2021年6月9日水曜日

茜色に焼かれる

 
☆☆☆★★   石井裕也   2021年

オリジナル脚本で、ある程度の規模で公開
される映画を撮れる機会はよほど定評のあ
る監督にしか許されなくなってしまった…。
原作モノも「実話に基づくストーリー」も
別にいいが、やはり異常に少なくなってし
まったオリジナル脚本を応援していかなく
てはならないと思う。『生きちゃった』も
見逃しといてエラそうなことを言うつもり
もないけれど…。

「ま、がんばりましょうよ」というのが口
癖の、なんとも摑みどころのない母親役を
尾野真千子が演じる。夫を交通事故で亡く
したが、賠償金の受け取りを拒否し、息子
を育てるためにピンサロで働いている。
この映画、脚本が成功しているとは言い難
いが、尾野真千子、ピンサロ嬢の片山友希、
息子を演じた和田庵という3人の役者が光
る。特に片山友希は出色で、このひとの出
演シーンだけ、園子温の映画になったよう
だった。いちおう褒めてるつもり…。
最後の神社のシーンの爽快感で★半分プラ
スしておく。永瀬正敏が「持って行った」
感がある。

カメラは時々不思議で、なんでもないキッ
チンでの会話のシーンが手持ちカメラで撮
られていたり、正面からのクローズアップ
を多用したりしている。熱のこもった映画
を観た、という思いで劇場を出た。

                        5.25(火) ユーロスペース




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