2022年5月22日日曜日

読書⑤


『日本の黒い霧 (下)』
松本清張 著  文春文庫

下巻ではいよいよ、松本がこのシリーズを執
筆した動機となった「帝銀事件の謎」が登場。
フィクションの体裁をとった『小説・帝銀事
件』でもうひとつ深く踏み込めなかった「旧
731部隊の残党による犯行説」を、いっそう
深く追求している。
日本の警察は優秀である。捜査当局も初めは
旧日本軍関係者の線で全国の警察に情報を集
めさせていたのだ。それは「おふれ」として
の捜査概要に明確に残っている。しかし捜査
は壁に突き当たり、奇妙な進路変更を余儀な
くされ、一介の画家である平沢が逮捕された。
凶器である毒物の特定も、アリバイ崩しもで
きないまま、死刑が確定した。松本はそこに
蠢く米軍の影を見るわけである。

本書には他に
・日銀地下倉庫のダイヤモンドの行方
・鹿地亘事件
・松川事件
・レッド・パージ
・朝鮮戦争
などについて、それぞれスリリングな論考が
なされている。
松川事件は死者も出た列車転覆事件で、過激
な労組の犯行ということになっているが、こ
れも事実を追えば追うほどに奇妙な事件と言
うほかない。福島警察の動きも明らかにおか
しく、ここにも鉄道―軍事輸送―GHQという
線が浮かんでくるのである。











『ガンディーに訊け』
中島岳志 著  朝日文庫

ガンディーという、政治家とも活動家とも宗
教家とも一概に言い表せない特異な人物の、
ある意味徹底した生き方は、アッテンボロー
による伝記映画『ガンジー』を観たときにも
感心させられた。
マハートマー(偉大なる魂)よりも、バープ
ー(おじさん)と呼ばれることを好んだとい
うガンディーの究極の目標は、祖国インドが
イギリスによる支配から独立することである
わけだが、それは少しでも暴力的なものであっ
てはならないのである。暴力によって成し遂
げられる革命には何の意味も無い、それはイ
ギリスの力による支配と変わらないとする考
えは、目的よりも過程を重視する姿勢と言え
るかもしれない。しかし革命に暴力はつきも
のでもある。そういう武闘派が民衆の支持を
集めそうになると、ガンディーは断食するの
である。ガンディーが瘦せ衰えていく姿を見
て、人々は非暴力の理想を再認識して悔い改
めるというのだから、すごいとしか言い様が
ないですよね。
終章には南直哉との対談を収める。


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