『国境の南、太陽の西』
村上春樹 著 講談社文庫
新作に向けて気持ちを盛り上げるために(これ、どっかで聞い
たね)久しぶりに手にとった。札幌からの帰りの電車(4時間)で
一気読みを敢行。そしてあまりの面白さに、しばし虚脱感にとら
われる。
島本さんは雨の夜にやってくる。そして「僕」が店にいると、ピア
ニストは気を利かして「スタークロスト・ラバーズ」を弾くんですよ。
もうたまんないですよ、この世界。
たしかに最後のエピソードのせいで後味は悪いが、ああなるの
分かってたからこちらにも相応の覚悟ができており、心が自然と
防御態勢をとるという異様な読書状態であった。
少女のころ美しかったひとが、大人になってその輝きを失うという
挿話は最新作に通じるところもある。
『極北』
マーセル・セロー 著 村上春樹 訳 中央公論新社
新作に向けてさらに気持ちを盛り上げるために、去年の訳書まで
持ち出して春樹祭りを執り行なう。
なるほど訳者あとがきにあるとおり、意外感に満ちた小説であり、
一章先の展開がまったく読めない。なおかつ読者を先に引っ張る
力業にも優れている。質の高い小説、というのが最初の感想。
凍死するものが最後に感じるのは体が焼けるような「熱さ」である。
ほんとかね。
0 件のコメント:
コメントを投稿