2023年10月27日金曜日

【LIVE!】 銀杏BOYZ

 
 世界ツアー弾き語り23 - 24
 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl

まだまだ続く全国ツアーの初日なので、
セットリストは割愛。

                    9.19(火) 渋谷WWW X

アコギの弾き語りでワンマンは初めてと
いうから意外だった。ライジングサンで
は一人でアコギをかき鳴らして絶唱して
いたし、それが私が初めてみた峯田和伸
だったから。

47都道府県ツアーの発案は峯田からだっ
たとのことで、マネージャーからは驚か
れたらしい。

もうそろそろ終わりかなー、と思ったと
ころからまだまだ続いたのでなんだか得
したような気分。しかし良い曲が多い。
歌詞とメロディと声がしっかりと分かち
がたく結びついていて、うわっつらで締
め切りに間に合わせるために書かれた曲
じゃないな、というのがよく分かる。

ベストアクトは「少年少女」。


2023年10月21日土曜日

読書⑥


『ハンチバック』
市川沙央 著   文藝春秋九月号

重い障碍を持った語り手が、たとえ子を産
み育てることは無理でも、普通の女のよう
に妊娠して堕胎してみたいという欲望を語
るこの小説は、不用意な感想を思わず飲み
込んでしまうような力強さを持っている。
「もうこの際、言いたいことはこの小説に
託して全部言ってしまおう」というような、
著者の気負いと自信との綯い交ぜになった
ものを感じるのである。

選評ではラストのいわゆる「オチ」の付け
方に不評もあったようだが、私はひとつ層
を重ねることで作品がより深まったと思う。















『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面
森達也 著    講談社現代新書

『月』を読了した余勢をかって本書も。
植松聖の一審判決が出る直前まで、津久井
やまゆり園の事件にそれほど深い関心は抱
いていなかったと正直に書いてしまう森達
也。しかし植松に面会したことをきっかけ
に、近年の司法において「死刑判決が確実
と思われる裁判」ほど形骸化し、単なる
「死刑にするためのセレモニー」と化して
いる点が、オウムや宮崎勤のケースと酷似
していることに思考が及んでいく。
植松の言動が一言一句そのまま報道される
ことはほぼ無い。しかし彼の発言は、一文
だけ読んでもその異常さは分からず、前後
のつながりや論理性を欠いたその全体を読
むと、戦慄せざるをえないような奇妙さを
感じるのである。

2023年10月7日土曜日

福田村事件

 
☆☆☆★★     森達也     2023年

見ごたえのある秀作。
集団心理、差別意識、メディアの思考停止…
といったズシリと重い問いかけがあるのは、
まあ言ってみれば「監督・森達也」の時点で
予想できてしまうが、この映画は意外に軽や
かでもある。井浦新と田中麗奈の「外国かぶ
れ」夫婦の視点から事件を描いたというのが
大きいだろう。村の伝統も、在郷軍人会も、
進歩的な村長も、因習にとらわれない夫婦の
目からは相対化して見ることができる。多く
の村人が、自分の「役目」を果たそうとして
エスカレートしていき、遂に悲劇に至ってし
まう多層的な過程がより整理されて見えてく
る。荒井晴彦の仕事、という感じがする仕上
がりである。

役者は、左翼的と思われることを嫌っていろ
んなひとに断られてこのキャストになかば仕
方なく落ち着いたんじゃないか…と勝手な想
像をしていたのだが、予想に反して皆すばら
しかった。中でも出色は田中麗奈である。あ
の「なっちゃん」が荒井晴彦の世界の住人に
なる日が来るなんて。水道橋博士も一見、誰
か分からないぐらい生粋の軍国主義者に成り
きっている。東出くんも瑛太もよかった。

                       9.13(水) 池袋シネマ・ロサ




2023年9月30日土曜日

ジャッジ!

 
☆☆★★★  永井聡  2014年

出張先のホテルがWOWOW見放題という
ことが分かり、何か観ようと番組表を見る
とちょうどいいのがこれだけだった。国道
沿いにぽつんとあるホテルでまわりに見事
に何もない場所だったので、時間つぶしに
と思い観たのだが、ほんとうに時間つぶし
にはふさわしい映画という感じ。

CM業界の内幕コメディを、CMディレクタ
ーが映画初監督で撮ったということらしい。
だったらもうちょっとリアルな制作会社の
やりとりやCM業界の生態があるかと思いき
や、まるっきりマンガである。テキトーで
調子のいい上司(トヨエツ)にムチャぶり
されて困るうだつの上がらないCMマンの
妻夫木くん、文句を言いながらも最後は妻
夫木くんを助ける優秀な同僚の北川景子、
昔はすごかったけど今は資料室にいるリリ
ー・フランキー、などなど。類型から一歩
も出ないまま都合よく展開して映画は終わ
る。よかったことがあるとすれば、鈴木京
香がコンペに出した車のCMはなかなかおも
しろかった。そりゃ本業だしね。でもエン
ドクレジットを見てると劇中のCMは別の人
間が作ってるみたいだったが…まさかね。

                 9.10(日) WOWOWプライム




2023年9月24日日曜日

アステロイド・シティ

 
☆☆☆★★★  
ウェス・アンダーソン   2023年

砂漠の真ん中にぽつんとある街アステロ
イド・シティに、若き発明家たちが授賞
式のため集まってくる。みなそれぞれ家
庭にいろんな事情を抱えた若者たちと、
その家族。省略の多いセリフから文脈を
読み取り、脱臼したようなユーモアを解
するだけで精一杯なのだが(つまりいつ
も通りのウェス・アンダーソン映画)、
実はそれらは劇中劇という構造になって
いて、ただでさえ情報量過多の映画をさ
らに極めて複雑にしている。

まあ半分も分かったとは言えない気がす
るが、横移動のカメラワークがしつこく
用いられており、印象的。もちろん移動
した先も、移動中も、構図は完璧である。
主役の戦場カメラマンは渋川清彦に似て
いる。子役の3姉妹の芝居がナチュラル
で良い。普通子役はテイクを重ねると、
どんどん芝居が悪くなっていくものなの
に、この完璧な構図とどうやって両立さ
せたのか不思議である。『ロスト・イン・
トランスレーション』から振り返れば、
スカーレット・ヨハンソンも大物になっ
たものだ。

                  9.7(水) ホワイトシネクイント




2023年9月18日月曜日

読書⑤

 
『月』
辺見庸 著     角川書店

私の好きな石井裕也が監督して映画化されるこ
とを知り、ずっと本棚に眠っていたこの本を急
に手にとって読みだした。なぜか「映画の前に
読んでおかなくては」という心理がはたらくの
である。

語り手は「きーちゃん」という、盲目で、言葉
を発することができず、自分で動くこともでき
ない重度障碍者。性別も不明のきーちゃんがそ
の聴覚や、自分の分身「あかぎあかえ」の視点
などをまじえつつ、介護者の「さとくん」を中
心に自分が身を置く「園」について描写を始め
る。
津久井やまゆり園の殺傷事件に想を得た小説で
ある。安易な感想を撥ねつける、厳しい小説。
読み進むにつれ、著者から言葉の石つぶてを投
げつけられているような気分になる。自分の思
い込みや、欺瞞や、詭弁や、言い逃れがことご
とく抉り出され、眼前にグロテスクに突き付け
られるようである。「人類はみな平等」「なく
なった方がいい命などない」、そういう紋切り
型のスローガンに逃げ込もうものなら、容赦な
く突き上げを食らうことになる。「なぜ?」
「本当に?」「お前は重度障碍者を抹殺する決
意をしたさとくんを翻意させられるのか?」
「なぜ翻意させなければならない?」

どうやって映画化するのか、楽しみである。















『世界で最後の花 絵のついた寓話
ジェームズ・サーバー 著 村上春樹 訳  ポプラ社

「ニューヨーカー」の編集者でもあった著者。
その落書きを同僚が評価して、同誌専属の漫画
家にもなったとのこと。ほぼ全盲だったという
からすごいが、その絵は「まあ味がある」とい
えるギリギリのライン、という気が私にはする。
いや、けなしてるわけじゃないけど…。

「なんのためだったか誰にも思い出せない戦争」
1939年の世界状況と、その年にこの寓話を発表
するということを想像してみる。勇気、知性、
ユーモア、そして哀しみ…。

2023年9月4日月曜日

【Live!】 山下達郎

 
  PERFORMANCE 2023

 1. SPARKLE
 2. 雨の女王(RAIN QUEEN)
 3. ドーナツ・ソング
 4. 土曜日の恋人
 5. SOLID SLIDER
 6. FUTARI
 7. 潮騒
 8. Groovin'(The Young Rascals)
 9. Bella Notte
10. Have Yourself A Merry Little Christmas
11. クリスマス・イブ
12. 蒼氓
13. ずっと一緒さ
14. SILENT SCREAMER
15. BOMBER
16. LET'S DANCE BABY ~ メドレー
17. CIRCUS TOWN

ENCORE
 1. Sync Of Summer
 2. Ride On Time
 3. 恋のブギ・ウギ・トレイン
 4. YOUR EYES

                       7.28(金) NHKホール

取り壊される前にぜひとも中野サンプラザで
山下達郎を聴いてみたかったが、その願いは
とうとう叶わず。これからは東京公演はNHK
ホールのみでやっていくことになるようであ
る。

いつもの「SPARKLE」で始まったが、2曲目
から一転、いきなり珍しい曲。"IT'S A POPPIN'
TIME" 収録の「雨の女王」。もちろん初めて
聴く。アナログ盤とカセットテープ(!)に
よる再発が好評を呼んでいるので、今回は
RCA/AIRの時期の曲を多めにやるとのこと。
願ってもないことである。ライブに通い始め
て10年ほどになるが、「雨の女王」と「潮騒」
は初めて聴いた。
ギターは佐橋佳幸に代わり、鳥山雄司になっ
た。多忙なのか、音楽性なのかは分からない
が、まあ10年に一度ぐらいメンバーが替わっ
てもいいかもしれない。鳥山さんのギターソ
ロ、新鮮に聴くことができた。
ベストアクトは「土曜日の恋人」。