2020年6月15日月曜日

北陸代理戦争


☆☆☆★★    深作欣二     1977年

シネマトゥデイより引用。

 『新仁義なき戦い』シリーズの一編として
 企画されながらも、主演をするはずだった
 菅原文太さんが降板。『仁義~』の看板を
 外して仕切り直すも、撮影中に渡瀬恒彦さ
 んが運転したジープが転倒して重傷・降板。
 果ては当時進行中の抗争をモチーフとして
 いたことから、映画公開後に本作のモデル
 となった人物が射殺されるなど、スキャン
 ダラスな側面がクローズアップされた因縁
 の作品として知られている。
            (文・壬生智裕)

というわけで、大変にいわくつきの映画なわ
けだが、職場の先輩とときどきヤクザ映画の
話をしていたら、「よかったら観てみて」と
この映画のDVDをくれたのであった。深作は
これを最後に実録路線をやめてしまったとの
こと。

福井におけるヤクザの抗争を活写しており、
『仁義なき~』シリーズの広島弁が福井弁に
置き換わっただけの作品と言えなくもない。
そして福井弁の応酬がものすごく解らない。
もともと聞き取りにくいのと福井弁がディー
プなののダブルでかかってくるので、たぶん
半分ぐらいしか理解できなかった。

                                    5.24(日) DVD


2020年6月13日土曜日

プレイス・イン・ザ・ハート


☆☆☆★★  ロバート・ベントン 1984年

タイトルは地味だが、なかなか胸に染みる
良い映画である。
保安官の夫を亡くし、ローン返済が滞って
家を差し押さえられそうになりながらも、
「今できること」にベストを尽くし、健気
にたくましく生きる女性を描く。最初コソ
泥として家に入り込んできた流れ者の黒人
のモーゼスとバディを組んで、綿花栽培を
やり遂げる過程は爽快ですらある。

アメリカに特有のすさまじい嵐に襲われる
シーンがあり、尋常じゃない強風を実際に
吹かせている。中盤の山場のシーンなのだ
が、どうやって撮影したのだろう? アメ
リカの特効さんがすごいのか。見ごたえの
あるシーンになっている。

主演はサリー・フィールド。この映画で2回
目のアカデミー主演女優賞を得たとのこと。
すごく美人というわけではないが、か弱く
も見えるけど、可愛くて、芯が強い凛とし
た姿が、映画に一本筋を通している。ジョ
ン・マルコヴィッチの映画デビュー作でも
ある。盲目の気難しい青年の役を好演して
いる。

主役とはあまり関係ない、ダブル不倫カッ
プルの方のエピソードに、あまりストーリ
ー上の重要性が無いのが惜しいといえば惜
しい。「ハリウッド式脚本学校」だときっ
とその部分を指摘されるだろう。

                        5.23(土) BSプレミアム


2020年6月9日火曜日

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ


☆☆☆★★★   バンクシー  2011年

バンクシーみずから監督した現代アートの、
特にウォールアート(またの名を"壁の落書
き")事情に特化したドキュメンタリーなの
だが、主人公というかおもな被写体はティエ
リーというロサンジェルスの古着屋である。
どうしてバンクシーではなく古着屋が主人公
なのかは観ると分かり、観ないと分からない
(当たり前だ)。しかしこの選択こそが、映
画を格段に面白くしたといっていいだろう。

バンクシー本人もインタビューを受け(穏や
かでユーモア混じりでおもしろい)、作品も
紹介される。いろんなウォールアートが出て
くるが、やはりバンクシーの作品は間違いな
くアートと呼ぶにふさわしいものである。

ティエリーはバンクシーの薫陶を受けて自分
の古着屋を放り出してアーティストになろう
とするのだが、その二番煎じ感がまた絶妙で
ある。

               5.21(木) Amazonプライムビデオ


2020年6月7日日曜日

読書⑭


『島とクジラと女をめぐる断片』
アントニオ・タブッキ 著 須賀敦子 訳 河出文庫

「島」とはポルトガル領アソーレス諸島
(アゾレス諸島とも表記される)の9つの
島のこと。島に関係するスケッチのよう
な文章もあれば、命がけの捕鯨船に乗せ
てもらう「捕鯨行」というルポのような
文章などもある。
いかにもフィクションらしいのは最後の
「ピム港の女」ぐらいなのだが、この無
造作に放られたような短篇がまた良い。

『インド夜想曲』で知られるタブッキと
いう人物はイタリアに生まれながら、フ
ランスでペソアの詩に出会ってポルトガ
ルに熱中し、そのままポルトガル語で小
説まで書いてしまうという、なかなかに
興味深い人生である。









『お前らの墓につばを吐いてやる』
ボリス・ヴィアン 著 鈴木創士 訳 河出文庫

憎悪を燃料にして乾いたハイウェイを走
り続けるアメリカ車のような文章である。
昔から『墓に唾をかけろ』の邦題で有名
な小説の新訳。
バックトンというアメリカ南部の街を舞
台にした、乾いた文体による犯罪小説で、
想起するのは(安易なような気もするが)
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』。バッ
クトンという名の街は検索しても出て来
ないのだが、架空の街だろうか。

ヴィアンはチャンドラーの小説の仏訳者
だったというのがとても興味深い。




2020年6月5日金曜日

シックス・センス


☆☆☆  M・ナイト・シャマラン 1999年

期待ほどでもないなー、という印象。
初見なのだが、有名な「どんでん返し」の
ことは、漫然と生きているうちにどこかで
耳にしたか読んだかで、観る前から知って
しまっていた。なので、初めて観るにも関
わらず、のちにつながる伏線や矛盾点を意
識しながら観るという、妙な状態で観るこ
とになった。

2回目の鑑賞にも耐えるようにがんばっては
いるけど、でもやっぱ無理あるよね…。特
に結婚記念日のレストランのシーンはおか
しいと思う。

                         5.19(火) BSプレミアム



2020年6月3日水曜日

Wの悲劇


☆☆☆★★    澤井信一郎    1984年

さすがは荒井晴彦の脚本で、ただのアイド
ル映画とは一線を画しており、劇中劇の扱
い方など唸らされる。
人気劇団の研究生(薬師丸ひろ子)が、大
女優(三田佳子)のスキャンダルの火の粉
をかぶる代わりに大きな役を与えてもらう。
腹をくくった薬師丸の嘘八百を並べた記者
会見がなかなか奮っている。

薬師丸ひろ子の酔っ払う演技がキュートな
のだが、酔った芝居といえば個人的には
『わが母の記』の宮﨑あおいが忘れがたい。
厳しい演出家の役で蜷川幸雄も出演。研究
生のライバルは高木美保。今ではすっかり
コメンテーターだが、美人である。

                          5.17(日) BSプレミアム


2020年6月1日月曜日

ゴッドファーザー PART Ⅲ


☆☆☆★★★  F.フォード・コッポラ 1991年

個人的にはとても好きな3作目。
ヴィンセント(アンディ・ガルシア)の方が
マイケルよりも人間味があって好きだからか
もしれない。ただ、生意気で頭に血が上りや
すい性質を父親のソニーからまともに受け継
いでしまったので、この世界で長生きはでき
ないかもしれない。

ソフィア・コッポラが当時不評だったとよく
耳にするけれど、そんなに悪くないと思うが。
ジョーイ・ザザ ← ドン・アルトベッロ ← ル
ケージという流れのようだが、このルケージ
という男の影がうすくて、どれだけ悪いヤツ
なのかが最後までよく分からない。

                           5.16(土) BSプレミアム