2019年12月10日火曜日

i -新聞記者ドキュメント-


☆☆☆★★     森達也    2019年

東京新聞の望月衣塑子記者を被写体とした
ドキュメンタリー。精力的に取材に奔走し、
当事者の声を聞き、講演会のパネリストを
務め、官邸前のデモに顔を出し、もちろん
本業の記事も執筆し、という彼女の日々は、
言ってみれば話題の美人記者の忙しい毎日、
だ。そこにあの官房長官記者会見の映像さ
えなければ。
それは本当に異様な光景で、どう見ても、
そこにはいまの政権の異様さが凝縮された
形で顕現している。ちなみに望月さんの社
員証の写真が一瞬写るのだが、若い頃から
美人だった。

途中で、そもそも「権力を監視する」のは
メディアの本質であって、会見で権力者の
嫌がる質問をするのはジャーナリストとし
て当たり前のことなのに、どうして望月さ
んだけが注目されるのか。そしてどうして
僕(森本人のこと)は望月さんにカメラを
向けているのか、だんだん分からなくなっ
てくる、と吐露する場面があったが、要す
るにこれに尽きるのだろう。森さんの流儀
の「考える僕」が顔をのぞかせる場面でも
ある。

ラストの演出が必要なのか、わたしには疑
問だったが、骨のあるドキュメンタリーは
ほんとに観ていておもしろい。

                         11.27(水) 新宿ピカデリー


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