2012年11月25日日曜日

秋の読書②


『異邦人』
アルベール・カミュ 著   窪田啓作 訳    新潮文庫

内田樹の「アルジェリアの影」を読んで以来、カミュが気になる。
実は高校の頃『ペスト』を途中で挫折したことがある以外、カミュ
を1冊も読んだことがない。
ということで「初カミュ」です。

しかしこの『異邦人』ほど「読んでなくても伝わってきてしまう情報」
の多い本はなかろう。「きょう、ママンが死んだ」も「太陽のせい」
も「主人公は死刑になる」も、なぜか読む前から知っている。なん
なら「ムルソー」という主人公の名前も「不条理」というキーワードも、
すでに事前情報としてある。あるいは映画の予告編を先に見せら
れているようなものか。

なので、読んでみて「予告編」と違った印象だったことだけ書くが、
私はムルソーという人間にとても親近感を感じた。ムルソーの"虚
無感"は、現代に生きる者にけっこう通じるものがあると一読して
思った。私が普段感じていること、私の無気力の源のようなものの
所在に光を当てられたような気にもなったのである。無気力に「源」
があるのか、という話にもなるが。









『結局、どうして面白いのか 「水曜どうでしょう」のしくみ
佐々木玲仁 著     フィルムアート社

題名の通りの本です。
著者は「物語」「メタ物語」という概念を導入することで「どうでしょう」
の面白さの仕組みを解き明かそうと試みています。そしてその試み
はある程度成功しているように思います。
我々「どうでしょうファン」=「どうでしょう班」は、これからもずっと「結
局、どうして面白いのか」と問い続けながら、どうでしょうの新作を待
ち焦がれ、過去のDVDを繰り返し繰り返し観るべきなのでしょう。そ
れは甘美な宿命にも似ています。



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