2018年8月31日金曜日
未来のミライ
☆☆★★ 細田守 2018年
どうも釈然としないのだが、細田さんは「映画的
な快感」というのをどういうふうに考えているの
だろうか。こうも不愉快な人物ばかりが出て来て
勝手な言動をするばかりでは、愉快を感じようも
ないというものだ。いったいこれが『サマーウォ
ーズ』と同じひとが作った映画なのかと疑うほど、
映画的な快感の無い映画であった。
8.21(火) 新宿ピカデリー
2018年8月27日月曜日
シェーン
☆☆☆★★ ジョージ・スティーヴンス 1953年
西部劇の名作といわれている。いわれとりゃーす。
村上春樹も何かで言及していたし、内田樹もこの
フィルムで長々と評論を書いていたように思うが、
観ていなかったのでよく分からなかった。
流れ者のガンマンを主役とした実にオーソドック
スな展開である。観ながら高倉健主演の『唐獅子
牡丹』のような東映やくざ映画を想起せずにいら
れなかった。
いくぶん変わった要素としてあるのは、シェーン
が滞在する家の子どもが、その実力を敏感に感じ
取り、「きっとすごいひとに違いない」というこ
とで憧れを抱く、その子どもの視点からこのフィ
ルムが構成されている点か。
あと、物語の中盤までシェーンは拳銃を抜かない
のだが、抜いた時の轟音がすさまじい。音響効果
さんがボリューム間違ったのかと思うほどである。
8.11(土) BSプレミアム
2018年8月24日金曜日
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
☆☆☆★★★ スティーヴン・スピルバーグ 2018年
新聞がまだ辛うじてメディアの王様だった時代と
いえるだろうか。それとももうテレビにその座は
明け渡していたのか。いずれにせよ、言論機関と
しての新聞が社運をかけて政府の秘密を暴き、大
統領は本気でその報道を阻止しようとした。
ワシントン・ポストの社主を演じるのはメリル・
ストリープ。彼女が画面に居るとなぜこんなに安
心してしまうのか。ただの画面が絵になる感じ。
ずっと観ていたいと思わせられる。
いよいよ政府を転覆させるほどのスクープを印字
すべく、輪転機がまわり始めるカットには実にワ
クワクする。輪転機の振動が夜明けの社屋全体に
伝わり、記者は手ごたえを嚙みしめる。活字が権
力を倒す、そのことを象徴するカットである。
政府との裁判の果て、最高裁を出るメリル・スト
リープが掻き分ける群衆はみな女性ばかり。そし
て誰もひと言も発しない。この演出にはシビれた。
マクナマラ国防長官による仮借ない大統領批判が
おもしろい。曰く、
ニクソンはクソだ。あらゆる汚い手を使って、
君に圧力をかける。新聞社を潰したがってる。
うちにもこのぐらいの気概のある官房長官がいれ
ばなー。
8.11(土) 早稲田松竹
2018年8月21日火曜日
15時17分、パリ行き
☆☆☆★★ クリント・イーストウッド 2018年
早稲田松竹で「見逃した映画」の2本立て。
列車内のテロを惨劇になる前に食い止めた若者3人を、
当の本人に出演させて演じさせるという離れ業。
なんだかメリットよりデメリットの方が多そうな話だ
が、イーストウッドさんがそれでやると言ったんだか
ら、おまかせすればいいのである。
途中のイタリア旅番組みたいなシーンの連続には、お
いおい万が一これが遺作になったらどうすんねん…と
ヒヤヒヤしたが、意外とアッサリとした列車内のシー
ンも過不足ない感じで嫌味がなく、見ごたえはある。
結果がわかっている事件をサスペンスフルに見せるの
は『ハドソン川の奇跡』に通じるものがある。うまい
よねぇ。
しかしカフェの店員とかほんのちょっと一緒に観光し
た女の子とか、ちょい役のコがことごとくみんな可愛
いのには感心した。
8.11(土) 早稲田松竹
2018年8月16日木曜日
カメラを止めるな!
☆☆☆★★★ 上田慎一郎 2018年
評判になるだけあって、ほどよいインディーズ感
と巧みな構成にうなる。広い館内は爆笑につぐ爆
笑だった。そして既に観た誰もがいうように、内
容については何も言えねぇ…。
当たり障りない程度にいうと、パズルがはまる気
持ちよさと、笑いと、映画というものへの無条件
の愛とに包まれる幸福な時間である。
手持ちカメラの酔いさえ無ければね…。弱いひと
は覚悟したほうがいい。私はいちばん揺れが激し
い10分ぐらいは、目を開けていられなかった。
8.9(木) TOHOシネマズ日比谷
2018年8月13日月曜日
悪魔が来りて笛を吹く
☆☆☆★★ 吉田照幸 2018年
吉田照幸による金田一。今回は意外なキャス
ティング、吉岡秀隆を金田一耕助に迎えての
第2弾。
旧華族の大きな屋敷、出入りの怪しい医師、
戦後最悪となった強盗殺人事件の"天銀堂事
件"、そして一度聞いたら忘れられないフル
ートの薄気味悪い旋律がドラマを盛り上げる。
ハードロックと金田一の相性が意外と良い
のは前作『獄門島』で証明済みだが、今回
のオープニングもなかなかカッコいい。
話は複雑の極みで、綻びも目立ち、そして金
田一は一件たりとも殺人を止めることができ
ない。まあでもそんなのはいつものことだ。
最初の停電の夜の占い、あれがドラマとして
成功していればあとは、もうね。
8.5(日) BSプレミアム
2018年8月10日金曜日
バリー・リンドン
☆☆☆★★★ スタンリー・キューブリック 1976年
この不思議な映画は、私には今までまったく観た
ことのない種類の映画に思えた。なんと言えばい
いのだろうか。バリー・リンドンという一人の男
の「一代記」といえばそう言えるのだが、いった
い何を見せられているのか、カットが積み重なる
につれてだんだん分からなくなってくる。
しつこいしつこいズームバック。いったい何回繰
り返されたのか。さらにそれに輪をかけてしつこ
いヘンデルの「サラバンド」。園子温も好んで使
うあの旋律が、偏執的なまでに繰り返され、既視
感・既聴感に何度も襲われる。
しかしおもしろい映画だった。
7.23(月)BSプレミアム
2018年8月8日水曜日
明日に向って撃て!
☆☆☆★ ジョージ・ロイ・ヒル 1970年
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード
の共演で、あの有名な"Raindrops keep fallin' on
my head"とともに世に名高いフィルムである。
序盤は調子よく列車強盗なんかを成功させている
のだが、後半になると様相がガラリと変わり、ひ
たすら追跡者から逃げ続ける話になる。そんなに
カッコいい役ではないのである。逃げても逃げて
も追手はしつこく、追跡は終わることがない。
最後はアメリカン・ニューシネマの約束としての
「無駄死に」が待っている。こういうのはやはり
時代の「空気の反映」なのだろう。
7.22(日) BSプレミアム
2018年8月3日金曜日
紙の月
☆☆☆★★ 吉田大八 2014年
「どうせ盗むんだろう」ということが分かっているのに、
こんなにハラハラさせられるというのは、やはりたいし
たものだと思う。ジョーズが出て来ることが分かってい
るのに、毎回ビックリしてしまうようなものか。ちょっ
と違うか。
宮沢りえ、小林聡美、ご両人とも素晴らしい。
男は影が薄いですな。
こういう題名だから「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・
ムーン」と関係づけてくるのかと思ったら、特に関係は
ないのか。
7.15(日) BSプレミアム
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