2019年2月28日木曜日

東京流れ者


☆☆☆    鈴木清順    1966年

ヤクザから足を洗おうとした男が、様々な妨害に
遭い、しがらみに絡めとられて、結局は裏社会に
引きずり戻されるというプロットは、ごくありき
たりなものである。東映ヤクザ映画の王道だし、
最近観たデ・パルマの『カリートの道』も同じ話
だった。
それを敢えてハチャメチャな無軌道映画にしてい
るのが鈴木清順の演出だろう。もうロジックなど
完全に無視で、とりあえず渡哲也の「見せ場」が
優先されている。唖然とさせられる展開の連続に
はついて行きかねた。

                                     2.20(水) BSプレミアム


2019年2月26日火曜日

読書②


『ペット・サウンズ』
ジム・フジーリ 著 村上春樹 訳 新潮文庫

「ペット・サウンズ」というたった1枚のロック・
アルバムについて、あらゆることを語り尽くした
本である。
このアルバムを「幸福についての哀しい歌の集ま
り」と評した言葉が紹介されるが、たしかにこれ
以上の評言もないように思う。「ペット・サウン
ズ」を聴いたときのあの何とも言えない高揚感と
哀しみの入り混じる「波立ち」を言い表して妙で
ある。それはブライアン・ウィルソンの「哀しみ」
と不可分であることがよくわかる。










『夫のちんぽが入らない』
こだま 著   講談社文庫

みなさんも本屋で目にしていったいどんな
不謹慎なおふざけ本なのかと思われたかも
しれないが、とても真剣に書かれた本であ
ることは読めばすぐにわかる。ちりばめら
れたユーモアはかなりセンスがよく、比喩
も巧みで、何度も声をあげて笑った。
まあタイトルに偽りはないわけだが、問題
は次第に性生活のことから、小学校の教師
となった筆者の職場へと移ってゆく。

この異形のタイトルを持つ本を性格づける
ために、帯の推薦文を松尾スズキに書いて
もらったのは正解だろう。絶妙な人選だと
思う。関係ないけど、テレ東の「フルーツ
宅配便」おもしろいね。



2019年2月24日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


 ALL TIME BEST ワンマンツアー ~KYO-MEI祭り~

 1.その先へ
 2.ブラックホールバースデイ
 3.サニー
 4.罠
 5.ジョーカー
 6.ひとり言
 7.悪人
 8.雷電
 9.コワレモノ
10.初めての呼吸で
11.ヘッドフォンチルドレン
12.美しい名前
13.未来
14.Running Away
15.グローリア
16.シンフォニア
17.コバルトブルー
18.刃

(アンコール)
EN1.冬のミルク
EN2.ハナレバナレ
EN3.無限の荒野

                                2.8(金) 日本武道館

去年の10月に初日を観てツアー出発を見送った、
そのツアーのファイナルである。前にも初日と最
終日が東京公演というパターンがあったな。気に
入ってるのだろうか。
わたしの個人的な思い入れひとしおだった「カオ
スダイバー」での始まりは変更されて「その先へ」
で幕を開けた。
バンドとして3度目の武道館。「バックホーンっ
て3回も武道館やれるバンドなんだねー」と栄純
みずから言っていたが、ファンとしてもいくぶん
感慨深いものはある。
火柱があがったり金銀の紙吹雪が舞ったりする普
段はやらない「らしくない」演出もあり、MCで
誰かが照れて言及するかなと思ったが、何も言わ
なかった。
ベストアクトは「ひとり言」。


2019年2月20日水曜日

バーニング 劇場版


☆☆☆★★   イ・チャンドン  2019年

「留守のあいだ、猫に餌をやって欲しい」と
頼まれる主人公、というのがいかにも春樹的
である。
例によって原作(「納屋を焼く」)をほとん
ど覚えていないので、どのぐらい換骨奪胎さ
れているのか不明だが、純粋な"悪"を描くと
いう姿勢みたいなものはしっかりと春樹から
受け取っているようだ。そこは好ましく思っ
た。

ベンを山中まで尾行していくシーンが、とて
も重要と思われる位置にあったのだが、あれ
は物語にどう作用したのだろうか。いまいち
わからなかった。あるいはベンがしている悪
事を主人公が確信するきっかけとなったとい
うことなのか…?

                     2.7(木) TOHOシネマズ日比谷シャンテ


2019年2月17日日曜日

3月のライオン 前編


☆☆☆★★   大友啓史   2017年

この高得点は、どうせ有村架純が可愛すぎて
それに加点したとか言うと思ってますよね。

…その通りですよ、悪いですか!

だって「性格のキツい、血のつながってない
美人の姉」の有村架純ですよ。しかも不倫中
ですよ。気になって仕方がない。

まあそれはさて措いても、わたし大友啓史の
映画ははじめてですけど、なんとなく好感を
持ちましたよ。「秀吉」とか「龍馬伝」観て
たんで、奇抜なことばかりやってるのかと思
えば、この繊細な映画で神木くんの良い所を
うまく引き出している。

                                 2.5(火) BSプレミアム



2019年2月14日木曜日

戦艦ポチョムキン


☆☆☆  セルゲイ・エイゼンシュテイン  1925年

映画好きなら名前は知っているこの1本。
94年前の映画でありながら、いまだ映画史に燦然と
輝く金字塔である。
腐った肉のスープに激怒した水兵たちの反乱、とい
うと『ストライキ』と同じような話だと言えるかも
しれない。しかし反乱を主導した人物が死んで、戦
艦ポチョムキンがどこかの岸に碇泊してからが、意
外に長い。
モンタージュ理論をわがものとしたエイゼンシュテ
インの才気が爆発したのがこのフィルム、なんだっ
てさ。オデッサの階段での虐殺シーン、特に乳母車
が階段を転がっていくシークエンスは、デ・パルマ
の『アンタッチャブル』に引用されたりしている。

でも、いま観てそんなにおもしろいかというと…。
まあ、「観た」ということが大事である。

                                               2.1(金) 早稲田松竹





2019年2月11日月曜日

ストライキ


☆☆☆  セルゲイ・エイゼンシュテイン  1925年

改装を経た早稲田松竹でエイゼンシュテイン2本立て。
まずは長篇デビュー作の『ストライキ』。もちろんサ
イレント映画。

タイトルに偽りなく、虐げられ搾取されている労働者
がストライキによる抗議行動を起こし、それが大規模
な騒乱となるが、やがて権力の側から鎮圧されるとい
う話である。

エイゼンシュテインといえば現代の映画編集の基礎と
なっている"モンタージュ理論"…とのことです。私も
よく知らんのだが…。まあやはり、そういう編集がも
はや当たり前になった映画を浴びて育っているので、
当時どういう所が斬新だったのかは、いまいち分から
ない。牛の屠殺と人間の銃殺をカットバックさせてい
るシーンとか、ああいうやつのことなのか。そう、騒
乱は「鎮圧」というより「皆殺し」にされて終わるの
である。ある意味では鎮圧だが、すさまじい終わり方
だ。あれでは働き手がいなくなるのでは…。

94年前のソヴィエトの人たち、みんないい面構えをし
ている。

                                                 2.1(金) 早稲田松竹