2024年12月31日火曜日

小学校 〜それは小さな社会 〜

 
☆☆☆★    山崎エマ   2024年

今年の映画納め。
年の瀬の銀座は人でごった返していたが、平日
だったためか、客席の入りは1/3にも満たない
ほど。

1年間、世田谷区の小学校に密着してカメラを
まわしている。教室や運動場だけでなく、職員
室にも多くの時間を割いており、先生たちの模
索や苦悩を写し取っている。自分が小学生だっ
た時代とは何もかもが違うようで、しかしよく
よく考えれば違わないようで…。違わないこと
としては、「男子はアホ」ということだろうか。
ゆうたろう、可愛いですね。

こういう映画はやはり特にカメラマンのセンス
が大いに問われる。何を撮り、何を撮らないの
か。運動会のシーンでスタートから少しパンは
するが、ゴール地点まで振らずに止めたカット
を見てそう思った。一度きりの瞬間で何を撮る
のか、選択の連続だろう。

全体としては、もう少しおもしろくなりそうな
気がした。具体的にどうすれば、というのは分
からずに言っているが、そんな気がしたのであ
る。

                           12.25(水) シネスイッチ銀座




2024年12月30日月曜日

読書⑦

 
『イギリス人の患者』
マイケル・オンダーチェ 著 土屋政雄 訳
創元文芸文庫

映画『イングリッシュ・ペイシェント』は名作
の呼び声高く、私の好きな映画でもある。その
原作小説なのだが、まあたいていの映画原作に
漏れず、「まったくの別物」といってよい。

それぞれで楽しめばよいわけだが、こちらの小
説のほうは文章がかなり詩的・抒情的である。
砂漠に炎上しながら墜落した飛行機、患者のい
なくなった野戦病院で独り"イギリス人の患者"
を介抱する看護婦、地雷除去を専門とするイン
ド出身の工兵…。"散文詩"のよう、とでもいえ
ばいいか、はっきり言って私の苦手なタイプの
小説になりかねない。ここに少しでも作者の自
己満足が見えるとすべてがダメになりそうなと
ころ、さすがはイギリス小説、理知的なところ
できっちり踏みとどまっていて、最後まで飽き
ずに読むことができた。

なんせブッカー賞50年の歴史の中で最も優れた
受賞作、つまりブッカー賞のなかのブッカー賞
に選ばれた小説である。これをおもしろいと思
えなかったらイギリス小説好きを名乗れないと
ころであった。




2024年12月29日日曜日

読書⑥

 
『江戸東京《奇想》徘徊記 [新装版]
種村季弘 著   朝日文庫

《奇想》とはなんのことかというと、要は
《奇書》である。博覧強記とはよく言った
もので、この人が街を歩くとまあ聞いたこ
ともない書名がどんどん湧いて出て来る。
東京の地理を勉強中の私としては、非常に
「ためになる」本であった。
根津の東京帝国大学のすぐ裏に遊郭があっ
たとは知らなかった。が、思えば『らんま
ん』の中で坪内逍遥をモデルとした人物が、
「根津」の「大八幡楼」から遊女を身請け
して妻にする、というエピソードがあった
ことを思い出す。これはほぼ史実らしい。

すぐ裏に遊郭があっては勉学に身が入らな
いということで、根津の遊郭は今でいう門
前仲町の方に移された。「洲崎遊郭」であ
る。














『村上春樹 映画の旅』
フィルムアート社

早稲田大学演劇博物館 2022年度秋季企画展
「村上春樹 映画の旅」の公式図録。

映画が村上春樹に与えた影響。また、近年映
画化が相次いでいることで、村上春樹の小説
が映画に与えている影響。

大小問わず村上作品のなかに登場する映画作
品をまとめあげた「村上春樹著作登場映画リ
スト」など、なかなか興味深い。




2024年12月27日金曜日

【LIVE!】 サニーデイ・サービス

 
  <12月の無限大>

 1. 新曲
 2. 新曲
 3. 胸いっぱい
 4. スロウライダー
 5. I'm a boy
 6. Goo
 7. 心に雲を持つ少年
 8. 枯れ葉
 9. あじさい
10. 真赤な太陽
11. 東京
12. 経験
13. 恋におちたら
14. 御機嫌いかが?
15. 若者たち
16. 恋人の部屋
17. サイン・オン
18. 夜のメロディ
19. 花火
20. 月光荘
21. 桜 super love
22. NOW
23. コンビニのコーヒー
24. 春の風
25. こわれそう
26. 風船讃歌
27. 青春狂走曲
28. 白い恋人
29. 週末

<Encore>
30. セツナ
 
<Encore2>
31. きこえない歌(新曲)

                 12.17(火) 恵比寿LIQUIDROOM

スリーピースは音数が少なくて聞きやすい。
歌詞がはっきり聞き取れるなんて、これまで
わりあい多くのライブを観ているがそうそう
ないことである。ライブハウスの音で、決し
て高級な音ではないが、ストレスなく聞けた。
曽我部さんはギターがめちゃくちゃうまい。

サニーデイ・サービスの特に初期の曲には、
はっぴいえんどへの憧れがストレートに表れ
ていてなかなか好ましい。「です・ます」調
の歌詞だけでなく、サウンドにも随所に感じ
られる。

スタンディングは久しぶりだったが、本編が
2時間40分。ダブルアンコールで3時間弱。
たっぷりやってくれてうれしいが、すでに若
くない足腰には苛酷。ツラかった。最後は早
く終わってくれと思ってしまった。


2024年12月26日木曜日

【LIVE!】 Thom Yorke

 
 "Everything"
 playing work solo from across his career

The Eraser
Let Down
Last I Heard (...He Was Circling the Drain)
Packt Like Sardines in a Crushd Tin Box
Suspirium
Fake Plastic Trees
Kid A
Atoms for Peace
Bloom
Present Tense
Not the News
Hearing Damage
Default
Volk
Rabbit in Your Headlights
Reckoner
Back in the Game
Idioteque

Encore:
Everything in Its Right Place
All I Need
Cymbal Rush
Play Video
How to Disappear Completely

             11.23(土) 東京ガーデンシアター

すばらしかった。奇妙なコードにのる美しい
メロディ、変拍子のうねるベースラインに重
なっていくシンセの不協和音。Radioheadの
曲が多いのも嬉しいが、"KID A"からが最多
というのが驚き。





2024年12月24日火曜日

読書⑤

 
新版 レミは生きている』
平野威馬雄 著   ちくま文庫

NHKの番組で、平野レミが「父の著書」と
紹介していたので初めて知った。
ただ平野レミが「レミ」と名付けられたこと
と本書はあまり関係ないとのこと。

書き出しを引こう。

  日本の少年少女に、ほんとうのことをわ
 かってもらいたいと思って、この本をかき
 ました。

  おなじ人間として生まれながら、顔かた
 ちがかわっているというだけで、差別あつ
 かいされ、毎日、悲しい思いでくらしてい
 る「混血児」にかわって、ぼくは、この本
 をかいてみました。

  ぼくも混血児です。でも、ぼくなんか、
 まだまだ幸福でした。

と始まるこの本は、著者自身の幼年時代、青
年時代を振り返って書かれた自伝的小説であ
る。エッセイといったほうがいいか。
混血児として差別を受けながら育ち、長じて
フランス文学者となり、めぐまれない混血児
のために尽くした。















『おとうさん、いっしょに遊ぼ』
『おとうさん、いっしょに遊ぼ 2 フランス望郷編』
じゃんぽ~る西 作

『レミは生きている』が昭和の混血児の受難
を書いた作品であるなら、フランス人のジャ
ーナリストと結婚した日本人漫画家による子
育てエッセイであるこちらは、令和の「ハー
フ」事情を描いた、と言えなくはない。しか
しこちらには差別のさの字も出ては来ず、こ
とさらハーフだから得をしたという記述も無
ければ、不当な差別を受けたという記述も、
まったく出て来ない。それだけ社会が変わっ
たということだろう。



2024年12月21日土曜日

夜明けのすべて

 
☆☆☆★★    三宅唱   2024年

業界内での評価が高いように感じる三宅唱、
私は『ケイコ 目を澄ませて』も『きみの鳥は
うたえる』もさほどでも…と思っていたが、
本作はとてもよかった。現代の「生きづらさ」
を描く映画はいまどき掃いて捨てるほど溢れ
かえっているけれど、この2人(上白石萌音
と松村北斗)の不器用な心のふれあいは、な
んだか貴重なものに思えた。演出と役者の芝
居がしっかり嚙み合っている。

                                10.31(木) 早稲田松竹




2024年12月15日日曜日

違国日記

 
☆☆☆★   瀬田なつき   2024年

もちろんガッキーが目当てで観たのだが、彼女
が演じることで魅力的な人物になっていたかと
いうと疑問。作劇として特に不満はないが、特
に印象的なシーンも、鑑賞から1か月半が経っ
たいま、残っていない。

                              10.31(木) 早稲田松竹




2024年12月13日金曜日

Cloud


☆☆☆★★  黒沢清   2024年

いつも通りだったな、というのが最初の感想。

もちろんよくよく振り返れば、転売ヤーが主
人公というのも、本格的な銃撃戦が描かれる
のも黒沢清としては珍しいのだが、読後感が
いつもと一緒というか、なんというか。

2階の部屋から、路上でこちらを見上げてい
る人物を見てしまうカットや、暴漢がすりガ
ラス越しに見えるカットなど、忘れがたい。

                       10.2(水) TOHOシネマズ新宿




2024年12月8日日曜日

【LIVE!】 グループ魂

 
<記事を書くのをサボりすぎていて、このまま
では今年のものを年内にアップできないのは明
らかですので、感想はとても短く済ませてとに
かく上げることを優先します>


 グループ魂(再)の、アルバイト募集!

モテる努力をしないでモテたい節
ずるむケーションブレイクダウン
チャーのフェンダー
ケーシー高峰
グラビア29時
ウィリアム・カウパー
平成の記憶がない!
オクサーヌ
IN
Over 30 do The 魂
High School
叶姉妹
欧陽菲菲
さかなクン
君にジュースを買ってあげる♡
職務質問
不滅の男(by 松尾スズキ)
アイブラユー
押忍!てまん部
高田文夫
カチカチ

(Encore)
中村屋
痛風だけど恋愛したい
ペニスJAPAN
TMC

        9.18(木) Zepp DiverCity Tokyo

なぜこんなツアータイトルなのかというと、
グループ魂の"バイト君"こと村杉蝉之介が薬
物所持で逮捕されたから。タブーや自主規制
を笑い飛ばす爽快なライブだった。随所にバ
イト君ネタを盛り込んだ港カヲルのトークが
冴えていた。アンコールの中村屋では東出く
んのネタに笑いすぎて涙が出た。