2020年4月24日金曜日

読書⑨


『ペーター・カーメンツィント』
ヘッセ 著  猪股和夫 訳 光文社古典新訳文庫

『郷愁』の名で知られるヘッセのデビュー作。
『青春彷徨』という訳題もあったらしい。前に
北海道にいたときにヘッセ・ブームがあり(私
の中だけで…)、新潮文庫(高橋健二 訳)で読
みかけたのだが、途中でなんとなくだるくなっ
てやめてしまった。

村人のほとんどが「カーメンツィント」という
姓をもつ、アルプスの麓の小さな村に生まれた
ペーターが、自然の中で成長し、チューリヒと
いう都会に出て大学でまなび、仕事を得て、恋
なんかもして(実らないけど)、やがて中年に
差し掛かり、老いた父親のいる故郷へと帰って
くる。この人生の道程を、まったく冷静沈着、
「若書き」というものと無縁の文体でつづって
いる。若干タルいという印象は今回も変わらな
かったが、時間が死ぬほどあるので2日で読み
終わった。これを読むと、やはりヘッセの小説
がおもしろくなるのは『車輪の下』以降なのか
なという感じがする。









『明治開化 安吾捕物帖』
坂口安吾 著  角川文庫

こういうものを安吾が書いていたとはつゆほど
も知らなかったのだが、要は肩肘はらずに読め
るシリーズものの探偵小説である。出張のサラ
リーマンがキヨスクで買い求めて新幹線ででも
読んだのだろう。連載は昭和25~27年だから、
新幹線はまだ無いが、奥付によると刊行された
のは昭和48年とのこと。

最大の魅力はトリック云々というよりも、安吾
の歯切れのいい、落語のような文章そのもので
ある。読んでいて爽快だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿