2021年2月27日土曜日

すばらしき世界

 
☆☆☆★★★  西川美和  2021年

寡作ながら誠実に丁寧に、独自の映画を撮り
続けている監督のひとりだと思うし、このひ
との書くセリフの切れ味が好き。エッセイの
文章もうまい。

今回は佐木隆三の原作はあるものの、役所広
司にアテ書きした脚本とのこと。人生の半分
以上を刑務所で過ごしてきたヤクザ者の役で、
『どら平太』でも思ったことだが、役所広司
の大声は威圧感があって恐い。

最初の方の、旭川刑務所の門を出てバスに乗
るシーンなんか、やはり見事だと思う。橋爪
功、北村有起哉、仲野太賀、長澤まさみなど
みんな好演だが、出色はスーパーの店長を演
じた六角精児だろう。それほど出番は多くな
い脇役ながら、このひとの人生と役所広司の
人生が交叉する瞬間をほんとうにリアルに見
せられたように感じた。

私としては、ラストカットと、「すばらしき
世界」というこのタイトルが、もちろん悪く
はないのだが…。少し狙いすぎというか、若
干「らしくない」というか。二度しか殺人が
描かれない映画に『三度目の殺人』と名付け
るような理屈っぽさを感じてしまった。

                           2.13(土) 新宿ピカデリー




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