2014年11月13日木曜日

秋に読んだ本②


これも9月に読んだ本ですが。

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
ジェイムズ・M・ケイン 著  池田真紀子 訳  光文社古典新訳文庫

映画は2種類あるよな、と思っていたら、なんと4度も映画化されて
いるらしい。4度は伊達じゃない。

ちなみに「郵便配達」はストーリーとまったく関係がない。
舞台はアメリカ。ハイウェイ沿いのしがないレストランに、ならず者
の主人公がふらっと立ち寄る場面から始まる。そこで働くことになっ
たならず者はレストランの経営者の美しい妻とすぐ火遊びをし始める。
やがて本気になった二人は、亭主を殺す計画を考え始める…。
『オン・ザ・ロード』みたいな乾いたアメリカが好きなひとにもいいし、
タランティーノみたいなクライム・アクションが好きなひとも楽しいはず。

ホントに「読み出したら止まらないで賞」をあげたいおもしろさで、休憩
なしで読了。無駄の無い描写と、ワクワクするようなセリフの応酬に何
度もうなる。このまま映画の脚本として俳優に渡しても支障なさそうに
思えるぐらい無駄がない。

今度映画も観てみよう。
私の嫌いなヴィスコンティの映画化がいちばん有名のようだ。









『道草』
夏目漱石 著   新潮文庫

『明暗』のひとつ前の長篇。ということは、完成させた小説としては、
漱石の最後の小説ということになるか。

主人公は健三という名だが、多分に漱石の自伝的要素が強いと言
われている。親族がたくさん出て来るのだが、出て来るやつ出て来
るやつみな、こんな親族ばかりじゃ、そりゃ胃も悪くなるわ、という感
じのロクでもない養父、養母、姉、兄、義父などが、次々と列をなして
漱石の家に金の無心に来る。この小説をひとことでまとめると「親族
が金を借りに来る小説」以外にはないだろう。巻末解説によると、こ
こまで一時期に集中していたわけではないらしいけど、でもおおむね
本当のことらしい。有名人はいつの世もたいへんだ。
勝手な想像だけど、村上春樹に言っても「僕はそういうの嫌なんです
よ」とかいって貸してくれなそうだよね。大江健三郎は結局貸してくれ
そう。「…ちょっと待ってなさい」とかいって、書斎に取りに行ってくれ
そうな。

『道草』には最初の小説の原稿を出版社に渡したという記述もある通
り、時期的には『吾輩は猫である』を執筆した当時のことと見られる。
『猫』では色々な青年が訪ねてきて先生も愉快そうだったが、一方で
こんな不愉快なことも満載だったようである。



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