2011年2月3日木曜日

[最近読んだ本 まとめて]

年末年始にかけて、実は色々読み終わっていたのだけど、
感想を書くのが億劫で放置されていた。本の感想って映画
よりずっと面倒である。なんでだろう。

『ハイスクール1968』  四方田犬彦  新潮文庫

知的エリートが集まる教育大附属駒場高校(現在の筑波大
附属駒場高校)の中でも頭が良くて仕方なかった(らしい)
四方田犬彦の、スノッブで鼻持ちならない青春譚。しかしこ
れがけっこう面白い。いわば名作『先生とわたし』の高校版
であって、あちらが由良君美という知の怪物みたいなひとを
中心に据えて成功していたのに対して、本作は何もかもが
おもしろくない高校生のフラストレーションみたいなものが
常につきまとい、若干うるさいきらいはある。
実名を出されたかつての級友たちによると、事実誤認も多
いようだ。しかし、一種のフィクションと考えて「ある知的エ
リートの敗北と挫折の記」として読めばじゅうぶんおもしろい。
のちに映画評論家となる氏が高校時代に夢中になったという
洪水のような音楽・文学・映画の列記には、思わずにやにや
してしまうのである。

『読書癖 1』  池澤夏樹  みすず書房

おもに新聞に書いた書評で構成されている。しかし、うーむ、
いま内容をほとんど忘れてしまった。1ヶ月でこうも忘れるもの
か。なんか情けないぜ。

『さよなら渓谷』  吉田修一  新潮文庫

早く『悪人』を読みたいのだけど、文庫本の表紙が映画に合わ
せた表紙(妻夫木くんと深津絵里のアップ)なので買うことがで
きない。私は映画版の装丁の文庫本が嫌いである。あれは装
丁とは呼べない。たぶん1冊も持ってないと思う。まあしばらく経
てば元に戻るので、その時を待つことにする。
代わりに本作を読む。吉田修一の何がいいってこの安心して読
める文章がいい。本作も、なんだか深そうな男女の業みたいな
感じだったが、とにかく相変わらず良い文章だった。以上。

札幌から釧路に戻る電車で一気読みしたが、読み終わってもま
だ帯広だったのには驚愕した。この距離感が分かるのは、住ん
でるひとだけだろうけど。

『パンドラの匣』 太宰治 新潮文庫

「パンドラの匣」「正義と微笑」を収める。
太宰の文体は非常に好きである。ひょんなところから変な単語が
飛び出してきて、それがぴたりと嵌っているのが良い。天才なん
ですなー。
映画を観てから原作を読むことはあまりしたことがないが(逆は
よくあるけどね)、「パンドラの匣」は先に映画(冨永昌敬 監督)を
観ていた。映画はたいしたことなかったが、結論からいえば、これ
はあまり良くないね。マア坊は仲里依紗、竹さんは未映子さんの
姿がちらついて一向にダメだった。イメージが限定されるようで、
不愉快までいかないが愉快ではなかった。

『つげ義春コレクション』1~3巻  筑摩書房

漫画界の純文学、つげ義春。同期が全巻持っているので、少しず
つ貸してもらっている。1~3巻では「ねじ式」「沼」「ゲンセンカン主
人」など、有名どころがだいたい網羅してある。いやおもしろいね。
特に良いやつは、読み終わったあとのヒンヤリとした心持ちが、優
れた純文学を読んだときに似ている。「沼」なんてのは思わず何度
も読み返してしまった。ちなみにここでは芥川賞の銓衡範囲にある
ものを純文学と言っております。


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