2020年4月8日水曜日

読書⑥


なぜとはいわないが、読書がすすむ。


『スタン・ゲッツ ―音楽を生きる― 
ドナルド・L・マギン 著 村上春樹 訳  新潮社

「微に入り細を穿つ」とは本書のためにある
ような言葉だ。音楽の神に魅入られたとしか
思えない天才的なテナーサックス奏者の詳細
を極めた伝記を、ずっと昔から彼を最も敬愛
するジャズ・ミュージシャンと言っていた村
上春樹が訳した「大著」である。

どうやら人間的にはとても問題の多いひとで、
長いことアルコールとドラッグの中毒を克服
しようとして果たせず。しょっちゅう内なる
"怒り"が抑えきれなくなって、奥さん(2番目
の)を殴打したり、家の中をめちゃくちゃに
破壊したりしている。にもかかわらず、ひと
たびサックスを手にステージにあがれば「そ
の夜のゲッツの演奏はすばらしかった」とい
う伝記作家の記述がどこまでも繰り返される。

ジャズは即興の音楽であり、本書にあるとお
り、その営為はその場でメロディを作曲して
いるのと同じである。よくそんな心理状態で、
天上の音楽のような創造性を発揮できるもの
だ、という感想を誰もが禁じ得ないだろう。

読了後、毎日スタン・ゲッツの音楽を聴いて
いるのは言うまでもない…。

新潮社にしては珍しく誤植が何か所もあり、
ひさびさに趣味のメールを送ってしまった。










『コンビニ人間』
村田沙耶香 著   文藝春秋

これも語り手が相当にゆがんでいるのが、な
んとなく、受賞の順番はこちらが早いが『む
らさきのスカートの女』に似た空気を感じさ
せる。こちらの主人公はコンビニの仕事をお
ろそかにするどころか「愛しすぎている」の
は異なるが。
妹に「まともな会話の仕方」を教えてもらっ
ているという設定がおもしろいが、まあそれ
でもこんなひといたら、たぶん同級生の女子
会には混ぜてもらえないか、一度で放逐され
るだろう。








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