2021年4月6日火曜日

Fukushima 50

 
☆☆☆    若松節朗   2020年

多くの、というかほとんどの日本人が固唾を
のんでなりゆきを見守ったあの数日間に、福
島第一原子力発電所で何があったのか。第一
級の役者と優秀なスタッフを集結して、クオ
リティはたしかに高い。美術セットとCGは特
に見事だと思う。

しかしそれだけの予算とスタッフをかけて、
この映画は何を映像化したかったのだろう。
観終わっても私にはよく分からなかった。
原発事故の検証ならNHKスペシャルの「メル
トダウン」シリーズに分があるのは明らかだ。
はるかに詳細だし、分かりやすい。
苛酷な現場で奮闘した現場の人間たちを称え
るため? だが、自分とこの会社の設備が制御
不能になり暴走したら、何があろうとそれを
食い止めようと努力するのは現場の人間なら
当たり前のようにも思える。時にトンチンカ
ンな上層部に対して現場は体張ってるんだと
叫ばれても、そりゃあそういうものだろう。
誰も経験したことのない事態なのだ。誰かが
意思決定しないといけないし、誰かが閣僚の
相手をしなければならないのだ。
海外メディアがそう呼んだからと、タイトル
にまでなった"Fukushima 50"という呼称も、
私にはヒロイックに聞こえるが、はたして現
場にいた人間だけが英雄なのか? そもそも
何一つとして原発事故後の処理をめぐる事態
が好転していない状況下で、この映画はいっ
たい誰に向けて作られたのか、私には疑問が
浮かぶばかりであった。

                                     3.20(土) 日テレ




0 件のコメント:

コメントを投稿