2018年11月23日金曜日
ハナレイ・ベイ
☆☆☆★★ 松永大司 2018年
これはなかなか良い。
もう遠い昔に読んだきりなので、映画化にあたって
どこをどう膨らませたのか分からないのだが、それ
がけっこううまくいっているように推察される。
吉田羊はさすがに巧い。サーファーだった息子をサ
メに殺された偏屈なおばさんという役どころで、サ
バサバしてるけど無駄に明るくなく、色んな感情を
ひとまず胸に納めて、毎年ハナレイに通い、1週間
浜辺で本を読んでいるというその複雑な葛藤が、見
えるか見えないかという絶妙な線で演技していた。
去年ハワイに行ったときにカウアイ島もぜひ行きた
かったのだが、いろいろあって断念したのだった。
残念である。リトライしたいものだ。
11.3(土) 新宿ピカデリー
2018年11月21日水曜日
ここは退屈迎えに来て
☆☆☆★ 廣木隆一 2018年
椎名くんというなんか不思議な吸引力があったらし
い奴をめぐるクラスメイトたちの地方都市での学校
生活と、その後散り散りになった彼らの話。なんだ
か桐島が普通に出て来る『桐島、部活やめるってよ』
みたいな感じもする。
私は廣木監督の移動ショットが好きで、特に何が起
こるわけでもないシーンでこそ、その真価が発揮さ
れると思っている。この映画は特に何が起こるわけ
でもないので、結構うってつけなのである。
こるわけでもないシーンでこそ、その真価が発揮さ
れると思っている。この映画は特に何が起こるわけ
でもないので、結構うってつけなのである。
片山友希というコが出て来て、本筋とはほとんど何
の関係もないのだが、よりによってマキタスポーツ
と援交というか、清い交際(?)をしている。能年
ちゃんみたいで可愛い。
10.28(日) 新宿バルト9
2018年11月18日日曜日
暗殺のオペラ
☆☆☆★★ ベルナルド・ベルトルッチ 1979年
確固たる美意識に裏付けられた美しさを放ち続けるフィ
ルム、という印象。どの瞬間を切り取っても、一枚の絵
として成立するよう設計されたショットの積み重ねであ
る。そもそも映画とは活動写真、つまり「写真が動く」
ものであるというその原点を思い出す。
また思わせぶりな移動ショットがたまらない。黒沢清っ
ぽい。あまり黒沢の口からベルトルッチの名を聞いた覚
えはないが、影響を受けているんだろうか。フェリーニ
といいヴィスコンティといい、イタリア映画は肌に合わ
んと常々公言してきたが、ベルトルッチは好きな作品が
多い。
北イタリアのタラという小さな町に、父の謎の死の真相
を探るため、主人公が降りたつ。父は「リゴレット」が
上演されている劇場で何者かに銃殺されたのであった。
原作はボルヘスの短篇らしい。
字幕:山田宏一
と出たのだけど、あの山田宏一? イタリア語もできる
のだろうか。それとも別人なのか。
10.29(月) 早稲田松竹
2018年11月14日水曜日
早春
☆☆☆★ イエジー・スコリモフスキ 1970年
同じ「早春」でも、こちらはポーランドの監督
スコリモフスキのデビュー作『早春』。季節と
しての早春は映画の内容とマッチしていないの
で(映画の季節はどう見ても早春というよりは
「冬」である)、まあ「青春の初め」ぐらいの
感じで付けた邦題だろうか。
原題の"DEEP END" は行き止まり、の意。たし
かに「行き止まり」よりは良いかな。
未熟な男の子が年上のイケナイおねえさんに恋
をしてさんざん振り回された挙句に、はずみで
殺してしまうという、けっこう救いようのない
話である。
デビュー作らしくやり場のないエネルギーの横
溢が感じられる若々しいフィルムで、特に自転
車での疾走のシーンは瑞々しくて高揚させられ
るものがある。
10.29(月) 早稲田松竹
2018年11月10日土曜日
孤狼の血
☆☆☆★ 白石和彌 2018年
『娼年』との2本立て。
観始めてからようやく「松坂桃李の特集だったのか!」
と気付く。今年やたらと評判の良かったこちらでも主
演を張ってたとは。知りませんでした。
映画に呉という土地が出て来るとつい菅原文太の顔が
浮かんでしまい、「こんな(=てめえ)」「チンコロ
(=密告)」といった広島弁を聴くと胸がときめきで
キュンキュンする、そんな人間たちのために、そんな
人間たちが作った映画であろう。ストップモーション
と事務的なテロップと無感情なナレーションによる事
件の処理などを見るかぎり、もう『仁義なき戦い』へ
のオマージュどころではなく、続編を作ったるわぐら
いの勢いである。
まあおもしろかったのだが、それにしては私の採点は
厳しすぎるだろうか。しかし、ここまで『仁義なき戦
い』の褌を借りて相撲を取っている以上、それはヤク
ザ映画としては最初から下駄をはいているのであって、
評価はより厳しくなるのは当然だと思う。役所広司の
めちゃくちゃな刑事の演技といい、生真面目な松坂桃
李がだんだんとその"流儀"に染められて、遂にはそれ
を継承するに至る流れなど、すばらしかったシーンは
たくさんあるのだが、いま一歩、突き抜けなかった印
象。しかし最後の墓のシーンの阿部純子は全部アフレ
コだよね? なぜなんだろう。
10.26(金) キネカ大森
2018年11月8日木曜日
娼年
☆☆☆★ 三浦大輔 2018年
観ながら思うのは、こんな大変な映画どうして
撮ろうと思うのかねー、ということ。舞台化の
方が先だったが、まあこんな調子の舞台なのだ
としたら、そちらも生身の肉体を使った作品化
に伴う困難に対してどれぐらいちゃんと評価さ
れたのだろうか。話の筋は簡単で、「女なんて
退屈さ」とうそぶいていた主人公が「置屋の女
将」みたいな女に見出されて娼夫となり、めき
めき伸びる素質でもって、ずっとセックスばか
りしているのである。
松坂桃李はこの主演をよく引き受けた。たいし
て好きな役者でもないが、好印象。こういう映
画に出る役者は制作側からもきっと重宝がられ
ることだろう。なかなかいいお尻だし。
冨手麻妙って女優なんか見たことあるなー、と
思ったら『アンチポルノ』の女のひとか。あれ
も酔っ払って観てしまった映画のひとつ。
10.26(金) キネカ大森
2018年11月4日日曜日
早春
☆☆☆★★ 小津安二郎 1956年
デジタル修復版で鑑賞。
主演は池部良と淡島千景。池部良は何があっても
涼しげな顔でカッコいい。
通勤電車で北鎌倉から乗る仲良しグループという
のが出て来て、よく麻雀を打ったりみんなでご飯
を食べたり、休日にピクニックに行ったりしてい
る。今では考えられませんな…。
そのグループに岸恵子がいて、ちょっと色っぽい
のでグループの風紀を乱しているのである。
「金魚」と綽名されているが、その理由が「目が
大きくて、ズベ公だから、煮ても焼いても食えな
い」からだと説明される。ひどいよね。
今回の初耳学は、浦辺粂子が言うセリフ。
「女は三界に家無し」って言うだろ
当たり前のように言うのだが、初耳だった。意味
を調べてみると、死語になるのもうなづける感じ
であった。
10.22(月) BSプレミアム
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