2018年12月29日土曜日
読書⑧
『ソラリス』
スタニスワフ・レム 著 沼野充義 訳 ハヤカワ文庫
モロッコまでの長いフライトで何を読もうかとウキ
ウキ考えて、『ソラリス』を選んだ。余談だが往路
は偏西風の向かい風だったせいなのか、トランジッ
トのアブダビまでが12時間、アブダビからは11時間
かかって、ようやくカサブランカに到着。わたしは
機内で映画を観ないので、その時点で『ソラリス』
は読み終わっていた。
巨大な"海"に覆われた惑星ソラリスのステーション
に主人公がたどり着く。が、ステーションは静まり
かえっており、誰が迎えに出て来るでもない。
あとあと分かってくるのは、みなソラリスの"海"が
現出させる幻に精神を蝕まれ、ある者は自室に引き
こもり、ある者は精神に変調をきたしているのだ。
いったいソラリスの"海"とはどの様な存在なのか…。
奇妙なラブロマンスでもあるこのSF小説は、たしか
に間に長々と続くソラリスに関する学術的な論争の
歴史など、退屈と言われても仕方ない部分を含みな
がらも、そりゃあ人を惹きつけてやまないだろうな
という魅力にも満ちている。言ってしまえば「ハリ
ー」の造型が成功しているのがこの小説の勝因であ
る。
『小津ごのみ』
中野翠 著 ちくま文庫
小津映画に出て来る障子紙、襖やカーテンの柄、湯
呑みや花瓶などの小物から小津の"このみ"を読み取
り、小津安二郎ほど画面を自分好みの物で埋め尽く
した映画作家もいないということを証明している。
最近小津映画を何本か続けて観たので記憶も新しく、
これまであまり注目されてこなかったであろう観点
からの小津映画論としておもしろく読んだ。
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