2022年2月23日水曜日

読書①

 
今年最初の読書の項目ということで、お恥ず
かしい限り。

『小説帝銀事件』
松本清張 著  角川文庫

昭和23年。豊島区椎名町の帝国銀行椎名町支
店に厚生省の技官を名乗る男が現れ、近所で
赤痢が発生したため、GHQの命令で予防薬を
飲むように言って、行員16人に青酸カリを飲
ませ、うち12人を殺害する事件が起こった。
本作は「小説」と冠してあるが、実質は松本
清張による注意深く、執念深いルポルタージュ
である。

犯人として逮捕されたのは平沢貞通という画
家で、人相と筆跡と状況証拠だけで厳しく尋
問され、自白した。しかし到底、一介の画家
にできる犯行ではなく、戦後初めての冤罪事
件と言われている。

松本は平沢の逮捕により警察の捜査が立ち消
えになった旧731部隊の残党による犯行を確
信しており、そこに、占領下の日本における
GHQの絶大な影響力を見ている。『東京ブラッ
クホール1964』でも慄然としたが、研究デー
タと引き換えに免罪された731部隊の残党は、
血液銀行を作って市民の売血を推奨したり、
薬害エイズを引き起こしたり、ほんとにロク
なものではない。













『女のいない男たち』
村上春樹 著    文藝春秋

「ドライブ・マイ・カー」を読み返そうと
思って手に取ったら、やはり「シェエラザ
ード」も読まないと、あれ、「独立器官」
ってどんな話だったっけ、とついつい他の
も読んでしまった。そして、短篇集として
の完成度が恐ろしく高いことにあらためて
驚かされた。

順番はバラバラに読んで、最後に「木野」
を読んだのだけれど、これも相当にわけの
分からない話ですよね。蛇の印象が強く刻
まれていたせいか、「猫がいなくなる」と
いう、村上作品ではおなじみの要素がここ
にもあったことに改めて気づいた。この怪
談っぽい感じは上田秋成の影響なのかもし
れないが、庭で蛇を見るという描写では
『斜陽』を思い出す。




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