2019年2月5日火曜日

サスペリア


☆☆☆    ルカ・グァダニーノ   2019年

1970年代のベルリンにある厳格なダンス・カン
パニーを舞台とした、不気味なゴシック・ホラー。
去年からトム・ヨークのサントラを聴いて「よし
よし」と楽しみにしていたので、公開まもなく、
いそいそと出かけた。新作映画なのに音楽だけ聞
いたことがあるというのは若干へんな気分だった。
ダリオ・アルジェントの1977年作品が元だという
ことだが、そちらは観ていない。

ダンスとホラーサスペンスが華々しくも妖しく絡
み合う映画といえば『ブラック・スワン』があっ
た。あの時も凡作だと思うと同時にまったく同じ
ことを思ったけれど、「あー痛い痛い、見てらん
ない」という感じの「怖さ」はホラー映画の技術
としては二級品である。爪が剝がれるとかアイス
ピックで刺されるとか、本作でいえば、ヒロイン
の舞踊とシンクロして(なぜか)関係のない女の
子の身体がよじれによじれて骨が折れまくるシー
ンとか。もちろんそういうのもあっていいが、単
純に「うー痛そう」じゃなくて、もっと感覚的に
背筋をぞーっとさせて欲しいのだ。

舞踊団で少女の失踪事件が起きたのを皮切りに、
組織の中で行われているおぞましい秘密が徐々に
明らかになっていく…。という展開の中に、本作
はバーダー=マインホフ・グループ(ドイツ赤軍)
による実際のテロ事件や、政治犯たちの釈放を要
求したルフトハンザ機ハイジャックなどの当時の
世情を織り込みながら進行していく。これはまあ、
鮮やかな手つきとまではいかないが、物語にちゃ
んと"効いて"はいるので、よしとしよう(偉そう)。

観終わって知ったのだが、とんでもない役を一人
二役でやっていたらしい。うーん、その苦労は想
像に難くないが、その困難を乗り越えて一人二役
でやったことの"効果"というと、果たしてどうだ
ろう。言われないとまず気付くひとはいまい。

                                    1.31(木) TOHOシネマズ新宿


0 件のコメント:

コメントを投稿