2022年10月1日土曜日

読書⑬

 
『下山事件』
森達也 著   新潮文庫

調べれば調べるほど、沼にはまっていくよう
に抜け出せなくなる。新たな事実が判明した
と思っても、深追いするとどこかで辻褄が合
わなくなり、また全体像が遠のく。それでも
調査することをやめられない。複雑怪奇な下
山事件を長年にわたって調査してきた斎藤茂
男はそれを「下山病に感染する」と呼んだ。

初代国鉄総裁の下山定則が、常磐線の線路上
で轢断死体となって発見されたのは昭和24年
7月。本書では新たな手掛かり「亜細亜産業」
から細い糸をたぐるようにして事件の関係者
(と思われる人物)にたどり着き、何とか事
件の新たな像を結ぼうとする。見えてきたの
はどす黒い戦後の闇に暗躍するGHQの諜報機
関とその協力者たち…。
チームで調査していたものの、週刊誌の事情
から分裂を余儀なくされ、3人がそれぞれ別々
の本を上梓することになる。そのへんの事情
を自分の過失も含めて正直に書いてしまう所
が森さんらしい。

あまりに面白くて思わず夜更かししてしまっ
た本は久しぶりである。














『1歳の君とバナナへ』
岡田悠 著   小学館

妻の妊娠判明から、子どもが1歳になって大
好物のバナナの皮をぽいっと捨てられるよう
になるまでの育児エッセイ。
著者は会計ソフトか何かの開発をしているら
しい。兼業で旅行記を書いて出版していると
のこと。文章は軽妙でなかなかおもしろいし、
改行が多くてざくざく読めるのが快感。いま
読んでいる『ダロウェイ夫人』がまた全然進
まないから、余計に。
8か月ころから、子どもが保育園で風邪をも
らいまくってくる描写がおそろしい。



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