2014年11月21日金曜日

秋に読んだ本③


『花のノートルダム』 
ジャン・ジュネ 著  中条省平 訳   光文社古典新訳文庫

「最も汚れたものが最も聖性を帯びる」という話型は文学史上に
しばしば出て来るのだが、いまひとつ感覚がわからないというか
なんというか。代表的なのは『罪と罰』のソーニャとかね。

その話型の極北にあるような、このジュネの小説。なんとも強烈。
10月はトリュフォーを観まくっていたので、よっしゃ、いっそ映画も
小説もフランスもので「フランス月間」にしてまえ! と意気込んで
読み始めたものの、なかなか苦戦したのであった。

「花のノートルダム」とは何なのかというと、中盤になるまで出て来
ないのだが、美少年の男娼のあだ名なのである。だがこの小説の
主人公は明らかにディヴィーヌという男娼であり、ミニョンというこれ
また美男のヒモと生活している。語り手は、ジュネ本人を思わせる
ジャンという男で、刑務所でこの物語を書いたことになっており(実
際ジュネは獄中でこの処女作を書いたらしいが)、他にもいっぱい
登場人物がいて、非常にややこしいのである。そして、まあとにかく
犯罪者か同性愛者か両性愛者しか出て来ない。翻訳はがんばって
るようなのだが、いかんせん読むのに骨が折れる。
おもしろかったらサルトルの『聖ジュネ』にも挑戦してみようと思って
いたけど、うーん、どうかな。









『きみは赤ちゃん』
川上未映子 著     文藝春秋

いやー笑った。
未映子さん渾身の出産&育児エッセイ。おもしろい。
すべての出産がこんなに地獄のような大変さではないのだろうと思
うが、しかし大変な出産というのは大変な出産なのだ。なのだろう、
きっと。いずれにしても男には想像するしかない&想像できるはず
もない経験である。

阿部和重の小説は好きじゃないが、ここに出て来る「あべちゃん」は
いいやつである。男性性の代表として未映子さんに攻撃されるあべ
ちゃんを思わず擁護したくもなる。

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