2020年4月13日月曜日

読書⑦


『本当の翻訳の話をしよう』
村上春樹 柴田元幸 共著 スイッチパブリッシング

「復刊してほしい翻訳小説」にはじまり、
「ジョン・チーヴァー」や「短篇小説の書
き方」についてなど、村上×柴田でおこなっ
た対談を多数収録。チャンドラーやカポー
ティの文章を村上訳と柴田訳を並べて比較
しているものがあり、興味深い。
春樹はいちど逐語的に訳したあと、いった
ん元の英文を忘れて、文章として自然にな
るよう直すらしい。結果、両者の訳を比べ
ると明らかに春樹の訳文は長い。少なくと
も今回の箇所についていうと、柴田訳の方
がスッキリしていて好みではある。
柴田さんによる、明治から翻訳史をたどっ
た入魂の、わりと長めの講演も収められて
いる。









『東京湾景』
吉田修一 著    新潮文庫

出先で時間ができたので、読み落としてい
た吉田修一の中では比較的有名な1冊を。
最近いわゆる「湾岸地区」でのまとまった
仕事があったので、何度も通ったこともあ
り、あのだだっ広い埋め立て地の雰囲気が
勝手に浮かんできた。――のはいいとして、
小説としては、私の「あまり興味ない方の
吉田修一」というか、まあ表紙の平凡な首
都高の写真からしてそんな感じはあったが、
どうも薄味で噛みごたえの無い話である。
物語を駆動する役目を果たす「青山ほたる」
という小説家と、物語の核となる亮介が昔
つきあった「高校の英語の先生」。どうも
この二人が血肉がともなっていないという
か、薄っぺらい感じがした。








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