2014年3月2日日曜日

旅先の読書


ほんとは「旅」ではなく仕事だったけど。
まあ、とにかく飛行機で本を読んだのだ。

『ユーミンの罪』
酒井順子 著    講談社現代新書

昨年から熱意をもって聴き始めたユーミン。
何がきっかけだったかはもはや定かでないが、たぶん
「ほぼ日」の「恋歌くちずさみ委員会」で、ユーミンの歌が
あんまり頻出するもんだから、ちょっと試しにアルバムを
借りてみたのが始まり、だったかな…? それまでは特に
熱心なリスナーではなかった。

そこへ本書が現れたので、お、こりゃいいやと思い、いそ
いそと読んでみる。
まず本の構成だが、アルバムごとに区切って時系列で論
じているのが好みである。なかなかいいよ。ユーミンは、
本書で扱われている73年~91年の間、ほぼ毎年アルバム
を出しているので、各アルバムについて論じれば勝手にク
ロニクルになるわけである。

わたしはこの著者『負け犬の遠吠え』を書いたひと、という
それだけの認識しかなかったが、読んでみると文章も意外
とちゃんとしているし(文章に関しては急に偉そうになるとい
うのはこのブログの読者ならもうあきらめてくれてますよね)、
書いている「女子論」も結構おもしろくて、読ませる。
ユーミンが当時の「女子たち」に与えた、時に「致命的」な
までの影響。本書の帯にも

「ユーミンの歌とは 女の業の肯定である」

とあるように、ユーミンの歌はときに救いであり、ときに慰
めであり、軍歌であり、憧れであり、実に多面的な存在で
あったことが著者の実感をこめて解説されている。









『もの食う人びと』
辺見庸 著   角川文庫

海外に行く飛行機では、よく旅行記を読む。
できたら、これから行く地域の含まれている旅行記がいい。

本書は「食い物」を通しテーマにしたというアイディアがやはり
卓抜である。壮行会で寿司やら焼肉やらを詰め込んで旅立ち、
最初に食ったのがバングラデシュはダッカの裏通りで売られて
いた"残飯"だったというので、まずは読者に戦慄が走る。すさ
まじいギャップである。その後も、フィリピン、ポーランドの炭鉱、
ベトナム、ソマリア、チェルノブイリなどなど、こう言っちゃなんだ
があんまり旨そうなものが無さそうな地域に出かけていっては
ものを食う。
ジャーナリストの文章って基本的に信用していないんだけど
(また偉そうですいません)、辺見庸の文章はすぐ好きになった。
味の描写力はさすがに達者で、私は食ってもいないのになんだ
かいろんな所の「味」が印象に残っている。



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