2015年12月7日月曜日

初冬の読書


『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集
村上春樹 著     文藝春秋

ひさびさの旅行記。
春樹の旅行記はいつもおもしろい。ハズレってあまり無いと思う。
あ、『使いみちのない風景』だけはおもしろくなかった。

今回は、いろんな媒体に書いたものを集めたもので、統一的なコン
セプトがあるわけではない。ラオス、ボストン、ギリシャ、トスカーナ、
熊本、アイスランド……と、場所もさまざまである。
「シベリウスとカウリスマキを訪ねて」と題されたフィンランド旅行記
が出色である。『多崎つくる』にも出て来たフィンランドだが、いつも
のように想像で全部書いて、後から当地を訪ねたらしい。カウリス
マキ兄弟の経営するバーにいたカップルの描写が秀逸である。










『狭き門』
アンドレ・ジッド 著   中条省平・中条志穂 訳
光文社古典新訳文庫

「題名は知ってるけど、どんな話かは知らない小説シリーズ」のひと
つ。前から読みたかったのだった。ちなみに題名は『マタイによる福
音書』から来ているらしい。受験戦争の話ではない。

「滅びに至る門は広々している。命に通じる門は狭く、その道も細い。
だから力を尽くして狭き門より入れ。」
という内容の一節からとられた。

主な登場人物は、ジッド本人を思わせるジェロームという青年、いと
このアリサ(2歳上)とジュリエット(1歳下)。美人姉妹である。
物語の序盤、ジェロームはアリサが好きらしい。両想いに近いのだ
が、途中でジュリエットがいたく熱烈にジェロームを愛していることが
判明すると、控えめなアリサは遠慮して身を引くと言い出し、いやい
やちょっと待て……みたいな展開である。まあよくある三角関係の
恋愛譚、なのかと思いきや、ジェロームに愛されていないことを知っ
たジュリエットはあっさりと、求婚してきた熊みたいな男と結婚してし
まう。
そしてここからがフランス的というか形而上的というか、観念的な話
になってくるのだが、アリサが、ジェロームを愛することと信仰を貫く
ことが両立できないっつーことで悩みはじめ、さんざんジェロームを
苦悩させ、アリサ自身も苦しみ抜いた挙句、信仰を貫く方を選ぶの
である。面倒くせぇ……。と思ってしまうのは、私が宗教に極めて無
関心な国に住んでいるからだろうか…。

「信仰と愛の相克」ということになるらしい。うーむ、ピンと来ない!


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