2020年3月29日日曜日

読書④


『アンジュと厨子王』
吉田修一 著   小学館 

「安寿と厨子王」という話、恥ずかしな
がら私はよく知らなかったのだけれど、
本作のおおかたの物語の流れはその有名
な話に基づいていながら、後半、吉田修
一オリジナルの物語に展開させていると
のこと。講談調というのか、神田松之丞
に机をバンバンやりながら語って欲しい
文体になっている。
それにしても前半の内容はすさまじく悲
惨で救いがない。後半は光が射すが、前
半にくらべてインパクトが弱い。










「謝肉祭」「品川猿の告白」
村上春樹 著   文學界

ここのところの連作「一人称単数」の一部
である。

「品川猿の告白」は『東京奇譚集』に書き
下ろした「品川猿」の続編。キレイな女の
子に恋をするとそのコの「名前」を盗む衝
動に駆られる品川在住の猿の話だったが、
今回この品川猿は群馬県のある温泉地の旅
館で働いている。
「謝肉祭」はシューマンのピアノ曲と醜い
女の話。いかにも「らしい」短篇で、不思
議な読後感がのこる。
ふたつとも短篇としてとても良い出来だが、
そろそろ短篇集にまとまるのだろうか。
まさか『一人称単数』なんて無味乾燥なタ
イトルじゃないよね。



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