2015年5月16日土曜日

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☆☆☆★★★      山下敦弘     2011年

川本三郎の原作にけっこう思い入れがあるので果たして
どうかなと思ったが、映画もよくできていると思う。満足。
そして忽那汐里、可愛いな。あのエピソードは本筋とは関
係ないのだが、妙に心に残る。まあそもそも原作はエッセ
イなので、本筋も何もないけれど。

これは何の話かと問われれば、「挫折」の話である。
なにせ若き新聞記者だった川本三郎の身に起きた本当
の事なのだから。彼は朝霞駐屯地の自衛官刺殺事件に
関する取り調べで、取材で得た情報を明かすか、殺人事
件の捜査に協力するかのジレンマに苦しみ抜いた挙句、
ニュースソース秘匿の原則をつらぬき、実際に証拠湮滅
罪で逮捕されたのである。あんな松山ケンイチみたいな
エセ活動家のために……。映画でも、松山ケンイチはか
なり胡散くさい存在として描かれる。妻夫木くん(川本)は
それに気付きながらも、取材対象との距離を図りかね、
事件に巻き込まれることになる。このへんの機微も、妻夫
木くんの上司(古館寛治)を活かして、映画はうまく処理し
ていたようだ。

原作にはむろん、作家となった現在の川本が試写会から
の帰りに居酒屋に立ち寄るシーンは無い。何でもかんでも
「泣いて終わり」というのが最近多すぎる気はするが、まあ
必要な付け足しだったと思う。映画は「ケリ」を付けないと
いけないからね。

                                                            5.4(月) BS朝日


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