2013年7月15日月曜日

ちかごろの読了本②

『漢字雑談』
高島俊男 著   講談社現代新書

高島さんの最新作は、PR誌『本』に連載していたコラム集。
読了してしまうのが惜しく、ちびちびと読んでいた。相変わらずハズ
レなしの面白さなんで、高島さんの本を読んだことないひとは早く読
んでください。
今回は中でも、万葉集の有名な歌から多方面に話が広がっていく
1篇が印象的だった。
柿本人麻呂の

 ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ

である。当の万葉集にはしかし、この歌がこのように漢字かなまじり
で書いてあるわけでは無論ない。まだひらがなは発明されていない
から。万葉集には、以下の漢字が並んでいるだけである。

 東野炎立所見而反見為者月西渡

さてこれをどう読むのか。
平安末期に書写された本に、既に以下の読みが見える、とのこと。

 あづま野のけぶりの立てるところ見てかへり見すれば月かたぶきぬ

「月西渡」を「月かたぶきぬ」と意訳(?)している以外はほぼ素直に
読み下している。が、両者の読みを比べた時、歌としての格調は前者
の読みに遠く及ばない、との高島さんの判定である。実際そうですよね。
では、前者のようにカッコよく読み下したのは誰なのか。

賀茂真淵なのだそうです。本居宣長の師匠。

……このまま受け売り話を続けても意味ないのでやめますが、こういう
話が盛りだくさんの本なのです。私にはたまらんです。











『街場の大学論 ウチダ式教育再生
内田樹 著     角川文庫

日本の高等教育はどういう状況にあり、これからどうなっていくのか。
ブログ記事の中から「教育」に関するものを集めたら1冊本が出来て
しまうというのも、すごいですね。中でも、他の文章と毛色は違えど、
日比谷高校の思い出をつづった一篇が秀抜であった。私はこういう
ノスタルジーを湛えた文章がけっこう好きなのだが、だからといって
普段からノスタルジーに浸ってばかりのひとが書いてもダメである。
内田樹とか高島俊男とか、あまり懐古趣味の無さそうなひとが不意
にそういう文章を書くと、意表を突かれてグッときてしまう。

やっぱり「読んでて気持ちいい」というのは本にとって大事なことです
ね。これをウチダ式にいえば、
「『読んでいて気持ちいい』というのは本にとってのアルファでありオメ
ガである」
ということになろうかと思う。


2013年7月12日金曜日

ライフ・イズ・ミラクル


☆☆☆★★★      エミール・クストリッツァ     2005年

大好きな1本。5年ぶりぐらいに観た。
俳優と動物たちとサッカーと音楽と鉄道と戦争と愛がごった混ぜに
なり、調和などという言葉を無視しながら突き進んでいくさまは、まさ
に映画にしか表現できない世界に思える。
クストリッツァ映画でいまのところいちばん好き。

                                                                7.5(金) 新橋文化劇場


2013年7月10日水曜日

ボーイ・ミーツ・ガール


☆☆☆         レオス・カラックス      1983年

うーん。どうしましょうね。
まあはっきりいってよく分からんという感想ですよ。
でもモノクロのパリの風景にフランス語のモノローグだけで
なんとなく映画になるのって、なんか卑怯だよね。それは私
がフランス語わからないからかもしれないけど…。

しかしドニ・ラヴァンってこんな最初から出てるんだ!
「ホーリー・モーターズ」ではけっこうじいさんだったよ。

                                                                   7.1(月) DVD


2013年7月9日火曜日

ちかごろの読了本①

『知と愛』
ヘルマン・ヘッセ 著   高橋健二 訳   新潮文庫

ナルチスとゴルトムント。
ヘッセ先生は相変わらず、忘れがたい人物をひとりづつ私たちに
植樹をするように植えつけていきますね。
こういう、平易な文章で読みやすくて、話としてもおもしろいんだけど、
中をよくよく覗くと、深く深く底知れぬ世界が広がっている、というの
は小説としてのひとつの理想形だと思います。

それにしてもゴルトムント、おまえってやつは…。でも居るよね、こう
いうひと。











『マイ仏教』
みうらじゅん 著    新潮新書

読む前から尊敬はしていたけど、みうらじゅん流の現代を生き延びる
「サバイバル術」という側面もある本書を読めば、きみもきっとみうら
ワールドの住人になれるよ! なりたくないひとは読まなくていいです。


2013年7月8日月曜日

夕陽に赤い俺の顔


☆☆☆★          篠田正浩          1961年

「瀬戸内少年野球団」を例外とすると、篠田映画でおもしろいと思った
ことはほぼ無い、ということを最初に断わっておかなくてはなるまい。
本作は山田洋次セレクションの1本だが、篠田監督30歳のときの意欲
作とのこと。なるほど、若さが充溢するようなナンセンス・コメディっぷり
には才気を感じるし、画づくりがおもしろい。
まあ、「時代を超えた」ものにはなっていないが、それなりに楽しめる。

                                                                 6.29(土) BSプレミアム


2013年7月4日木曜日

17歳の肖像


☆☆☆★★★      ロネ・シェルフィグ       2010年

元の題は"AN EDUCATION"
つまり「教育」ですね。
経済力も教養も兼ね備えた中年男が、ちょっと背伸びしたがりの
美少女を「教育」する、という非常に夢のある話である。ポイントは
この美少女がおつむの弱いヤンキーではなく、成績優秀でオックス
フォードを目指していながら、フランス映画に憧れ、親に隠れてシャ
ンソンを聴くようないじらしいハイスクール・ガールであるという点で
ある事は言うまでもない。

まあほぼ純度100%で「キャリー・マリガンを楽しむための映画」といっ
ていいだろう。笑い出す直前の表情が宮﨑あおいに似てるんですね。
私はつくづくこういう顔が好きみたいです。

                                                                        6.25(火) DVD



2013年7月1日月曜日

中間発表

今年の半分が過ぎ去ってしまったとはちょっと信じられない
感じがしますが、どうやら厳然たる事実のようです。

ということでサクッと上半期を振り返ってみることに。
まずは本数。観たけどまだ記事にしていない3本を加えるとその数…

61本!!!

なんと。さっき数えてみて自分でも驚きました。
でもなー、たしかに今年けっこう観てるもん。
しかし去年の39本とはエライ違いですな。

良い出来だったと私が思うものは、
洋画だと
『ジャンゴ 繋がれざるもの』
『リンカーン』

邦画だと
『東京家族』

旧作だと
『にごりえ』
『博士の異常な愛情』

このあたりでしょうか。

今年後半の注目作は、もちろん『風立ちぬ』。
最近映画観に行くと4分間の特別予告編が流れますが、すでにもう
ただならぬ気配がしています。あとは、
『共喰い』(青山真治)
『地獄でなぜ悪い』(園子温)
『そして父になる』(是枝裕和)
あたりかな。
『キック・アス2』は今年中に観られるのだろうか。
そもそもこれら、釧路で観られるのだろうか。不安である。

映画もいいけど、「あまちゃん」がここのところ私の生きがいです。
「みんな!エスパーだよ!」というバカドラマも毎週欠かさず観ています。
そんな上半期でありました。