2018年10月31日水曜日
お茶漬の味
☆☆☆★★ 小津安二郎 1952年
デジタル修復版で鑑賞。
主演は佐分利信と木暮実千代。
笠智衆はめずらしくパチンコ屋の親父を演じている。
陽気に軍歌を歌うのもめずらしい。
往々にして時間が経つと題名と内容がこんがらがって、
誰が出てるどんな映画だったかが分からなくなる小津
映画なのだが、今作は覚えやすい。ラスト近くに、長
年連れ添った夫婦を「お茶漬」に例える場面がある。
こんなに題名と内容が一致する小津映画は初めてだ。
それにしても唐突に和解しすぎだよね…。
10.16(火) BSプレミアム
2018年10月28日日曜日
【LIVE!】 Cornelius
Mellow Waves Tour 2018
1. いつか / どこか
2. Point Of View Point
3. Audio Architecture
4. Helix / Spiral
5. Drop
6. Another View Point
7. The Spell of a Vanishing Loveliness
8. Mellow Yellow Feel
9. Sonorama 1
10. 未来の人へ
11. Count Five or Six
12. I Hate Hate
13. Surfing on Mellow Wave pt 2
14. 夢の中で
15. Beep It
16. Fit Song
17. Gum
18. Star Fruits Surf Rider
19. あなたがいるなら
<Encore>
1. BREEZIN'
2. Chapter 8~Seashore And Horizon~
3. E
当日までチケットをよく見てなかったので、まさか
国際フォーラムのホールA(キャパ5000席!)だと
は思ってなかった。埋まった客席を見渡して、「こ
んなに観に来るひとがいるんだ…」と思ったという
のが正直なところ。
CDを完全再現は出来ないだろうから、若干音数の少
ない「ほぼCD」の演奏を淡々とするのかな、という
思惑は外れることになる。同期音源もけっこう使っ
ていただろうが、音数が少ないとは全然感じなかっ
た。音質はもちろん隅々まで神経が行き届いていて
最高。そして音と同期したアートな映像、照明で視
覚的にも楽しい。まあ要するに、意外にパフォーマ
ティブでおもしろいライブだったのである。また行
きたい。
ベストアクトは「Fit Song」。
ほとんどの曲で言えることだが、あらきゆうこのド
ラムはほとんど曲芸…。
2018年10月24日水曜日
麥秋
☆☆☆★ 小津安二郎 1951年
10年以上ぶりに再見。ほとんど何も覚えていな
かったので、新しく観たのと同じである。
BSで放送された「デジタル修復版」で鑑賞。映
像・音声ともにノイズが取り除かれて、観やす
く聞き取りやすい。まだ聞き取れないセリフは
あるが、すばらしいことだ。
『晩春』(1949年)では笠智衆は原節子の父親
役だったが、今作では父親は菅井一郎で、笠は
兄の役。枯れてない笠智衆はちょっと恐い。
毎度、小津映画では、耳慣れない常套句が楽しみ
のひとつだが、この映画でもあった。
高堂国典が言う、
嫁にゆこじゃなし婿取ろじゃなし、
鯛の浜焼き食おじゃなし
もうまったく意味不明である。たぶん単なる言
葉遊びで、あまり意味は無いと思われる。
10.7(日) BSプレミアム
2018年10月21日日曜日
犬ヶ島
☆☆☆★★★ ウェス・アンダーソン 2018年
近未来の日本を舞台にストップモーション・アニメで描か
れた、少年と犬たちの絆の物語。……と書くと全然おもし
ろそうじゃないが、これは言語をめぐる極めて精緻な仕掛
けに満ちたエクリチュールでもあるのである。
すいません、エクリチュールって言いたかっただけでした。
基本的に登場人物は日本語でしゃべる。かなり聞きづらい
のだが。一方、犬たちの声は英訳されている、と最初に断
わりが出る。よってわたしたちは犬のセリフは字幕で、人
間のセリフは日本語で聞き取ることができるが、劇中の人
間と犬はほとんど言語によるコミュニケーションはできな
いという、変わった状況なのである。美術の仕事も素晴ら
しく、背景や小道具にも注意を向けたいものが山ほどある。
処理する情報は膨大でついて行けてないことしばしだが、
これがなかなか快感であった。
動作音(Foley)がとても小気味いい。足音の一つひとつ、
衣擦れの一つひとつに付けていくことを考えると気が遠く
なるが、キレのいいFoleyがテンポ良く見せることに貢献
している。優秀。
10.6(土) 早稲田松竹
2018年10月18日木曜日
希望のかなた
☆☆☆★ アキ・カウリスマキ 2017年
主人公がシリアからヘルシンキにたどり着く場面
から始まる。そしてまず最初に、難民申請をしに
警察署にいく。何日も待たされた挙句、申請は認
められず、シリア国境に送還されることになった
主人公は、施設から脱走してヘルシンキをさまよ
うこととなる。
日本語の歌が唄われたり、儲からないレストラン
を寿司レストランに全面改修して失敗する場面が
あるなど、日本に言及があるのが変な感じ。おま
けに主人公のシリア人俳優はどことなく山田孝之
に似ている。
10.6(土) 早稲田松竹
2018年10月16日火曜日
MEG ザ・モンスター
☆☆☆★ ジョン・タートルトーブ 2018年
深海に棲む太古のサメ、"メガロドン"との闘い。
体長25mといってるから、相当デカいね。
実に王道という言葉がふさわしい作りで…まあ要
するに「JAWS」と筋はほとんど一緒だが、いろ
いろ工夫は凝らしてあり、楽しく観られる。海洋
研究所にいつも小さい女の子がうろうろしてる、
というのも工夫のひとつ。
個人的には初めてのIMAX鑑賞。料金は高いが、
音はほんとにクリアで迫力があって素晴らしい。
3Dメガネを掛けての鑑賞は、やはり1時間半を
過ぎたあたりからじわじわと疲れが出て来た。
2本立ては無理だな。
画像はヒロインのリー・ビンビン。美しい。
10.5(金) T・ジョイPRINCE品川
2018年10月14日日曜日
菊とギロチン
☆☆☆★ 瀬々敬久 2018年
明治から昭和初期にかけて、20以上の団体があった
という女相撲。そして大正末期の社会主義運動。平等
な社会の実現のために革命の必要を訴えるアナキスト
集団"ギロチン社"の若者たちと、全国を巡業する女相
撲の力士たちが不思議な交流をもつという話で、上映
時間189分の大作である。
力作なのは間違いないのだが、女相撲と社会主義運動
という二大要素が違和感なく混じり合っていたかとい
うと疑問だ。たまたま関心があって調べたふたつを無
理やり一緒にした感が拭えなかった。
主役こそ東出くんだが、女相撲の力士たちなどはあま
り有名な役者も使わず(使えず?)、演出で乗り切っ
た。渋川清彦の座長役がハマっていて最高。
10.5(金) キネカ大森
2018年10月11日木曜日
【LIVE!】 THE BACK HORN
20th Anniversary
ALL TIME BEST ワンマンツアー ~KYO-MEI祭り~
ツアーは始まったばかり。
セットリストは遠慮しとこう。
…と言いつつ書いてしまうのだが、ついに、やっと、
「カオスダイバー」をやったのである。この曲はシ
ングルでありながら、私がバックホーンと出会って
ライブに足繁く通い始めた2008年頃からこれまで、
ついぞ一度も演奏されることがなかった曲なのであ
る。良い曲なのになー、と思い続けて10年。
イントロのギターが高らかに鳴らされた時はさすが
にこの10年のことを思って感慨があったが、1曲目
だったので山田の声がまだ本調子の15%ぐらいで、
全く出ていなかった。
山田だけでなくこの日はわたしも喉風邪を引いてお
り、自分の喉と山田の喉が気がかりで、あまり没頭
することができなかった。無念。
ベストアクトは「風船」。
ちなみに岡峰は新宿LOFTで働いてたんだってね。
10.1(月) 新宿LOFT
2018年10月9日火曜日
台風騒動記
☆☆☆★★ 山本薩夫 1956年
大型台風に襲われた町で、復興予算を勝ち取って
癒着のある業者に請け負わせたい町長と、この機
に町の覇権を一気に狙いたい議員たちとの、被災
者そっちのけの醜すぎる争いを皮肉を山盛りにし
たコメディタッチで描く。
佐田啓二と菅原謙二が、この争いに巻き込まれる
若者を演じて、もちろん最後には町議会の目論見
は打ち砕かれる。しかし『世界』を読んでるとい
うだけで警察に目を付けられるのはたまったもん
じゃないですね。
最初にわざわざ
「この物語は すべて 事実では ありません」
という断わりがデカデカと出るのだが、案の定、
ほとんどモデルが特定できるぐらい事実に基づ
いているらしい。なかなかおもしろい。
9.30(日) BSプレミアム
2018年10月7日日曜日
お日柄もよく ご愁傷さま
☆☆☆★ 和泉聖治 1996年
仲人を務める結婚式と父親の葬式がいっぺんに来て
しまった一家のどたばたを描くコメディ。とはいっ
ても結婚式はすぐに終わるので、結局は『お葬式』
のような感じになるのだが、あちらが山崎努と宮本
信子ならば、こちらは橋爪功と吉行和子。なかなか
いい。
しかしやはりこの年代の邦画は映像が暗いし、画面
がざらついてて発色も悪い。どうも好きになれない。
9.29(土) BSプレミアム
2018年10月4日木曜日
バルタザールどこへ行く
☆☆☆ ロベール・ブレッソン 1964年
「バルタザール」はロバに付けられた名前。
ロバのバルタザールと少女マリーの物語である。
マリーはのちに『中国女』でゴダールのミューズ
のひとりとなるアンヌ・ヴィアゼムスキー。
ブログを探しても記事が無いのだが、観るのは
2回目だ。明らかに見覚えがあるし、ここ3年ぐ
らいのうちに確実に観たのだが、いつ観たのか
が分からない。たぶん観たのに記事にするのを
忘れてしまったのだろう。もったいないことで
ある。
そして2回目なのに、注意深く観ても話の筋がよ
く分からない。どうも難解である。というか話が
ぶつ切り…? 不良のジェラールの言動が特に意
味不明なことが多く、そのせいでマリーの行動も、
どういうことなのかと首を傾げる。
9.27(木) BSプレミアム
2018年10月1日月曜日
読書⑥
『浮世の画家』
カズオ・イシグロ 著 飛田茂雄 訳 ハヤカワepi文庫
この陰鬱な小説における、淡々とした筆致でもって、
少しづつ少しづつ物語と、その中核にある「記憶」を
浮かび上がらせていく手法は、まさしくカズオ・イシ
グロの真骨頂ともいうべきものだろう。やはり他では
得難いものだと思うし、いまは久しぶりにおもしろい
小説を読んだという満足感に浸されている。
画家の父親が、その名も「紀子」という娘の縁談につ
いてあれこれ気を揉むという物語の骨格は、どう見て
も小津映画からのいただきである。その枠組みに、戦
時下で芸術家が体制に対してとった態度という問題を
重ね合わせることで、完全に自分のものにしている。
主人公はしばしば自らの画業と、それに対する世評、
そして自分が育ててきた後進たちについて、「誇り」
と「満足」を口にする。あまりに頻繁に口にされるそ
れらを冷酷に打ち砕くかのような小説の構成に、イシ
グロの信念を見たような気がした。
だいぶ原文よりも日本人が読む用に踏み込んで訳した
という訳文も良かった。文章が良くなければこの小説
は台無しだ。
『江藤淳と大江健三郎』
小谷野敦 著 ちくま文庫
もうおもしろくてしょうがなくて、けっこう短期間で
読んでしまったのだが、ふと我に返ると、こういう本
をおもしろいということ自体が特権的なふるまいなの
ではないだろうかなどと思ってしまう。
江藤淳と大江健三郎のダブル伝記だ。実に細かく事実
関係、書いた文章、対談や座談会はもちろんのこと、
家系や逸話や噂話のたぐいまで検証し、網羅して、有
意味なものを残し、たまに小谷野敦の短い感想が入る。
それがひたすら続くだけなのだが、ついつい時を忘れ
て読み耽ってしまった。といってもわたしは江藤淳の
ことはほとんど何も知らないので、大江さんのパート
がおもしろかった。大江さんのユーモア感覚がよく表
れている文章を優先的に載せているのが良い。
『キルプの軍団』が傑作というのは同意する。『M/T
と森のフシギの物語』と一緒に入門編としてぴったり
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