2012年3月2日金曜日

J.エドガー

☆☆☆★★     クリント・イーストウッド    2012年


映画はしばしば、時間軸を飛び越えて移動したいという欲望に抗う
ことができない。…と、ハスミンっぽく始めてみましたが、時間軸を
ぐちゃぐちゃにすることに関して最も強度があるのは映画でしょうね。
本作も、過去と現在を行ったり来たりで忙しいが、エレベーターやら
競馬場やらを巧みに使うので、さほど混乱はない。

イーストウッドが子どものときからずーっと、FBIの長官だったという
J・エドガー・フーバーなる人物。不勉強ながら私は知らなかったが、
大統領が8人変わってもFBIのトップに君臨し続けたこの特異な人物
にディカプリオが扮している。なかなかの怪演で、良かったと思うが、
アカデミー賞は候補にもしてくれないんだね。

それにしても最近「ゴーストライト」がやけに目に付くのである。去年
のポランスキーの新作『ゴーストライター』はそのものズバリだが、
『ドラゴン・タトゥー』でも、主人公が「ハリエット殺し」を調査するのは、
大事業家の老人の「自叙伝執筆」を隠れみのにしながら、であった。
本作でも映画を駆動するのは、エドガーがゴーストライターに向かっ
て、自らの人生を語る言葉である。『1Q84』で天吾がふかえりと関わ
りを持つのは、まさに「ゴーストライト」という行為を通してであった。
なので本作でエドガーが評伝を書きたいからライターを呼べ、と言い
出したとき「あ、イーストウッド、かぶったな」と思ってしまったのである。


                                      2.17(金)  ユナイテッドシネマ札幌


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