2020年1月22日水曜日


☆☆☆★★   山本嘉次郎   1941年

こちらが本来の目的。
高峰の『わたしの渡世日記』にこの映画の
制作のことがあれこれ書いてあり、ずっと
観たいと思っていた。
「製作主任」というクレジットで黒澤明の
名前があるが、いくつも映画をかけもちし
ていた山本嘉次郎に代わって、多くのシー
ンの脚本・監督を担ったという。これが黒
澤の「実質的なデビュー作」とみなすひと
もある。

岩手県大釜の農村を舞台に、仔馬ができた
ら返すという条件で預かった馬を懸命に育
てる少女と、馬との心の交流を描く大作。
馬を邪険にしていた少女以外の家族が、い
ざ仔馬が産まれるとなったら急にそわそわ
し出すのがおもしろい。父親役は藤原鷄太、
のちの釜足である。話の筋はいちおう軍部
の手前、「立派な軍馬を育てよう」という
ところに決着させているが、実はそんなの
はどうでもいい事だというのは観ていると
分かる。威勢のいい競りの様子も興味深い。

さて、戦前の映画につきものの「こんな表
現はじめて聞いた」のコーナー。
今回は、反抗的な高峰秀子に母親の竹久千
恵子が言う

  「親をにらむとヒラメになるよ」

まあ意味としては想像がつく。親に反抗し
たり粗末に扱うとバチが当たるということ
らしい。でも私は30年以上生きてきて、は
じめて聞いた表現だった。

                                     1.11(土) 新文芸坐


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