2018年9月4日火曜日

読書⑤


『モロッコ流謫』
四方田犬彦 著   ちくま文庫

次に海外に行くならモロッコに行きたいと
ぼんやり思っており、そういうときの常と
して、まず旅行記から入る。
ただ、読んでみると本書は旅行記というよ
りは、モロッコのタンジェに居を構える作
家で音楽家でもあったポール・ボウルズと
の邂逅、そしてその評論に多くの紙数を費
やしている。わたしは映画化された『シェ
ルタリング・スカイ』すらまだ観ていない
のでまったく不案内なのだが、あいかわら
ず(といっていいのか)四方田センセイの
評論は「そそる」巧さがあるので、思わず
アマゾンで高額な本をクリックしてしまい
そうになる。

かつてフランス領だっただけあって、他に
出てくる作家はジュネ、カミュなど。ジュ
ネの墓を訪ねる文章もなかなか興味深い。
そして短いながらも、平岡千之という、外
交官をしていた三島由紀夫の弟との話もな
にか印象に残る。








『オンブレ』
エルモア・レナード 著  村上春樹 訳

なんだか最近偶然ながらよく西部劇を観てい
るのだが、知らずに春樹の新しい訳書を読ん
だらこれまた完全な西部小説だった。

"オンブレ"とはスペイン語で「男」の意との
こと。ラッセルという、物語の肝となる登場
人物のあだ名である。荒野の非情さを知り尽
くした若者である彼は、どんな苦境に陥ろう
とも、どんな足手まといを抱え込むことにな
ろうとも、ただただ自分の中の掟に従って行
動する。無駄口をたたかず、無駄な動きをし
ない。なるべく多くの人間が生き延びるため
最善を尽くす。いわゆる「クールでタフな」
人物なのである。



0 件のコメント:

コメントを投稿