2014年4月23日水曜日

ドッグヴィル


☆☆☆☆      ラース・フォン・トリアー     2004年


素晴らしい映画だった。これを映画館で単なる新作映画として、
前に『奇跡の海』を撮った気鋭の監督の「新しいやつ」として観た
なら、間違いなく相当ブッ飛ばされたはずだ。「これだから映画
はやめられねぇ」とか言いながら、その年のベストワンにしたこ
とだろう。

ある閉鎖的な村に、マフィアに追われた絶世の美女が迷い込ん
できたらどうなるかという「思考実験」のような趣きもある。「イン
テリが頭で考えた映画」にも成り得たのである。しかしそうはなら
ず、キャラクターたちは血肉を備えた「庶民」として立ち上がり、
彼らの欲望は切実さをともなった本当の欲望であり、そこで流さ
れた血は間違いなく痛みをともなった本当の血であった。そして
「見立て」を利用した演劇的な手法を大胆に用いている。さらに
手持ちカメラを多用して、恐らくカット割は考えずに撮り、あとで
つないでいるようだ。その一見「雑な」つなぎがまた画面に良い
緊張感をもたらしている。というか、ハンディの不安定な画と意表
を突くカット割という2つの要素によって、ようやくこの3時間に及
ぶ極めて"演劇的な"映画が成立し得ているのである。

要するにどこを取っても「こうでなくては成り立たない」のかたまり
の様な映画であって、本当によくぞ完成させたと監督には惜しみ
ない賛辞を贈りたい。

                                                                       4.5(土) DVD


0 件のコメント:

コメントを投稿