2024年12月30日月曜日

読書⑦

 
『イギリス人の患者』
マイケル・オンダーチェ 著 土屋政雄 訳
創元文芸文庫

映画『イングリッシュ・ペイシェント』は名作
の呼び声高く、私の好きな映画でもある。その
原作小説なのだが、まあたいていの映画原作に
漏れず、「まったくの別物」といってよい。

それぞれで楽しめばよいわけだが、こちらの小
説のほうは文章がかなり詩的・抒情的である。
砂漠に炎上しながら墜落した飛行機、患者のい
なくなった野戦病院で独り"イギリス人の患者"
を介抱する看護婦、地雷除去を専門とするイン
ド出身の工兵…。"散文詩"のよう、とでもいえ
ばいいか、はっきり言って私の苦手なタイプの
小説になりかねない。ここに少しでも作者の自
己満足が見えるとすべてがダメになりそうなと
ころ、さすがはイギリス小説、理知的なところ
できっちり踏みとどまっていて、最後まで飽き
ずに読むことができた。

なんせブッカー賞50年の歴史の中で最も優れた
受賞作、つまりブッカー賞のなかのブッカー賞
に選ばれた小説である。これをおもしろいと思
えなかったらイギリス小説好きを名乗れないと
ころであった。




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