2016年7月2日土曜日

FAKE


☆☆☆★★     森達也     2016年

この映画を観たあとは、誰もが佐村河内守という人間
に温かな親しみ(多寡はあれど)を感じるに違いない。
かくいう私もそうだ。
だが、森さんが意図したのは、そういうことではないだ
ろう。ここ数年、森さんが口を極めて警告し続けている、
"集団化"の現象。水に落ちた犬を叩く傾向を強める大
衆・マスコミ。この社会の縮図のようなものを、佐村河内
騒動に見て取ったのではないか。
しかし「とりあえず」まわし始めたカメラに、よもやあのよ
うな生活や会話が写し出されるとは予想していなかった
はずだ。

「観察すること」だけがドキュメンタリーだと思っているひ
とは、この映画に驚かされ、腹を立てるひとだっているか
もしれない。しかしこちとらカンパニー松尾や松江哲明に、
コミットメントこそがドキュメンタリーだと教えられてきた。
いまさらあのラスト15分に驚きはしない。が、最後の最後、
まさかこれがこうなってエンドロール、なんてことはない
よな! と思っていたら、まさにそうなってしまったので、
森さんの意図をはかりかねてしばし唖然とした。まあエン
ドロールのあとのシークエンスがあってよかったと思う。

                                           6.29(水) ユーロスペース


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