菜穂子と二郎が、ヴァレリーの詩で心を通わせる
たったのワンシーンほどにも心がざわつかないのである。
それってどうなの、と思ってしまう。
11.23(土) イオンシネマ釧路
2013年11月28日木曜日
夏の終り
☆☆☆ 熊切和嘉 2013年
ふーむ。
妻子ある作家(小林薫)と、幼馴染の青年(綾野剛)との間
を、昭和初期の女性としてはたぶんかなり「奔放に」行き来
する女(満島ひかり)の話なのだが、うーん。どーも。
なぜいまこの話なのか。いまいち必然性が感じられない。
満島ひかりを色っぽく撮るために昭和初期なんだ!という
のなら許すが。
実はもう97本目(!)。今年の達成はもう時間の問題である。
なんかすいません。
11.17(日) イオンシネマ釧路
2013年11月26日火曜日
悪の法則
☆☆☆ リドリー・スコット 2013年
あの忘れがたい映画『ノーカントリー』の原作者である
コーマック・マッカーシーという人が書いた本作の脚本を、
みんなが映画化したがったが、権利を得たのはリドリー・
スコットだったということらしい。
メキシコから巧妙に麻薬を輸入するワルたちの話で、この
手の話は既にさんざっぱらヤラれ尽くしてるような気もする
が、"犯罪映画"というだけでやっぱり、いそいそと映画館に
出かけてしまうのである。我ながら良い客だ。
全体を流れるドライな感じが好ましいし、スタイリッシュなカ
メラワークがかっこいい。しかしワクワク感は宙吊りのまま、
30分経っても50分経っても、説明不足で一向に話が見えて
来ない。俺、何か重要な伏線とか説明を見逃したんだろう
か、と不安を抱えたまま展開はどんどん進んでゆき、まあ
さして驚きは無い結末を迎えたのであった。
ああ、ペネロペ・クルス。あのDVD-R、観たいような観たく
ないような。
画像は悪い顔したハビエル・バルデム。
もっと悪い奴かと思ったのに、たいしたことなかった。
11.16(土) イオンシネマ釧路
2013年11月24日日曜日
中島みゆき 『夜会VOL.17 2/2』 劇場版
☆☆★★
出演・プロデュースほか 中島みゆき 2013年
個人的に今年は非常に熱心に中島みゆきを聴いた年だった
ので、さて「夜会」とはどういうものなのだろうかと興味が湧き、
観に行ってみた。
ははぁ。
歌とジェスチャーだけで物語を語ってゆく、わたしには理解の
及ばない世界だったが、まあ好きなひとにはたまらんのだろう。
私は歌を聴いてるだけでいいや。
しかし中島みゆきのライブには行ってみたいと思い続けて何年
も経つが、いまだ実現せず。
11.13(水) イオンシネマ釧路
2013年11月23日土曜日
2013年11月19日火曜日
男はつらいよ 望郷篇
☆☆☆★★ 山田洋次 1970年
『男はつらいよ』第5作。
傑作といわれているだけあって、なるほど中身が濃い。
一度カタギになって、「額に汗して働く」決心をした寅さんだった
が(もうこの時点でそうとう可笑しい)、長山藍子にフラれ、結局
またフーテン生活に逆戻り。最後は舎弟の昇と海で戯れるシー
ンで終わる。ほんとはこれでシリーズも終わりにするはずだった
という。
11.12(火) BS JAPAN
2013年11月17日日曜日
天空の城ラピュタ
☆☆☆☆ 宮崎駿 1986年
ブルーレイで観てもやはり最高である。
画質の違いは正直わからなかったが、
後輩よ、貸してくれてありがとう。
今回はポムじいさんに泣けた。
「はて、パズーによく似た子鬼だ」
11.5(火) Blu-ray Disc
素直な悪女
☆☆☆★ ロジェ・ヴァディム 1956年
ブリジット・バルドー、いわゆるBBですね。
本来「悩ましい」というのはこの映画におけるBBのようなことを
いうのであって、未解決の問題が山積していてどっちに舵を
切ればいいのか「悩ましい」などと書くいまの使い方は誤用だ、
と嘆いていたのは小林信彦だったか。小林先生はBBではなく
「オレンジのビキニを着てプールからあがってくるハル・ベリー」
を例に挙げていたと記憶しているが。
弟の嫁さんがブリジット・バルドーで、さして広くも無い家でひと
つ屋根の下暮さなければならないとしたら、それはもうかえって
地獄だろうね。困ったものだ。
11.5(火) BS 11
2013年11月14日木曜日
秋の読書④
『暴力団』
溝口敦 著 新潮新書
ヤクザ映画もマフィア映画も、犯罪映画全般が好きなので、
前から興味はあった。
暴力団員はふだんは何をしているのか、どうやって収入を
得ているのか、組に属するというのはどういうことなのか、
などなど、「知りたいこと」をとても平易な文章で解説してく
れている。過不足なく。
読んでると「仁義なき戦い」が観たくなってくるぜ。
「ドライブ・マイ・カー」
村上春樹 著 文藝春秋12月号
本屋での立ち読みで済ませてしまった。86枚だから読め
ちゃいました。文春さんすいません。最近380円の価値は
無い「週刊文春」を毎週ちゃんと買っているので許してくだ
さい。
なかなか「読ませる」短篇だった。
三人称でリアリズムという最近の傾向だが、これまでの
どの短篇にも似ていない、しかしそれでいて村上春樹で
しかあり得ない、良い感じだったと私は思います。
新境地、とまでは言わないが、春樹がまた新しい方向に
向かっていることが実感できるのはファンとしてはまこと
によろこばしい。
2013年11月12日火曜日
男はつらいよ フーテンの寅
☆☆☆ 森崎東 1970年
『男はつらいよ』シリーズ3作目。
見慣れた「寅さん」に比べると、ドタバタが多く、ひとつひとつ
のカットが短い。演出と編集でここまで変わるのかと思うほど
だが、なるほど『喜劇 女は度胸』の騒々しさを思い出した。
まあ山田洋次の寅さんとは別物だと思えば特段、論難する
こともなかろう。元気のいい渥美清が見られる。
11.4(月) BS JAPAN
2013年11月6日水曜日
秋の読書③
『パン屋再襲撃』
村上春樹 著 文春文庫
帯広からの帰りであった。
カバンの中に電車で読むものが何も無いことに気付いて
恐慌に襲われ、街の本屋でいろいろ迷った末に、なぜか
『パン屋再襲撃』に落ち着いた。「ファミリー・アフェア」が
大好きなのと、「象の消滅」をもっかい読みたかったから。
しかし「ファミリー・アフェア」はなんで読んでてこんなに楽し
いんだろう。春樹も楽しんで書いているのが伝わってくる
からか。
『きりぎりす』
太宰治 著 新潮文庫
読んでないやつならなんでもいいやと、適当に選んだわけだ
が、本作には太宰が得意とした「女性の告白体」の小説が
多く収められている。有名な「女生徒」は入っていないけれど。
いやぁ、堪能しました。お見事。どれもよかったなー。
特に選ぶなら「皮膚と心」「千代女」かな。「善蔵を思ふ」も、
最初と最後のバラのエピソードが印象に残る。「畜犬談」も
可笑しい。最後は、ぞっとするような「水仙」と「日の出前」で
締めくくられている。あんまりおもしろいもんだから、あっと
いう間に読み終わってしまった。
しかし、かなづかいが気になる。
全集以外で、正かなづかいで太宰が読める本は無いのかな。
2013年11月4日月曜日
居酒屋兆治
☆☆☆★ 降旗康男 1983年
函館が舞台の映画って多いね。
高倉健と大原麗子の時代がかった純愛が本筋なのだろうが、
サイドストーリーというのか、本筋以外のところがいろいろと
とっ散らかって、なんだか散漫な印象。加藤登紀子って、普通
に出てたけど、そういうひとだったっけ。
健さんの店「兆治」は料理もうまそうで、ちょっと行ってみたい
と思った。伊丹十三が居るときは行きたくないが。
しかし大原麗子ほど「男を狂わす(もしくは男が勝手に狂う)女」
が似合う女優もいないという気がする。いったい、あの潤んだ目
は何だ。けしからん。
10.26(土) BSプレミアム
2013年11月2日土曜日
秋の読書②
『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」
と叫ぶ人に訊きたい』
正義という共同幻想がもたらす本当の危機
森達也 著 ダイヤモンド社
タイトルに引っかかった。
森さんが何を「訊きたい」のかが気になって買ったようなものだ。
森さんは繰り返し繰り返し、眼前の状況について、ちょっと立ち
止まって考えてみようよと呼びかける。想像してみよう、と。
「考えたんだけど、自分にはこれが正論にしか思えないのだ」
ということを何度も何度も書く。正直、まとめて読むと同じ話が
多いことが分かるのだが、そこは力業というか、最後にはきちん
と落とし前をつけてくるのである。
『世界クッキー』
川上未映子 著 文春文庫
週刊新潮の「オモロマンティック・ボム!」は相変わらず毎週
楽しんで読んでいるが、あれとはけっこう文章が違う気がする。
敢えて書き分けているのだろうか。
川上さんの文章をまとめて読んでみると、意外なほどに太宰治
の影響がうかがえる。言葉のはしばしに。擬音の使い方に。
吹き出してしまうような箇所が特に太宰的であることに気付く。
そしていまわたしは太宰を読んでいるのだった。
相変わらずの影響されやすさ。
機関車先生
☆☆☆ 廣木隆一 2004年
原作は伊集院静。
坂口憲二は瀬戸内の離島に赴任してきた男前の先生だが、
若いころ剣道の試合でのどを傷め、声を発することができない。
口を「きかん」先生だから、機関車先生、というわけである。
まあ終始「ありがち」な話が続き、のんびりゆったりでいくぶんは
退屈な映画である。でも子どもたちは良い味出してるし、廣木
監督の得意技である「じりじり移動ショット」も随所で光る。
10.24(木) BSプレミアム
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