2016年11月23日水曜日

永い言い訳


☆☆☆★★★    西川美和    2016年

西川さんは、容赦がない。『ゆれる』でオダギリジョーが
さっさと部屋を去ったあとのトマトの輪切りのアップや、
『ディア・ドクター』でスイカを食べながら「自分は偽物だ」
と鶴瓶が告白するシーンを観て、「こんな映画を撮るひ
とは恐ろしいひとに違いない」と震えたものだ。

特に男女関係を描くとき、その刃は最も研ぎ澄まされる
感じがする。本作でもっくんは妻がバス事故で死んだそ
の時、愛人を家に入れて行為に耽っていた。西川さんが
もっくんに用意した罰には心底震えずにはいられない。

もう一人の主役は竹原ピストル。素晴らしい。
そして子どもたちが可愛い! 利発で健気な長男にも
涙腺を刺激されるが、やはりいま人類でいちばん可愛
いと思われる白鳥玉季ちゃんである。「とと姉ちゃん」で
星野の娘だったコです。はたして演技をしている自覚が
あるのか無いのか。ハラハラしてしまう。

脚本の言葉はよく練られている。こう言ってくるんじゃな
いか、という予想はことごとく裏切られ、重要なセリフが
来る、とこちらが身構えると、無音だったりする。竹原ピ
ストルに最初に電話したときの、セリフを排除したカット
には思わずシビれる。

                                       11.9(水) TOHOシネマズ渋谷


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