2016年9月22日木曜日

オーバー・フェンス


☆☆☆★★★    山下敦弘    2016年

函館の職業訓練校という設定が絶妙である。一度は挫折を
味わい、人生の再出発をはかるひとたちが集い、技能の習
得をめざす。経歴もさまざまなら、技能習得への意欲もさま
ざま。教官は若造のくせに居丈高。このアンバランスさが、
歪みとなって弱い者を追い詰めていく。

オダギリジョーは将来に展望をもてないまま、無気力にから
揚げ弁当とスーパードライ2缶を、テレビも何もない簡素きわ
まりない部屋で空ける。オダギリジョーほど「ほんとにそうい
うひとにしか見えない」と思わせてくれる俳優はいないが、
今回も期待を裏切らない。

連れて行かれたキャバクラで、サトシという名前の女(蒼井
優)に出会うことで、少しづつ変わっていくというのが物語の
おおまかな筋だが、このサトシのエキセントリックさがすごい。
いくら可愛くても、実生活ではいっさい関わりたくない人物で
ある。

佐藤泰志の小説を映画化した「海炭市叙景」「そこのみにて
光輝く」とともに、"函館三部作"と呼ばせたいらしい。「海炭
市叙景」(監督:熊切和嘉)も秀作だった。

                                                         9.17(土) テアトル新宿


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