2020年9月27日日曜日

読書㉒


『武器よさらば』
ヘミングウェイ 著 高見浩 訳  新潮文庫

これは題名からして戦場っぽいな、よしよ
し、とすでに何を期待しているのかよく分
からなくなっているが、ヘミングウェイが
第1次大戦中、イタリアの戦場で傷病兵搬送
車要員として従軍した事実を下敷きにした
物語である。ただし文庫の解説によると、
自身の体験と小説の内容とは大きく違って
いるようである。小説にはかなり壮絶な撤
退戦の迫真の描写があるが、すべて創作ら
しい。私はなんとなく前に読んだ『五分後
の世界』(村上龍)なんかを思い出しなが
ら読んでいた。

これは友人の指摘で思い当たったのだが、
「負傷した兵士が病院で看護婦と結ばれる」
という所までは、この小説と『ガープの世
界』は共通している。もちろんそこからは
全然違う話になるわけだが、ジョン・アー
ヴィングにはひょっとすると『武器よさら
ば』を"上書き"してやるという意気込みも
あったのかもしれない。そのぐらいこの小
説のラストには救いがない…。





『「リベラル保守」宣言』
中島岳志 著    新潮文庫

一時期、新宿中村屋にちょこっとカスる程
度ながら関係のある仕事をしたことがあり、
中島岳志の『中村屋のボース』がずっと気
になっていたのだけど、結局読むことはな
く、その仕事は終わってしまった。
するとEテレ「100分 de 名著」でオルテガ
の『大衆の反逆』がテーマの時に中島岳志
がゲスト解説者として出ていて、その語り
の明晰さに感心した。
脱線するけどあの番組はたまに観ているが、
番組のおもしろさにおける「取り上げる本」
と「ゲスト解説者」の比重は私の見たとこ
ろ3 : 7といったところで、いくら本がおも
しろくてもゲストの話がつまらないとせっ
かくの「名著」までつまらなく思えてしま
う。逆に言うとゲストの話がおもしろいと、
結局は読まないのだが、「お、ちょっと読
んでみるか」と、その時だけは一応思うの
である。

本書で解説される「リベラル保守」という
考え方に、私は特に異存のあるところはな
かった。だからといって保守主義者になる
かというと、私はすでに"村上主義者"なの
で無理で、というのは冗談ですが、「改革」
という言葉が政治的に使われるときの怪し
さ、その意味の変容が明らかな昨今、やた
らと威勢の良いことを言う輩を"疑う"とい
う営為は大事なことである。




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